(旧版)大腿骨頚部/転子部骨折診療ガイドライン (改訂第2版)
第3章 大腿骨頚部/転子部骨折の危険因子
3.1.骨に関連した危険因子
3.1.骨に関連した危険因子
■ Clinical Question 5
生化学検査のうち骨代謝マーカー以外の危険因子
解説
【Grade B】
血清ビタミンDの低値は危険因子である.
【Grade C】
非常に低い血清エストラジオール値は危険因子である.
【Grade C】
血清ビタミンA濃度低値と高値は,大腿骨頚部/転子部骨折の危険因子である.
サイエンティフィックステートメント
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血清ビタミンDの低値は大腿骨頚部/転子部骨折の危険因子であるとする高いレベルのエビデンスがある(EV level R-I, EV level R-III). |
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非常に低い血清エストラジオール値(<5pg/mL)は大腿骨頚部/転子部骨折の危険因子であるとする中等度レベルのエビデンスがある(EV level R-II). |
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血清ビタミンA濃度低値と高値は,大腿骨頚部/転子部骨折の危険因子であるとする中等度レベルのエビデンスがある(EV level R-II). |
エビデンス
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血清25ハイドロキシビタミンDについての研究のmeta-analysisの結果は,高齢の大腿骨近位部骨折患者は対照群の0.66倍と,ビタミンDレベルが減少している(F1F01381, EV level R-I). |
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大腿骨近位部骨折のある高齢者[頚部骨折のある高齢者(平均79歳),頚部骨折と骨軟化症合併例(平均82歳),対照群(平均70歳)]での1,25ハイドロキシビタミンDは骨軟化症の有無にかかわらず減少していた.ビタミンD結合蛋白の減少ではなく,これらの高齢者の低骨代謝回転においては,ビタミンDの必要性が減少して骨軟化症の進展が防がれている(F1F05541, EV level R-III). |
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65歳以上の地域住民コホート研究(the Study of Osteoporotic Fracture)で,非常に低い血清エストラジオール値(<5pg/mL)の女性は,それ以上の値の女性に比較して新たな大腿骨近位部骨折と脊椎骨折の危険因子で,その相対危険度はそれぞれ2.5(95%CI 1.4.〜4.6),2.5(95%CI 1.4〜4.2)であった(F1F10052, EV level R-II). |
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軽微な外傷で大腿骨近位部骨折を受傷した女性175例中,腎疾患やカルシウム,ステロイドなどの内服歴のない74例を対象とし,骨折のない骨粗鬆症患者73例を対照とした研究で,血清25ハイドロキシビタミンD値12ng/mL未満の者の割合は骨折群で有意に高かった(F2F01003, EV level R-III). |
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米国National Health and Nutrition Examination Surveyの50〜74歳の女性2,799例を対象にしたコホート研究によると,血清ビタミンA濃度低値(-1.61μmol/L)と高値(+2.56)の者は,中間値の者(1.90〜2.13)に比べて有意に大腿骨近位部骨折の発生が多かった(低値のハザード比1.9,高値のハザード比2.1)(F2F00303, EV level R-II). |
文献