(旧版)大腿骨頚部/転子部骨折診療ガイドライン (改訂第2版)

 
 
第2章 大腿骨頚部/転子部骨折の疫学

■ Clinical Question 1
わが国における発生数・発生率

解説

わが国における大腿骨頚部/転子部骨折の年間発生数は2007年では約15万例であった.発生率は40歳から年齢とともに増加し,70歳を過ぎると,急激に増加していた.高齢者での発生率は男性より女性が高かった.この年齢階級別発生率は2007年まで経年的に増加していた.


エビデンス

dot 大腿骨頚部/転子部骨折に関する全国的調査によると,2007年における推計発生数は男31,300人,女116,800人,計148,100人であった.発生数は15年間で男性は1.7倍,女性は2.0倍増加した.しかしながら男性の60〜69歳,女性の60〜79歳の群での発生率は15年間でもっとも低値であった.人口1万人当たりの発生率は,40歳以下で男0.32,女0.15,40〜49歳で男0.92,女0.70,50〜59歳で男2.03,女2.95,60〜69歳で男4.81,女8.11,70〜79歳で男18.12,女39.71,80〜89歳で男61.03,女157.14,90歳以上で男146.62,女313.58だった.西日本のほうが東日本より発生率は高かった(F2F03930).
dot 鳥取県の調査では2004〜2006年までの3年間の性年齢階級別平均発生率(10万人・年)は70〜74歳,75〜79歳,80〜84歳,85〜89歳,90歳以上が,男性ではそれぞれ123.6,235.0,462.8,895.9,1031.5で,女性では254.1,565.8,1241.3,2142.3,2906.5であった.1986年の鳥取県人口構成を用いて算出された期待患者数は1986年から2006年まで男女ともに有意に増加していた.大腿骨頚部/転子部骨折発生率は男女とも経年的に有意に増加していた(F2F03931).
dot 新潟県の65歳以上の大腿骨頚部/転子部骨折発生率は,1999年は10万人当た り308.7で,1985年,1987年,1989年,1994年,1999年と経時的に増加していた.1999年の男女比は1:3.2だった(F2F02150).
dot 日本整形外科学会関連病院における,大腿骨頚部/転子部骨折の患者を1998〜2000年の3年間調査した.回答率はそれぞれ調査年において,40.5%から55.6%であった.この3年間において35歳以上の新しい頚部/転子部骨折は110,747例であった.47,853例が頚部骨折,61,632例が転子部骨折だった.性・年齢別患者数は年齢とともに増加し,80〜84歳においてピークを迎え,85歳以上で低下した.頚部骨折と転子部骨折の発生数を比較すると,75歳未満では頚部骨折が多く,75歳以上では転子部骨折が多かった.転子部/頚部比は,80〜84歳で1.5,85〜89歳で1.9,90〜94歳で2.2,95〜99歳で2.5だった(F2F02460).

文献

1) F2F02150 Morita Y, Endo N, Iga T et al:The incidence of cervical and trochanteric fractures of the proximal femur in 1999 in Niigata Prefecture, Japan. J Bone Miner Metab 2002;20:311-318
2) F2F02460 Anonymous:Nationwide survey of hip fractures in Japan. J Orthop Sci 2004;9:1-5
3) F2F03930 Orimo H, Yaegashi Y, Onoda T et al:Hip fracture incidence in Japan:estimates of new patients in 2007 and 20-year trends. Arch Osteoporos 2009;4:71-77
4) F2F03931 Hagino H, Furukawa K, Fujiwara S et al:Recent trends in the incidence and lifetime risk of hip fracture in Tottori, Japan. Osteoporos Int 2009;20:543-548



 

 
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