(旧版)大腿骨頚部/転子部骨折診療ガイドライン

 
第6章 大腿骨頚部骨折(いわゆる内側骨折)の治療

 


6.2 治療方法の選択
6.2.1 非転位型骨折は保存療法の適応があるか

推 奨
【Grade D】
保存的治療では偽関節発生率が高いので、
全身状態が手術に耐え得る症例に保存療法の適応はない。

サイエンティフィックステートメント
非転位型骨折に対して保存的治療を行い、14〜62%に偽関節を生じたとする中等度のエビデンスがある(EV level III、EV level IV)。
非転位型骨折に対して外科的治療を行い、85〜100%に骨癒合が得られるとする低いレベルのエビデンスがある(EV level III、EV level IV)。

エビデンス
保存療法に偽関節がみられた。明らかなエビデンスがなく保存療法が行われている。安定型の大腿骨頚部内側骨折では、限られたエビデンスであるので、強くはいえないが、手術をしないとnon-unionの可能性が高くなる。明らかなエビデンスなく、いまだに保存療法が行われているので、今後randomised studyがされてもよい(FF01094 , EV level IV)。
impactedな骨折170例に保存療法(疼痛が軽減するまで安静後に部分荷重し、8週で全荷重開始)を施行した。転位したのは24/167例(14%)で、転位因子は全身状態不良と年齢(70歳以上)であった(FF05211, EV level III)。
36例中骨癒合は29例(80%)に得た。陥入骨折は保存療法の適応がある(FJ00761, EV level IV)。
転位のない247例。手術は125例で、plateとscrewで固定し4日後から荷重を開始した。非手術は122例で約10日間牽引し、3ヵ月間部分荷重した。平均入院期間は手術例で17日、非手術例で23日であった。初期の転位は手術例にはなかったが、非手術例では20%に認めた(FF03167, EV level III)。
骨接合術を行い6ヵ月以上観察した87例(平均74歳)で検討した。Garden stage別の骨癒合率はI 100%、II 93.8%、III 96.6%、IV 89.5%であった(FJ00296 , EV level IV)。
CHSで治療した160例(エックス線で6ヵ月以上観察した93例、壊死評価をMRI使用した45例、エックス線で1年以上観察した81例)。骨癒合率は、Garden I 100%、II 94.4%、III 96.8%、IV 88.9%であった(FJ00312 , EV level IV)。

文 献
1) FF01094 Parker MJ, Handoll HH, Bhargara A:Conservative versus operative treatment for hip fractures. Cochrane Database Syst Rev 2000;(4):CD000337
2) FF05211 Raaymakers EL, Marti RK:Non-operative treatment of impacted femoral neck fractures. A prospective study of 170 cases. J Bone Joint Surg 1991;73-B:950-954
3) FJ00761 畠中正昭:頚部内側骨折に対する保存的治療.関節外科 1997;16:83-90
4) FF03167 Cserhati P, Kazar G, Manninger J et al:Non-operative or operative treatment for undisplaced femoral neck fractures:a comparative study of 122 non-operative and 125 operatively treated cases. Injury 1996;27:583-588
5) FJ00296 越智龍弥,中野哲雄,阿部靖之ほか:大腿骨頚部内側骨折Garden stageIII-骨接合術か人工骨頭置換術か.整形外科 2000;別冊:96-99
6) FJ00312 越智龍弥,中野哲雄,阿部靖之ほか:大腿骨頸部内側骨折に対するCHS固定法の治療成績.整外と災外 2000;49:737-740

 

 
ページトップへ

ガイドライン解説

close-ico
カテゴリで探す
五十音で探す

診療ガイドライン検索

close-ico
カテゴリで探す
五十音で探す