EBMに基づく尿失禁診療ガイドライン

 
III 尿失禁診療ガイドライン
女性尿失禁診療ガイドライン

3. 切迫性尿失禁の治療
(2) 薬物治療

1)混合した薬理作用をもつ薬剤

<1> 塩酸オキシブチニン
主にムスカリン受容体に作用する他に直接、排尿筋を弛緩させる作用、局所麻酔作用をもっている。
過活動膀胱患者169名を対象として、臭化プロパンテリンと比較した二重盲検試験の結果では塩酸オキシブチニン、臭化プロパンテリン、プラセボの症状改善率がそれぞれ58.2%、44.7%、43.4%で塩酸オキシブチニンの改善率が有意に高かったと報告されている80)。また、366名を対象とした塩酸プロピベリンとの二重盲検試験では、塩酸オキシブチニンおよび塩酸プロピベリンはともにプラセボと比較して有効であったが、口渇の副作用は塩酸オキシブチニンで強かったと報告されている81)。塩酸オキシブチニン単独療法のみならず行動療法を併用した場合の二重盲検試験では、単独療法では72.7%の症状改善率であるのに対して、行動療法を併用した場合は84.3%と有意に改善率が高かったと報告されている82,83)。その他にも併用療法の有用性を示す報告を認める84)

<2> 塩酸プロピベリン
抗ムスカリン作用とカルシウム拮抗作用をもつ薬剤である。
98名の切迫性もしくは切迫性および腹圧性尿失禁のある患者に塩酸プロピベリンを投与した二重盲検試験では有為な排尿回数および尿失禁の回数の減少を認めており、心臓への影響もプラセボと有為差がなく、口渇の副作用は2%であったとの報告を認める85)。また、185名の尿意切迫感、あるいは切迫性尿失禁を有する症例に対する二重盲検試験では30mg/日の投与量で80%の改善を認めている86)。366名を対象とした塩酸プロピベリン45mg/日と塩酸オキシブチニン10mg/日の二重盲検試験による比較では、プラセボと比較すると、ほぼ同等の効果が期待できるが、塩酸プロピベリンの方が副作用は少ないと報告されている87)。また、肝機能が軽度から中等度障害を受けている症例でも安全に使用できるとの報告も認める88)

<3> 塩酸フラボキセート
切迫性尿意・切迫性尿失禁患者46名を対象とした塩酸プロピベリンとのクロスオーバー試験では、プラセボと比較すると、ともに排尿回数、膀胱コンプライアンスの改善を認めている89)。また、27名を対象とした二重盲検試験では600mg/日内服よりも1,200mg/日内服の方が有効であったとの報告も認める(わが国では600mg/日までの認可である)90)
その一方、39名の切迫性尿失禁患者に対する塩酸クレンブテロールとの比較試験では、塩酸クレンブテロールの方が有効であったとの報告や91)、41名を対象とした不安定膀胱の患者に対する二重盲検クロスオーバー試験ではプラセボとの比較では効果に有為差を認めていないとの報告92)、また、70名を対象とした前立腺肥大症に伴う膀胱刺激症状に対する二重盲検試験では、塩酸フラボキセート1,200mg/日内服群とプラセボ内服群ではそれぞれ改善率に有為差を認めていないとの報告も認められる93)
 
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