EBMに基づく尿失禁診療ガイドライン

 
III 尿失禁診療ガイドライン
女性尿失禁診療ガイドライン

3. 切迫性尿失禁の治療
(1) 下部尿路リハビリテーション

<1> 膀胱訓練法
いくつかの無作為コントロ-ル試験が行われているが、それらの結果を解釈する際には、膀胱訓練法の内容が各々の試験において同一ではないことに留意しなくてはならない。
切迫性尿失禁に対する膀胱訓練法の有用性については無治療群を対象として検討した無作為コントロ-ル試験が2つ報告されており、それぞれ6カ月の時点において90%の尿禁制率、6週間目の時点で67%の尿失禁改善率があったと報告している27,60)。このうちの1つの試験は、腹圧性尿失禁症例・混合性尿失禁症例を含んでいるが、これらの結果は膀胱訓練法の有用性を示しており、低侵襲性・経済性の観点からもまず試みられるべき方法である。
真性腹圧性尿失禁症例145例と排尿筋過活動を有する症例59例を対象として、膀胱訓練法と骨盤底筋訓練法の効果を比較した無作為コントロ-ル試験では、3カ月、6カ月の時点における尿失禁消失率は膀胱訓練法群で18%、16%、骨盤底筋訓練法群で13%、20%で、両群間に差はなかったとの報告もある61)。膀胱訓練法と薬物治療を比較した無作為コントロ-ル試験では、排尿筋過活動を有する50例を対象として、入院の上の膀胱訓練法と外来通院での塩酸フラボキセート200mg、塩酸イミプラミン25mgの併用療法を比較した試験では、主観的な尿禁制率、症状消失率が各々膀胱訓練法群で84%、76%であったのに対し、薬物治療群では56%、48%であった62)。75例を対象として膀胱訓練法と塩酸オキシブチニン15mgの効果を比較した試験では、6週間の治療終了時点での尿失禁消失率は73%と74%であったが、治療終了後6カ月においては膀胱訓練群が70%であったのに対し薬物治療群では42%と減少していたと報告されている63)。膀胱訓練法と他の治療法との比較や膀胱訓練法と他の治療法との併用効果については、現時点では結論づけることが難しく、さらなる無作為コントロ-ル試験が必要である。
 
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