EBMに基づく尿失禁診療ガイドライン

 
III 尿失禁診療ガイドライン
女性尿失禁診療ガイドライン

2. 腹圧性尿失禁の治療
(2) 薬物治療

<2> エストロゲン補充療法
閉経後、尿路性器萎縮の状態にある女性にエストロゲン補充療法を行うと、尿道粘膜の栄養状態を改善し尿道壁の厚みを増加させるとともに、αアドレナリン受容体刺激薬への感受性を増強する効果を期待できるため、尿道の閉鎖性は改善される可能性が示唆される。尿失禁のある閉経後の女性にエストロゲン補充療法を施行した6つの報告のメタアナリシスによると、尿失禁全般の調査においても、腹圧性尿失禁のみを対象とする調査でも、エストロゲン補充療法によって自覚的な改善感は得られている。しかし、客観的な指標については、いずれの調査でも尿漏れの量は減少せず、6つの調査のうち1つで最大尿道閉鎖圧の有意な上昇が得られるにとどまった33)。その後のRCTでも、腹圧性尿失禁についても尿失禁全般についても、尿漏れの回数と量、パッドテストの成績についてエストロゲン補充療法の有効性は実証されていない34,35)
わが国で現在発売されている製剤は、経口投与製剤は結合型エストロゲンとエストリオール、経皮投与製剤はエストラジオール、経腟投与製剤はエストリオールがある。投与量は主に欧米での調査での報告があるが、体格的により小さく人種差のあるわが国の女性について、今後独自の至適投与量を設定していく必要がある。また、エストロゲンを長期に投与する場合は、子宮内膜癌、乳癌の発生に対しても留意が必要である。
 
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