EBMに基づく尿失禁診療ガイドライン
III 尿失禁診療ガイドライン |
1. 診断
(2) 二次評価(専門医の評価)
1)尿流動態検査
<1> 膀胱内圧測定(必須検査)
日常生活の中の尿失禁の状況を再現し、尿失禁の原因を正確に診断するために重要な検査である。女性尿失禁患者を対象とし、病歴と身体所見による診断と尿流動態検査後の診断を比較した検討によると、両者が一致したのは65%であり、また、尿流動態検査の結果がその後の治療法を31%で変えたと報告されている6)。直腸内圧測定を同時に行い、膀胱内圧-直腸内圧=排尿筋圧とすることで、排尿筋の収縮と腹圧をより厳密に区別できる。
- ●ウロダイナミクス腹圧性尿失禁の診断
腹圧性尿失禁が疑われる時は膀胱内圧測定の蓄尿相で咳、いきみを行わせ、尿失禁が誘発されるかを確認する。腹圧の上昇に伴って排尿筋の収縮なしに尿の漏出が確認されれば真性腹圧性尿失禁と診断できる。この際にどれだけの腹圧上昇で尿失禁が起きるかの差圧をみるのが腹圧下尿漏出圧(Abdominal Leak Point Pressure ; ALPP)で、尿失禁の重症度と相関する指標であるとされている。60cmH2O以下であれば、内因性括約筋機能不全(ISD)とされる7,8,9)。
●過活動膀胱による尿失禁の診断
切迫性尿失禁の診断に膀胱内圧測定は極めて有用である。切迫性尿失禁を訴えるすべての症例で無抑制収縮が証明されるわけではないが10)、膀胱内圧測定の蓄尿相で排尿筋過活動の存在、最大膀胱容量やコンプライアンスの低下を確認できれば、その診断はより確実なものとなる。無抑制収縮の検出率をあげるためには、患者の緊張を和らげ、各種の誘発テスト(体位変換、腹圧負荷、冷水刺激など)を行うことが望ましい11)。
<2> 尿流測定(オプション検査)
尿失禁の診断自体というより、排出障害のスクリーニングとして残尿測定とともに有用な検査法である。尿流率の明らかな低下があったり、有意な残尿を認める場合は排出障害が疑われるため、次に述べる内圧・尿流検査を含めた精密検査を行うことが望ましい。
<3> 内圧・尿流検査(Pressure-flow study)(オプション検査)
尿流測定や残尿測定で尿の排出障害が疑われる場合の原因検索として有用な検査である。膀胱内圧と尿流測定を同時に行うことで、膀胱出口部の閉塞と排尿筋収縮力を定量的に推定できるという利点を有するが、女性における有用性は十分に確立されていない。