EBMに基づく尿失禁診療ガイドライン

 
III 尿失禁診療ガイドライン
高齢者尿失禁ガイドライン

3. 治療
(1) 下部尿路リハビリテーション

1) 排泄介助(Toileting assistance)
排泄介助には、時間排尿誘導、パターン排尿誘導、排尿習慣の再学習(prompted voiding)の3つの方法がある。

<1> 時間排尿誘導

あらかじめ決めておいた一定の時間ごとにトイレに誘導する。排尿が自立していない患者に有効である。(証拠の強度 : C)

失禁消失を目標に、介護者が夜間を含め2〜4時間ごとにトイレに連れていく。患者の動機づけが不要で、認知障害のある患者にも施行できる。

<2> 個々の患者の排尿パターンに合わせた排尿誘導(パターン排尿誘導)

排尿時間のパターンが決まっている患者に有効である。(証拠の強度 : B)

患者の排尿習慣を検討し、適切と判断した時間に排尿をさせる方法である。患者ごとに排尿時間が異なると、看護側が履行しにくくなる。家庭では、最も優れた方法である。
Collingら(1992)は、身体機能、認知機能の低下した平均年齢85歳の切迫性/腹圧性尿失禁を有する老人ホーム在住の高齢者に対し、12週間、個々の患者の排尿パターンに合わせた排尿誘導を試みた群では、86%に尿失禁の改善をみたと報告している8)

<3> 排尿習慣の再学習

尿意をある程度認識でき、排尿促しに反応できる患者に有効である。認知機能はある程度障害されていても可能である。(証拠の強度 : A)

あたかも子供に排尿習慣を身に付けさせるような方法で、排尿を促す。自尊心を傷つけるような素振り、言葉遣いをしない。

介護者が定時的に病室を訪問する。
失禁の有無を尋ねる。
失禁の有無を確認する。→失禁がなければほめる(あればコメントしない)。
排尿の意思があるかどうか確認する。
意思にかかわらずトイレ誘導する。→排尿があれば意思表示できたことをほめる。
次の訪問時間を告げ、漏らさないよう励ます。

いくつかの無作為化臨床試験で、その有効性が示されている。Creasonら(1989)は85人の老人ホーム在住の高齢女性尿失禁症例を排尿習慣の再学習と単なる失禁介護を行う群に分け、排尿習慣の再学習させた群で有意に尿失禁頻度の低下がみられたと報告している9)。Huら(1989)は、133名のホーム在住の高齢女性を13週間の行動療法群と通常のケアを行うコントロール群に分けた結果、行動療法群において尿失禁の頻度が有意に改善したと報告している10)。Schnelleら(1990)は、老人ホーム在住の痴呆・ADL障害を有する平均年齢82歳の尿失禁を有する126人を排尿習慣の再学習をさせた群とコントロール群に分けた結果、再学習をさせた群で有意に尿失禁頻度の低下がみられたと報告した11)
 
ページトップへ

ガイドライン解説

close-ico
カテゴリで探す
五十音で探す

診療ガイドライン検索

close-ico
カテゴリで探す
五十音で探す