EBMに基づく尿失禁診療ガイドライン
II 尿失禁の基礎知識 |
4. 診断
(2) 診察
一般理学検査、神経学的検査以外に、尿失禁の評価に特異的な診察ポイントがある。
<1> 外陰部の診察
尿失禁による外陰部皮膚の湿疹の有無、外尿道口や腟口の診察は重要である。腹圧性尿失禁の女性患者では、骨盤底弛緩に合併して、膀胱瘤、直腸瘤、子宮脱などの性器脱を合併することが少なくない。
<2> ストレステスト
女性で膀胱内に尿が充満した状態で、怒責や咳をさせ、尿道から腹圧に一致した尿漏出があるかどうかをみる検査で、ストレステスト陽性の場合は腹圧性尿失禁の存在を裏づける。
<3> Qチップテスト
女性において、砕石位で外尿道口からQチップ(綿棒)を挿入し、怒責時にどれほど綿棒の先が弧を描くかを視覚的に判定する検査で、水平位から怒責時に30度以上の移動があれば、尿道過可動を疑う(図4)。
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図4 Qチップテスト 女性腹圧性尿失禁における尿道過可動の診断に用いる。安静時(a)に比べ、怒責時(b)に綿棒が上向きに大きく弧を描いて移動し、尿道過可動があることを示唆する。 |
<4> 尿失禁定量テスト
尿失禁の程度を評価する方法で、主に腹圧性尿失禁の症例について、客観的重症度の評価や他覚的評価として用いられる。国際尿禁制学会により提唱された方法は、水500mL飲水後、外陰部にパッドを装着し、一連の動作(30分の歩行、階段の上り下り1階分、椅子に座る・立ち上がる10回、強く咳き込む10回、1カ所を走り回る1分、床上の物を腰をかがめて拾う動作5回、流水で手を洗う1分間)を行い、運動前後のパッド重量の差を測定して、尿失禁量を計るものである。2g以上を尿失禁陽性とする。