EBMに基づく尿失禁診療ガイドライン
II 尿失禁の基礎知識 |
3. 症状
尿失禁の病態に応じて特徴的な症状がみられる。咳・くしゃみをしたり、重いものを持ったり、走る・階段を上るなど、腹圧がかかる時に尿意を伴わずに尿が漏れる症状は腹圧性尿失禁に特徴的な症状である。急に尿がしたくなり、トイレまでがまんできずに尿が漏れてしまう症状は切迫性尿失禁にみられる症状で、咳をしたり、冷たい水に手を触れたり、水の流れる音を聞いたり、何らかの刺激が膀胱の不随意収縮の引き金になることもある。混合型尿失禁では、これらの両者の症状が種々の程度にみられる。頻回に、あるいは持続的に少しずつ尿が漏れ出る症状は溢流性尿失禁でみられるが、排尿障害を伴うことが特徴的である。高齢者では、尿失禁の病因に複数の因子が関わることが多く、尿失禁といっても多彩な症状を呈することが少なくない。また、知らない間に尿が漏れるという非特異的な尿失禁の訴えは意外に多いが、女性では尿失禁と腟分泌物との鑑別が必要となる。