「科学的根拠(evidence)に基づく白内障診療ガイドラインの策定に関する研究」厚生科学研究補助金(21世紀型医療開拓推進研究事業:EBM分野)
I.分類・疫学
文献 | Ev level | 対象患者と研究施設 | 目的と方法 | 結 果 |
Lopez ML, Datiles MB, Podgor MJ, Vivino MA, Mahurkar AA, Lasa SM: Reproducibility study of posterior subcapsular opacities on the NEI retroillumination image analysis system. Eye 8 (Pt 6): 657-661, 1994 | 後嚢下混濁を有する20眼 | NEI反帰光画像解析システムにおける後嚢下混濁の再現性研究 半自動徹照画像解析システムによる白内障面積とintegral of cataract density (ID) の測定 2人の撮影者により2回データを採取した。ばらつきを分散モデルの変量効果分析により評価した。 | 面積およびIDの測定誤差は、全体のばらつき(対象眼間のばらつきと測定誤差の合計)への寄与は小さく、それぞれ0.4%、0.1%であった。面積の測定誤差に最大の寄与をするのは、画像解析のばらつきであった(97%)。IDの測定誤差には、画像のばらつき(44%)と画像解析のばらつき(46%)が主に寄与した。 | |
Karbassi M, Khu PM, Singer DM, Chylack LT Jr: Evaluation of lens opacities classification system III applied at the slitlamp. Optom Vis Sci 70 (11): 923-928, 1993 | 判定可能な2グループの患者(193眼と51眼)の眼写真 | LOCSIII分類の細隙灯顕微鏡での有用性の評価と写真判定結果との比較 2名の検者が2グループの患者について、細隙灯顕微鏡および写真での判定をLOCSIIIにより行った。 | 細隙灯顕微鏡での95%許容限界は第1グループ193眼で0.9-1.8であったものが、第2グループ51眼の判定時では0.6-1.2に向上した。特に皮質混濁と核の色調についての精度は大きく改善された。写真判定での95%許容限界は第1グループでの2検者間で0.3-0.6、同一検者内で0.6-0.8であり、第2グループ51眼の判定時でもほぼ同様の結果であった。細隙灯顕微鏡と写真判定間の95%許容限界は1.0より大きいことがほとんどであった。 | |
Sakamoto Y, Sasaki K, Nakamura Y, Watanabe N: Reproducibility of data obtained by a newly developed anterior eye segment analysis system, EAS-1000. Ophthalmic Res 24 (Suppl 1): 10-20, 1992 | 透明水晶体を有する40眼と白内障62眼 金沢医科大学病院あるいは弥生病院 | 最近開発された前眼部解析装置(EAS-1000)により得られたデータの再現性を評価した。 角膜曲率半径、角膜厚、前房深度、全水晶体厚、前房隅角、散乱光強度はすべて水晶体のスリット断面像で観察し、瞳孔内の白内障陰影領域は徹照画像により測定した。14.2日間隔で2回測定した。 | いずれも1回目と2回目の検査データに有意差は無かった。 | |
Maraini G, Pasquini P, Sperduto RD, Bonacini M, Carrieri MP, Corona R, Graziosi P, Tomba MC, Williams SL: The effect of cataract severity and morphology on the reliability of the Lens Opacities Classification System II (LOCS II). Invest Ophthalmol Vis Sci 32 (8): 2400-2403, 1991 | IV | 加齢性白内障に関するイタリア-米国自然史研究で収集した3646眼 | 水晶体混濁分類法II(LOCSII)の信頼性が、判定した混濁の重症度や、共存病変の存在や重症度によって影響を受けるか否かを検討した。 LOCSIIの信頼性の評価は、臨床検査者2名のスリットランプ段階評価の比較(346眼)と、スリットランプの段階評価と写真の段階評価の比較(3646眼)によって行った。 | 皮質と核の混濁の重症度は、スリットランプ段階評価の再現性に影響しなかった。しかし、後嚢下混濁の臨床的段階評価は、後嚢下混濁の重症度が高まるにつれて、より再現性が高くなった。共存病変の進行度が高くなると、核混濁のスリットランプ診断の一致度は低下したが、皮質と後嚢下の混濁では低下しなかった。臨床的段階評価と写真による段階評価の比較は、核と皮質の混濁に関しては、特異的混濁の重症度や共存する混濁の重症度にかかわらず、非常に良好ないし優れた一致を示した。後嚢下混濁の診断に関する一致性は、軽度の後嚢下混濁を有する眼や、核や皮質の共存混濁の重症度が高い眼では低下した。 |
Taylor HR, Lee JA, Wang F, Munoz B: A comparison of two photographic systems for grading cataract. Invest Ophthalmol Vis Sci 32 (3): 529-532, 1991 | 100眼 | 水晶体混濁の分類に関する2種類の異なる方法である、水晶体混濁分類法II(LOCSII)と、ジョンスホプキンス大学で開発された方法を比較した。 2法を用いて、100眼の核のスリットランプ写真と徹照後方照明水晶体写真を判定した。個々の写真の判定は、訓練された検査者3名が独立して行い、写真判定に要した時間は同等であった。 | どちらの方法とも、写真を用いて核混濁の重症度と核の色調を定義するもので、検査者間の一致度はいずれも良好であった(カッパ統計量、0.6より大)。皮質と後嚢下の混濁の分類方法は異なり、検査者間の一致度はいずれも許容範囲内であったが、ホプキンス法のほうが若干高かった。重症度の定義に関して、それぞれの方法で異なる基準と定義が用いられていたため、個々の写真の分類や、各重症度に占める写真の比率の相違には、若干のばらつきが存在した。 | |
Klein BE, Klein R, Linton KL, Magli YL, Neider MW: Assessment of cataracts from photographs in the Beaver Dam Eye Study. Ophthalmology 97 (11): 1428-1433, 1990 | ウィスコンシン州ビーバーダムの43-84歳の成人4926例 | ビーバーダム眼研究における写真からの白内障評価 核硬化症(n=1160)、皮質混濁(n=1159)、および後嚢下白内障(n=1137)に対し、写真による重複分類を行った。核硬化症は5段階に分類された。 | 症例の64.7%に正確な一致が認められ、1つのカテゴリー内では99.8%の一致がみられた。皮質混濁は水晶体の9領域に関係領域があると判断された。連続的尺度を重症度により12のカテゴリーに分類すると、正確な一致は73.5%から82.4%の間に分布し、1つのカテゴリー内での一致率は84.6%から89.9%の間に分布した。後嚢下白内障では中心円の病変に対する正確な一致は95.0%に認められ、1つのカテゴリー内での一致は97.7%にみられた。 観察者間の比較によっても同様な一致が明らかにされた。 | |
Edwards PA, Datiles MB, Green SB: Reproducibility study on the Scheimpflug Cataract Video Camera. Curr Eye Res 7 (10): 955-960, 1988 | 正常24眼と白内障61眼 | Scheimpflug白内障ビデオカメラの再現性研究 Zeiss Scheimpflug 白内障ビデオカメラを用いた半自動的システムによる横断および縦断的研究 90度経線で2回、2名の異なった著者により撮影し、マイクロデンシトメトリーを各保管画像について行った。認められた差がシステムのばらつきによるものか、画像間の実際の差によるものかそうでないかを調べるために、級内の相関係数を用いて再現性を測定した。 | 水晶体核における級内相関は0.995(95%信頼限界0.99-20.996)であった。従って、再現性は99.5%であった。前部皮質では、級内相関は0.941(95%信頼限界0.919-0.959)であった。後部皮質における級内相関は0.905(95%信頼限界0.870-0.932)であった。 | |
Sparrow JM, Bron AJ, Brown NA, Ayliffe W, Hill AR: The Oxford Clinical Cataract Classification and Grading System. Int Ophthalmol 9 (4): 207-225, 1986 | V | 細隙灯顕微鏡による白内障臨床分類法の提唱。 | 白内障病型は形態から分類した。それぞれの程度分類は基準写真をもとに行った。分析標的投影型の検眼鏡により白内障評価の精度の向上を図った。 | |
McCarty CA, Nanjan MB, Taylor HR: Operated and unoperated cataract in Australia. Clin Experiment Ophthalmol 28 (2): 77-82, 2000 | IV | オーストラリアのVisual Impairment Projectの対象(40歳以上のビクトリア州住民5147名) | オーストラリアにおける白内障の有病率、白内障手術の結果、および非手術白内障に関連する因子などを量的に示すこと。 問診、臨床検査、および水晶体写真撮影を施行した。白内障とは、過去に白内障手術の経験がある、皮質白内障が4/16以上、核白内障がWilmer標準の2以上、または後嚢下白内障が1mm2のものと定義した。 | 白内障手術既往の全荷重率は3.79%で、249眼が白内障手術既往眼であった。249眼中49眼(20%)は無水晶体眼、6眼(2.4%)は前房レンズ、194眼(78%)が後房レンズ挿入眼であった。手術既往眼のうち211眼(85%)は最も優れた視力回復(6/12以上 : 運転免許に必要な視力)が得られた。27眼(11%)の視力は6/18未満(中程度視力障害)であった。どんな特定の人口統計因子(年齢、性別、地方居住、職業、雇用状態、健康保険状況、民族性など)も非手術白内障の存在に関連性を示さなかった。 |
Mitchell P, Cumming RG, Attebo K, Panchapakesan J: Prevalence of cataract in Australia: the Blue Mountains eye study. Ophthalmology 104 (4): 581-588, 1997 | IV | オーストラリア ブルーマウンテンの49-96歳の眼疾患患者3654症例 | 高齢のオーストラリア人の代表的なサンプルにおいて、核白内障、皮質白内障、後嚢下白内障(PSC)について年齢と性別に特異的な有病率を測定した。 母集団ベース研究による有病率の測定 水晶体写真(細隙灯写真と反帰光写真)を含む詳細な眼科検診。水晶体写真はウィスコンシン白内障分類法を用いて評価した。 | 症例のうち6.0%の片眼および2.9%の両眼において過去に白内障手術が行われ、男女において同様であった。中等度または進行した核混濁は女性の53.3%、男性の49.7%にみられた。中等度の皮質白内障は女性の25.9%、男性の21.1%にみられた。後嚢下白内障は頻度が少なく、女性の6.2%、男性の6.5%に認められた。年齢の調整後、これらの性差は皮質白内障に対してのみ統計的に有意であった。初期および後期白内障または白内障手術既往に対してみられる年齢特異的な有病率は、同じ定義を用いたウィスコンシン州のビーバーダム眼研究(BDES)で報告された有病率と非常に良く似ている。白内障の病型別の年齢特異的有病率の比較で、BDESに比べて核白内障では低率を示し、PSCではわずかに低率を、皮質白内障ではわずかに高率を示した。 |
Datiles MB, Lasa MS, Freidlin V: A longitudinal study of cortical cataracts using retroillumination photographs. Curr Eye Res 15 (1): 53-61, 1996 | IV | 皮質白内障81眼 | 反帰光写真での皮質白内障の経時的な変化観察における国立眼研究所(NEI)のコンピュータ面積測定法の有用性の検討 Neitz Kawaraの反帰光カメラを用いて、皮質白内障の反帰光写真を平均31ヵ月間6ヵ月ごとに撮影。皮質白内障領域は特別に開発されたソフト(NEIコンピュータ面積測定システム)を使用して測定され、白内障の進行は勾配が臨界値を超えた場合に有意であるとした。 | 81眼中24 眼(30%)には有意な白内障の進行が認められ、57眼(70%)では進行がみられなかった。 |
Datiles MB, Magno BV, Freidlin V: Study of nuclear cataract progression using the National Eye Institute Scheimpflug system. Br J Ophthalmol 79 (6): 527-534, 1995 | IV | 平均核密度が0.30光学密度単位(ODU)以下の純粋核白内障24眼と、対照の正常30眼 | 1年間に渡り水晶体核領域の変化を検出するために最近開発された国立眼研究所(NEI)Scheimpflug白内障画像システムの有用性の検討 研究開始時点と12ヵ月後に検査した。NEI Scheimpflug白内障画像システムを用いてコンピュータ・デンシトメトリーを施行した。"水晶体混濁分類システムII(LOCSII)"により水晶体の臨床的等級付けを行った。デンシトメトリーでは、核領域の平均密度がプラスあるいはマイナス0.023 ODU(99%域)の変化をもって、1年後での進行、もしくは後退、とみなした。 | Scheimpflugデンシトメトリーを使用して、白内障25眼のうち14眼は1年後に有意な進行を示した。正常対照群では30眼中わずか3眼のみが有意な進行を示した。これに対し、LOCS II臨床的等級付けによると、1年後に白内障25眼中わずか2眼のみが1段階アップし、対照30眼中2眼が進行を示し、後退を示したのは1眼もなかった。視力には有意差はなかった。 |