「科学的根拠(evidence)に基づく白内障診療ガイドラインの策定に関する研究」厚生科学研究補助金(21世紀型医療開拓推進研究事業:EBM分野)

 
I.分類・疫学
 
文献 Ev level 対象患者と研究施設 目的と方法 結 果
Leske MC, Connell AM, Wu SY, Hyman L, Schachat A: Prevalence of lens opacities in the Barbados Eye Study. Arch Ophthalmol 115 (1): 105-111, 1997 IV40-84歳のバルバドス生まれの住民の無作為化サンプルから特定された4709例(資格者の84%)バルバドス眼研究の黒人が主流である母集団における加齢性水晶体混濁の病型と程度に関するデータを提示すること。
データ収集 : 水晶体混濁分類システムIIを利用して得られた細隙灯での水晶体の分類。主要アウトカム基準 : 後嚢下混濁、核混濁、皮質混濁(片眼においてグレードが2以上と定義)の有病率、および水晶体の変化(白内障手術の既往歴および/または分類不可能な程進行した白内障を含む)の有病率。
全体では、バルバドス眼研究の母集団の41%になんらかの水晶体の病変がみられ、3%は無水晶体または人工水晶体であった。アフリカ系の母集団では、皮質混濁(34%)が最も一般的で、続いて核混濁(19%)、後嚢下混濁(4%)の順であった。水晶体混濁の全病型の有病率は年齢とともに増加がみられた(P<0.001)。皮質混濁と核混濁は男性よりも女性に頻出した。水晶体混濁型が単独の有病率については、症例中21%が皮質混濁単独、6%が核混濁単独、0.4%が後嚢下混濁単独であった。13%に混合型混濁がみられた。より重症眼が20/40未満の視力喪失は、核混濁単独、後嚢下混濁単独、皮質混濁単独の48%、26%、18%にみられ、混合型混濁の53%にみられた。
Leske MC, Chylack LT, Wu SY, Schoenfeld E, He Q, Friend J, Wolfe J: Incidence and progression of nuclear opacities in the Longitudinal Study of Cataract. Ophthalmology 103 (5): 705-712, 1996 III白内障縦断的研究の参加者764例全水晶体混濁タイプの自然経過に関する疫学研究である白内障縦断的研究において核混濁の発生率と進行率を評価すること。
症例対照研究の一部として1988年12月までに収集したベースラインのデータには、カラースリット、逆光照明写真、Scheimpflug写真も含めた。同様のデータは、白内障縦断的研究としてその後1年間隔での来院時に4回収集した。
ベースライン時に核混濁がみられなかった症例において、新たな混濁の発生率は追跡調査2年後で6%、5年後で8%であった。既存核混濁の進行はより高度であった。核混濁既存症例において、核混濁の進行は2年後には1/3以上、5年後にはほぼ半数でみられた。高齢は新たな核混濁の高い発生率と有意に関連したが、既存混濁の進行とは関連しなかった。他の混濁タイプを有した症例は、核混濁の発生率と進行率がより高かった。
Carlsson B, Sjostrand J: Increased incidence of cataract extractions in women above 70 years of age. A population based study. Acta Ophthalmol Scand 74 (1): 64-68, 1996 IV1987年から1988年に白内障摘出術を受けた2191例
Sahlgrenska大学病院眼科
白内障手術と性別に関する研究
性別、年齢により分類
70歳以降の白内障摘出数は男性よりも女性に多く、その差は最初の眼の手術について最も顕著であった。男性と比較した女性の白内障摘出時の相対危険は95%信頼区間 1.51-1.94において1.71であり、有意なリスク増加を示した。最初の手術時、最良状態の眼の術前視力に高齢男女間の有意な差は認められず、女性には手術のためにより早期に来院する傾向が見られないことが示された。
Belpoliti M, Rosmini F, Carta A, Ferrigno L, Maraini G: Distribution of cataract types in the Italian-American case-control study and at surgery in the Parma area. Ophthalmology 102 (11): 1594-1597, 1995 IV白内障手術のために入院した45歳以上の連続する患者284例と加齢性白内障の米伊症例対照研究の1008例
パルマの眼科施設
同じ地理的地域(イタリア、パルマ)において、手術時の白内障病型の分布と、眼科外来に基づく症例対照研究において検出された分布とを比較すること。
LOCSIによる白内障病型の分類
手術群では核混濁と(すべての)後嚢下混濁において有意な増加が、皮質混濁および核混濁の純型は減少が、そして核と後嚢下の混合型の著しい増加が認められた。
Hirvela H, Luukinen H, Laatikainen L: Prevalence and risk factors of lens opacities in the elderly in Finland. A population-based study. Ophthalmology 102 (1): 108-117, 1995 IVフィンランド、オウル地方の3地区において抽出された70歳以上の住民560例のうち500例(89.3%)フィンランドの高齢者における水晶体混濁の有病率とリスクファクターの検討
両眼での矯正視力を測定し、水晶体混濁の診断は臨床的生体顕微鏡検査に基づき、所見を水晶体混濁分類システムIIの標準写真と比較し判定した。
研究対象中165例(33.0%)は両眼とも水晶体は透明であった。両眼もしくは片方の眼に白内障、無水晶体あるいは偽水晶体を認めたのは64.4%(322例)であった。有病率は70-74歳群における44.6%(88例)から、85-89歳群の97.6%(41例)へと、加齢とともに上昇した。全体で56.4%に両眼の白内障、無水晶体あるいは偽水晶体を認めた。核、皮質および後嚢下混濁はそれぞれ対象者の38.5%、37.6%、および27.7%で検出された。片眼あるいは両眼の落屑症候群は22.1%に認められた。年齢補正後の白内障有病率には性差はみられなかった。20/50以下の視力障害は、右眼の23.8%と左眼の22.4%では少なくとも白内障が部分的な原因と考えられた。白内障に対する重要なリスクファクターは、男性においては年齢と落屑症候群の存在で、女性においては年齢、日光の職業的曝露、現在の喫煙であった。
The Italian-American Cataract Study Group: Incidence and progression of cortical, nuclear, and posterior subcapsular cataracts. Am J Ophthalmol 118 (5): 623-631, 1994 IV医療機関個別方式に基づく症例対照研究で確認された45-79歳の1399例皮質、核、後嚢下白内障の発症率と進行に関する研究
皮質、核、後嚢下白内障の発症と進行についての検討と、縦断的研究における水晶体混濁分類システム2の有用性評価のために計画した。生存時間解析は、最低3回来院した1193例においてZeissの細隙灯検査とNeitzの徹照水晶体写真より得られたデータを用いて行った。
65-74歳の症例(最多年齢群)における3年間の皮質、核、後嚢下白内障の累積発症率は、それぞれ18%、6%、6%であった。各混濁タイプにおいて、症状の進行は発症よりも高頻度にみられた。ほとんどが進行度分類のミスによると思われる消退は、皮質および核白内障では少なかったが、後嚢下白内障ではかなり多かった。
Thompson JR, Sparrow JM, Gibson JM, Rosenthal AR: Cataract and survival in an elderly nondiabetic population. Arch Ophthalmol 111 (5): 675-679, 1993 IIイングランドの小都市で無作為に抽出された非糖尿病高齢者473人白内障と生存率の関連に関する研究
コホートの生存者を6-8年に渡り追跡調査した。
ベースライン調査時の核白内障とその後の生存者減少(P=.002)との間に、年齢および性補正後関連がみられた。核白内障の有無を比較すると、補正後の死に対する相対危険は1.52であった(95%信頼区間、1.15-1.99)。この影響は、対象の喫煙経験の有無による補正を行っても実質的には変わらなかった。
Minassian DC, Mehra V, Johnson GJ: Mortality and cataract: findings from a population-based longitudinal study. Bull World Health Organ 70 (2): 219-223, 1992 II無作為に抽出した11の農村の1020例(40-64歳)集団における縦断的試験による死亡率と白内障の検討
白内障病型および視力を1982年に調査、1986年に再調査した。Mantel-Haenszel法およびCox比例ハザードモデルを用いた重回帰分析。
ごく軽度の混濁または混濁のない症例に比べて、水晶体中央に混濁を認める症例における死亡率の増加が認められた。年齢調整死亡率は2以上(2.2)であり、年齢/性別調整および年齢/視力調整でも同様に、白内障集団において約2倍の死亡率が認められた。Cox比例ハザードモデルを用いた重回帰分析でもほぼ一致した結果が得られた。
Cohen DL, Neil HA, Sparrow J, Thorogood M, Mann JI: Lens opacity and mortality in diabetes. Diabet Med 7 (7): 615-617, 1990 II糖尿病患者294例からなる集団ベースのコホート群糖尿病患者における水晶体混濁と死亡率に関する縦断的検討
水晶体混濁を検査し、中央値で6年間の追跡調査を行った。
混濁を伴う患者108例中の49例と、混濁を伴わない患者184例中の24例が死亡した(オッズ比2.4、95%CI 1.5-3.9)。
Maraini G, Pasquini P, Sperduto RD, Rosmini F, Bonacini M, Tomba MC, Corona R: Distribution of lens opacities in the Italian-American Case-Control Study of Age-Related Cataract. The Italian-American Study Group. Ophthalmology 97 (6): 752-756, 1990 IV白内障患者1008例(年齢範囲、45-79歳)イタリア系米国人の加齢関連白内障に関する医療機関個別方式による症例対照研究で、水晶体混濁分類システムI(LOCSI)を用いて水晶体混濁を分類した。
LOCSI白内障分類での白内障病型診断
両眼の判定が可能だった全症例中の65%で、単一の病型の白内障が認められた。全患者および単一病型の患者において、皮質混濁の頻度が最も高く、後嚢下混濁の頻度が最も低かった。両側性白内障の患者では、白内障病型と重症度の一致程度が高かった。両眼白内障における病型の高度の一致と、加齢に伴う片側性白内障の有病率の低下は、片側性白内障の患者が対側眼に同型の混濁を生じる高リスク群であることを示唆している。皮質白内障の頻度は女性でより高く、片側性白内障の患者では、左眼に生じる頻度がより高かった。
Hall AB, Thompson JR, Deane JS, Rosenthal AR: LOCS III versus the Oxford Clinical Cataract Classification and Grading System for the assessment of nuclear, cortical and posterior subcapsular cataract. Ophthalmic Epidemiol 4 (4): 179-194, 1997Melton眼研究参加者560名核白内障、皮質白内障、後嚢下白内障に対する、2種類の白内障段階評価法の比較。
両眼の水晶体を、2種類の白内障段階評価法を用いて、スリットランプで判定した。オックスフォード臨床白内障分類および段階評価法(OCCCGS)では、皮質、後嚢下および核の白内障の判定を行うために、標準的ダイアグラムとMunsellカラー標本を用いる。水晶体混濁分類法III(LOCSIII)は、水晶体の写真透明度を標準に用いる。どちらの方法も、10進法の得点を与える。LOCSIIIの標準像についても、OCCCGSを用いて判定を行った。両方の判定法について、検者間の変動を計算した。水晶体混濁の病型ごとに、線形較正直線をプロットした。
核白内障と後嚢下白内障については、LOCS IIIとOCCCGSの相関は線形であった。皮質白内障については、LOCS IIIの得点を二乗すると、線形相関になった。LOCS IIIの標準像間の間隔は、OCCCGSを用いて人の眼で順位をつけると、線形であった。検者間の変動は、どちらの判定法も良好であった。
Panchapakesan J, Cumming RG, Mitchell P: Reproducibility of the Wisconsin cataract grading system in the Blue Mountains Eye Study. Ophthalmic Epidemiol 4 (3): 119-126, 1997Blue Mountains眼研究参加者Blue Mountains眼研究における核、皮質、後嚢下白内障(PSC)の等級評価に関し、Wisconsin白内障等級評価システムの評価者間および評価者内信頼度を検討すること。
試験対象の水晶体写真の無作為標本を、Wisconsin白内障等級評価システムに従い各評価者が再評価した。正方重み付けカッパ統計量により結果を比較し、核(5段階)、PSC(3段階)、皮質白内障(3段階)の等級評価に関して評価者間および評価者内信頼度を計測した。
等級評価における評価者間信頼度(正方重み付けカッパ統計量)は核白内障では0.82-0.79、皮質白内障では0.78、PSCでは0.57であった。白内障の3型すべてにおいて評価者内信頼度は評価者間信頼度よりわずかに高かった。
Asano K, Sasaki K, Sakamoto Y, Fujisawa K, Yamamura T: Evaluation of lens transparency changes through photographed images during a 13-month observation period. Ophthalmic Res 27 (Suppl 1): 86-93, 1995 IV皮質白内障を有する63眼13ヵ月間で、白内障進行の変化あるいは水晶体透明性消失の増悪の発見が可能であるかどうかを評価。最大散瞳時の瞳孔サイズと患者の年齢との関係、患者の糖尿病の有無との関係についての検討。
徹照画像による瞳孔内混濁陰影部の測定とScheimpflugスリット画像を用いた水晶体最深皮質層における散乱光強度の測定
63眼の白内障水晶体の内31眼(49.2%)が混濁陰影部の5%以上の増加を、45眼(60.0%)が散乱光強度の5%以上の増加を示した。糖尿病患者の眼の92.5%と非糖尿病患者の92.3%において散瞳薬点眼後に瞳孔サイズが6.5mmを超えた。
Magno BV, Freidlin V, Datiles MB: Reproducibility of the NEI Scheimpflug Cataract Imaging System. Invest Ophthalmol Vis Sci 35 (7): 3078-3084, 1994正常な水晶体と白内障水晶体(中央皮質混濁あるいは後嚢下混濁を除く)を有する143眼国立眼研究所(NEI)Scheimpflug白内障画像システムによる水晶体核の密度測定の再現性を測定することを目的とした。
水晶体のZeiss Scheimpflug画像模写は1人の撮影者が作成した。画像は、曝露即座チェックにより妥当性をテストした後に保管した。そして核領域のデンシトメトリーは画像ごとに施行した。反復測定による測定値の差の99%がその中に含まれると予想される間隔を、再現性の値(99%域)とみなした。
核密度<0.30 光学密度ユニット(odu)(125眼)に対し、99%域は+/- 0.023 oduであった。核密度>=0.30 odu(18眼)の水晶体では、99%域は最初の測定値の+/-0.14倍であった。
 
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