「科学的根拠(evidence)に基づく白内障診療ガイドラインの策定に関する研究」厚生科学研究補助金(21世紀型医療開拓推進研究事業:EBM分野)

 
II. 総括研究報告書
 
E.結論
 
加齢性白内障を診断、予防、視機能と手術適応、そして治療の観点から分析した。 診断では、皮質、核、後嚢下の混濁部位別分類を基本とすることが明示された。 加齢に伴う白内障の有所見率も明らかとなり、白内障患者の管理に有用な結果であった。 白内障の予防手段の特定が切望されるが、加齢性白内障では白内障発生誘発因子が複雑に絡んでいて解析が困難である。 若年者から危険因子への対策をとって白内障の発生を5〜10年遅らせることができるなら、手術の適応にならずにすむ人が増加することになる。 治療の主体である手術では、術式、そして合併症を中心に評価した。 適応は視力のみで決定せずにコントラスト感度やグレア難視度も参考にする。 糖尿病を伴う白内障は進行性であることや網膜症の状態や全身状態など、特異的な管理が必要である。 また、術後には炎症が強く生じ前嚢収縮や後発白内障も生じやすいことから、加齢性白内障とは異なった評価となる。 手術方法は現在は小切開創手術と眼内レンズ挿入術が主流であるが、症例によって計画的嚢外摘出術、嚢内摘出術が選択される場合もある。 一方、薬物療法は薬効を評価する有意な客観的臨床成績に欠けているようである。 しかし、白内障治療薬に効果がないとする成績も見当たらないことから、使用に際しては正しいインフォームドコンセントが望まれる。
文献検索方法に則り選択された文献は残念ながら英文誌が多い。 我々は多施設、多数例、長期間観察によるランダム比較試験を行って得た成績を適切な統計処理によって分析を積極的に行う必要がある。 特に加齢白内障は加齢を基本としているために急性疾患でないことからevidenceを造るのが難しい。 系統化された臨床研究組織体制を作ってRCTに基づいた論文を報告すべきである。
したがって、evidenceに基づく診療ガイドラインの作成は甚だ難問であった。 我々は正しい文献による評価を基にしているのでこのガイドラインが実際の診療を支配するものではない。 あくまでもインフォームドコンセントのもとに症例に適した正しい診断と正しい治療法の選択をすべきであってガイドラインはあくまでもガイドするものであって、リードするものではない。 ガイドラインが診療の全てではあり得ない。本ガイドラインを「診療のガイド」として参考にしていただきたい。 白内障診療は変遷を続けていくので、今後、ガイドラインの改訂が必要である。

 

 
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