「科学的根拠(evidence)に基づく白内障診療ガイドラインの策定に関する研究」厚生科学研究補助金(21世紀型医療開拓推進研究事業:EBM分野)

 
II. 総括研究報告書
 
B.研究方法
 
ガイドライン作成の手順は「診療ガイドラインの作成の手順」(ver. 4.1)に基づいて行った。
 
1.作成委員会の設置
白内障の臨床ならびに研究に造詣の深い人達の中から課題の解析に適した研究者を専門分野のバランスも考慮して人選し、各文献の吟味ならびにデータベースの作成の分担を依頼した。
 
2.研究課題の設定ならびに分担者
(1)白内障の診断ならび疫学
(2)白内障危険因子の探索
(3)白内障の手術適応と視機能
(4)白内障の手術療法
(5)糖尿病白内障の性状と手術適応
(6)白内障の薬物療法
(7)ガイドライン作成に際して生じる問題点の検討
(1)〜(7)の課題に対する分担者は概ね決めたが、エビデンスの評価や勧告は全員の意見で決定したので班員全員が各章の内容を理解した結果である。 (1)佐々木洋(金沢医大)、(2)小原喜隆(獨協医大)、(3)北原健二(慈恵医大)、(4)増田寛次郎(日赤医療センター)、松島博之(獨協医大)、(5)赤木好男(福井医大)、(6)茨木信博(日本医大北総病院)、(7)小山弘(京都大学医学部)
 
3.文献検索の実施
Cochrane Controlled Trial Register (CCTR)から年毎の白内障文献数を1966年から調査したところ、1987年から文献数が増加しているデータが得られたので1987年から2001年2月迄に刊行された文献をPubMed、 Cochrane Library、そして医学中央雑誌から検索した。 第1回の検索で1571件、第2回に751件の論文が検索された。国内文献に関しては4924件が検索された。 検索方法は、原則として網羅的に検索して、次いで質の高い論文に絞って検索し、論文数が多い場合は中心概念のものに限定することにした。
検索した文献を別表の基準でエビデンスのレベルを決定し、質の高い文献を採用した。 ただし、研究課題によっては研究内容がRCT論文にしにくいこともあってレベルIII以上でなくても内容を吟味してレベルIVやVであっても採用した論文もある。 採用の基準は研究課題毎に内容が異なるので、分担研究者がエビデンスレベルを吟味して選択基準とした。 結局、396件の文献が採用された。
尚、これらの情報源のみでは不十分と思われる領域については分担研究者の判断で文献を補充した。 これらの採用文献についてアブストラクトフォームとアブストラクトテーブルを作成した。
 
4.サイエンティフィックステートメントの作成
アブストラクトフォームから課題毎に内容をまとめサイエンティフィックステートメントとして整理した。 これらは、研究課題につながるものである。
 
5.勧告の強さの決定
勧告の強さは、
1)エビデンスのレベル
2)エビデンスの数と結論のバラツキ
3)臨床的有効性
4)臨床上の適用性
5)害やコストに関するエビデンス
などから総合的に判断して以下のA)〜D)に分類して判定した。
A)行うよう強く勧められる
B)行うよう勧められる
C)行うか行わないか勧められるだけの拠が明確でない
D)行わないよう勧められる
勧告の強さの判断には主観が入りうるので本研究班では全員で一つ一つの事象を吟味して合意のもとに判断した。 尚、課題の性格上、白内障の「診断」ならびに「危険因子」については勧告を判定するものではないので、勧告をせずにエビデンスの内容について説明を加えた。
 
表.当研究班におけるエビデンスレベル分類
レベル治療予後診断
Iランダム化比較試験のメタ分析発端コホート研究のシステマティックレビューLevelII研究のシステマティックレビュー/多施設にて確認済みのCDR*
II1つ以上のランダム化比較試験1つ以上の発端コホート研究正しい方法¶で行なわれた確認コホート研究**/単一施設で研究されたCDR
III非ランダム化比較試験後ろ向きコホート研究、もしくはランダム化比較試験における未治療対照群正しい方法で行なわれた探求的コホート研究***/確認集団のないCDR
IVコホート研究/症例対照研究など
質の良い観察研究
質の良い観察研究Consecutiveでない研究/基準となる検査が全例に行なわれていない研究
Vケースシリーズ/ケースレポートケースシリーズ症例対照研究/基準となる検査が独立に行なわれていない研究
VI患者データに基づかない専門委員会や専門家個人の意見患者データに基づかない専門家の意見、生理学や基礎研究に基づく意見批判的吟味をされていない専門家の意見、生理学や基礎研究に基づくもの
    
  発端コホート研究(inception cohort) : ある疾患の経過中、早い時点で、かつ関心の対象となる全ての患者で出現する時点から観察の開始される前向きコホート*CDR(clinical decision rule) : 予後予測や診断のためのアルゴリズムやスコアリングシステム。
   **確認コホート研究(validating cohort study) : 探求的コホート研究から導き出された"仮説"である検査の有用性を確認するためにコホートを使った研究。
   ***探求的コホート研究(exploratory cohort study) : ある検査が、ある疾患の診断に有用であるという仮説を、導き出すためのコホート研究。
   ¶正しい方法であるためには、以下の要件を満たす必要がある。
1.基準となる検査が独立して全症例に行なわれ
2.基準となる検査も検討対象の検査もそれらの結果にブラインドされ、もしくは客観的に行なわれている

 

 
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