(旧版)EBMに基づく 胃潰瘍診療ガイドライン 第2版 -H. pylori二次除菌保険適用対応-

 
編集後記

 
「胃潰瘍ガイドラインの適用と評価に関する研究班」班長
自治医科大学医学部消化器内科
  菅野  健太郎

厚生労働省の21世紀型医療開拓推進事業「科学的根拠(evidence)に基づく胃潰瘍診療ガイドラインの策定に関する研究班」によって2003年に出版された「EBMに基づく胃潰瘍診療ガイドライン」は,さまざまな論議を呼びながらもわが国の胃潰瘍診療の基本的な枠組みを構築するうえで大きな役割を果たしてきた。しかし,実地臨床における胃潰瘍診療ガイドラインの普及状況やガイドラインを適用する場合の問題点については,まだ十分に評価されていなかった。これらの検討を行うため,「胃潰瘍ガイドラインの適用と評価に関する研究班」が厚生労働省の医療技術・医療安全総合研究事業の一環として新たに認められた。本書は,「胃潰瘍ガイドラインの適用と評価に関する研究班」が,わが国における胃潰瘍診療ガイドラインの実地臨床の場における普及状況や適用上の問題点等に関して行った調査・検討を踏まえ,新たな文献的エビデンスも取り入れて初版の「EBMに基づく胃潰瘍診療ガイドライン」を改定したものである。この改訂版においても,第1部を消化性潰瘍についての一般的解説,第2部をガイドライン,第3部をガイドラインの作成プロセスや評価で構成し,一般用の説明文書を付加するなどの初版の体裁を基本的には踏襲している。しかし,実地臨床の現場からの要望や初版本の読者アンケートなどに基づいて,新たな章が追加されたこと,初版ガイドラインで問題点として指摘された,保険適用の有無,わが国のエビデンスの有無については,それぞれのステートメントに明示するように改めた。また,初版ではガイドラインでカバーしきれない部分を補うために,エキスパートオピニオンとしてQ&Aの項目をいくつか設けたが,今回はこれを削除し,別の書籍として発行する予定である。本書をお読みになって疑問に思われる点,詳しく知りたいと思われる点があれば,出版社にお知らせいただければ,それに対してできるだけQ&A集において対応をしたいと考えている。
ガイドラインの内容に関しては,新たなエビデンスを検討しても,基本的な考え方や診療の流れ(フローチャート)に大きな変更を加える必要はなかった。しかし,内視鏡的止血法,NSAID潰瘍の治療や予防などにおいては,新たなエビデンスに基づいて文言の改定がなされているほか,除菌薬のレジメンやCOX-2阻害薬のわが国での保険適用追加に伴う修正がなされている。このように,第2版の「EBMに基づく胃潰瘍診療ガイドライン」では,ガイドライン作成の基本的な手法,精神を受け継ぎながら,ガイドラインのあり方に則って,新たなエビデンス,あるいは臨床現場からのフィードバックに基づいた多くの改定がなされており,これまで以上に実地臨床に役立てられることを期待している。
本書の出版は,多忙な臨床業務にも拘わらず班研究にご尽力をいただいた班員の諸先生の多大な貢献によって可能となったものである。アドバイザーとして研究のご指導をいただいた中澤三郎先生,班員の方々にこの場を借りて厚く御礼申し上げる。また研究班の事務局として運営に努力してくれた当科佐藤貴一講師,飯塚左菜永,小川美智子両名ならびに出版にあたってご尽力いただいたじほう社荻上文夫氏に感謝する。
「科学的根拠(evidence)に基づく胃潰瘍診療ガイドラインの策定に関する研究班」に引き続く「胃潰瘍ガイドラインの適用と評価に関する研究班」においても,ガイドラインの策定,普及に重要な貢献を果たして来られ,今後その普及,啓発活動に大きな力を発揮していただくことを期待されていたわれわれの同志であった太田慎一埼玉医科大学教授が,その志なかばで急逝されたことは痛恨の極みであった。ここに班員の方々のお許しを得て本書を故太田慎一埼玉医科大学教授に捧げさせていただくとともに,その御遺志をついでいくことを誓い編集後記とする。

平成19年3月

 

 
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