(旧版)EBMに基づく 胃潰瘍診療ガイドライン 第2版 -H. pylori二次除菌保険適用対応-

 
第2部 胃潰瘍診療ガイドライン―解説―

 
9.メタアナリシス
4)結果
(1)H. pylori 除菌


Treiberら5)の1998年に発表されたメタアナリシスでは,60の研究から4,329名を対象として解析が行われ,潰瘍治癒を治療終了後4週以後のH. pylori(呼気テストまたは組織学的またはウレアーゼ試験で判定)の有無で比較した。その結果,除菌成功例の治癒率88%,H. pylori 陽性例の治癒率73%(OR=2.7,95%信頼区間[confidence interval,以下CI]1.3〜5.4,p<0.01)で,除菌成功例で有意に治癒率が高かった。また,除菌成功例では胃酸分泌抑制治療を続けた場合と,そうでない場合に治癒率に差はなかった(94%と96%)。一方,H. pylori 陽性例では78%対67%で胃酸分泌抑制治療を続けた方が有意に治癒率が高かった(p<0.0001)。なお,これらの研究は除菌治療を行った場合と行わなかった場合を比較したものではなく,除菌治療後に除菌に成功した例と失敗した例の比較を行ったものである。
胃酸分泌抑制治療の併用はH. pylori 陽性例では78%対67%で治癒率に差があったが(p<0.0001),H. pylori 陰性化例(除菌成功例)では94%と96%で差がなかった。
したがって,H. pylori 陽性の胃潰瘍には除菌治療を行い,除菌失敗例が出てくることを考慮して,胃酸分泌抑制治療も治癒の時点までは,続けるべきである。ただし,今後除菌の確認が早期に可能になれば,除菌治療のみで十分である可能性がある。
除菌後の胃潰瘍の再発については,Hopkinsら6)の5論文を対象にしたメタアナリシスではさまざまなレジメの除菌治療で治療終了後4週の時点で,H. pylori が陰性化した例と陽性のままの例を比較し,陰性化例の再発率が4%に対し陽性例では59%との結果であった。
さらに,Fordら7)は消化性潰瘍を対象とした60研究をまとめたメタアナリシスの中で,胃潰瘍の治癒について,抗潰瘍薬治療に対し除菌治療のリスク比は1.32(95%CI:0.92〜1.90)(13試験,1,469症例)で差がなかったと報告。しかしながら,胃潰瘍の再発については,除菌治療が無治療に対して有意に優れていることを示した。リスク比は0.28(95%CI:0.18,0.43)(10試験,1,029症例)であった。
また,Gisbertら8)は,消化性潰瘍患者を対象に,7日間のPPIベースの3薬併用療法を,同治療プラス2週間以上のPPIの治療と比較した。7日治療プロトコールの治癒率は91%に対して,PPIの投与を2〜4週間以上に延長した場合は92%であった(オッズ比=1.11,95%CI:0.71〜1.74)。7日間のPPIベースの3薬併用療法に対して,PPI投与を延長しても治癒率に差はないことを報告した。

 

 
ページトップへ

ガイドライン解説

close-ico
カテゴリで探す
五十音で探す

診療ガイドライン検索

close-ico
カテゴリで探す
五十音で探す