(旧版)EBMに基づく 胃潰瘍診療ガイドライン 第2版 -H. pylori二次除菌保険適用対応-

 
第2部 胃潰瘍診療ガイドライン―解説―

 
9.メタアナリシス
メタアナリシスとは

メタアナリシスは,すでに発表されている同じテーマに関する臨床研究をまとめて,再度解析して結論を引き出す研究手法である。その目的は,1 サンプルサイズを増やすことによって統計学的Power(検出力)を高めること,2 論文の結論が一致していない場合にその不確実性を解決すること,3 エフェクト・サイズ(有効サイズ,有効量)を改善すること,4 研究の最初にはわからなかった問題に答えること,である。すなわち,1つだけの研究で特にサンプルサイズが小さい場合には,偶然によるばらつきで差が出ることがあり,複数の研究をまとめることによって,より真の値を得られるようになる。方法としては,固定効果モデルとランダム効果モデルを用いる方がある。後者の方が,各研究間のばらつきも考慮しより保守的な結果を出す方法といえる。優れたメタアナリシスのためにQUOROM statementが発表されている25)。また,最近はベイズ統計学に基づいたメタアナリシスの手法が用いられ,研究間の異質性を調整するモデルが用いられることも可能である26)
メタアナリシスでは,複数の研究から,定量的な効果指標を求めること27)が可能である。リスク比(Risk ratio;RR),絶対リスク減少(Absolute risk reduction;ARR)あるいはオッズ比(Odds ratio;OR)などを効果指標として,統合した値を95%信頼区間とともに求めることができる。メタアナリシスの結果は,エビデンスのレベルとしては,一番高いとされている。特に,信頼区間の幅が狭い場合がそうである。アウトカムとして,病変の存在を用いるか,逆に治癒を用いるかによって効果指標の解釈が異なるので注意が必要である。前者ではRRやORが1より小さな値の場合に,後者では1より大きな値の場合に有効な治療法となる。

 

 
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