(旧版)EBMに基づく 胃潰瘍診療ガイドライン 第2版 -H. pylori二次除菌保険適用対応-
第2部 胃潰瘍診療ガイドライン―解説― |
2.出血性潰瘍診療指針
2-1内視鏡的治療
5)研究結果
(1)-a 内視鏡的治療とコントロールの比較
高周波凝固法のオッズ比(95%信頼区間)は0.33(0.18〜0.61)1),2),レーザー照射法は0.41(0.27〜0.60)3),4),5),6),7),ヒータープローブ法は0.35(0.19〜0.66)6),8),9),血管収縮薬の局注法+ヒータープローブ法の併用は0.28(0.13〜0.59)10),11),血管収縮薬+硬化剤の局注法は0.22(0.12〜0.40)9),12),13)であり,上記のいずれの内視鏡的治療も非内視鏡的治療に比べ再出血および持続出血を有意に予防した。
(1)-b 治療の必要な出血性潰瘍の性状
活動性出血(Ia:噴出性出血およびIb:湧出性出血)のオッズ比(95%信頼区間)は0.26(0.17〜0.39)1),2),3),4),5),6),7),10),12),13),IIa(露出血管を認める潰瘍)は0.27(0.18〜0.42)1),2),3),5),6),8),10),12),14)であり,IおよびIIaに対する内視鏡的治療は再出血および持続出血を有意に予防したが,IIb(潰瘍底に血餅付着のみ)では0.52(0.26〜1.04)1),3),4),5),10),15),16)であり,非内視鏡的治療に比べ治療効果に明らかな優位性を認めなかった。
(2)-a 組み合わせの種類が同一の異なる内視鏡的治療間での比較
レーザー照射法vsヒータープローブ法のオッズ比(95%信頼区間)は0.63(0.30〜1.33)6),37),レーザー照射法vs高周波凝固法は1.14(0.50〜2.58)18),37),レーザー照射法vs硬化剤の局注法は0.97(0.53〜1.78)18),19),20),血管収縮薬の局注法vsヒータープローブ法は0.71(0.34〜1.51)21),22),硬化剤の局注法vs高周波凝固法は1.15(0.45〜2.91)18),23),血管収縮薬の局注法vs血管収縮薬+硬化剤の局注法は1.07(0.59〜1.94)22),24),25),ヒータープローブ法vs血管収縮薬+硬化剤の局注法は0.70(0.15〜3.16)9),22)であり,異なる内視鏡的治療間で治療効果に差を認めなかった。
(2)-b クリップ法vs他の内視鏡的治療の比較
クリップ法vs他の内視鏡的治療法(HSE局注法,ヒータープローブ法,蒸留水大量局注法または純エタノール局注法)30),31),32),33),34)で,クリップ法は再出血および持続出血に関するオッズ比が0.48(0.29〜0.80)と有意な値を示した。特に再出血の予防効果に優れており,オッズ比は0.30(0.16〜0.59)であった。
(2)-c 血管収縮薬の局注に他の内視鏡的治療を追加する効果
エピネフリンやアドレナリンを用いた血管収縮薬の局注法vs血管収縮薬の局注に他の内視鏡的治療を追加した方法22),24),25),26),27),28),29)で,内視鏡的治療を追加した場合の再出血および持続出血に関するオッズ比は0.64(0.42〜0.97)であった。
(3)緊急手術移行
高周波凝固法のオッズ比(95%信頼区間)は0.40(0.16〜0.97)1),2),レーザー照射法は0.52(0.30〜0.89)3),4),7),ヒータープローブ法0.18(0.06〜0.52)8),9),35),血管収縮薬+硬化剤の局注法は0.09(0.04〜0.21)9),12),13)であり,内視鏡的治療は非内視鏡的治療に比べ有意に緊急手術の移行を防止した。ただし,血管収縮薬の局注法+ヒータープローブ法は0.36(0.11〜1.16)10),11)であり有意差は認められなかった。各種の内視鏡的治療はおおむね緊急手術の移行を減少させる効果が認められた。内視鏡的治療法全体のオッズ比(95%信頼区間)は0.34(0.24〜0.48)1),2),3),4),7),8),9),10),11),12),13),35),36)であり,非内視鏡的治療に比べ明らかに緊急手術の移行を減少させた。
(4)致死率に対する各種止血法の比較
高周波凝固法のオッズ比(95%信頼区間)は0.85(0.40〜1.81)1),2),レーザー照射法は0.21(0.09〜0.48)3),4),5),6),7),ヒータープローブ法は0.90(0.26〜3.15)6),8),血管収縮薬の局注+ヒータープローブ法の併用は0.51(0.09〜2.85)10),11),血管収縮薬+硬化剤の局注法は0.49(0.20〜1.23)12),13)であった。レーザー照射法以外の個々の内視鏡的治療では非内視鏡的治療に比べ致死率の減少が認められなかったが,内視鏡的治療全体のオッズ比(95%信頼区間)は0.49(0.31〜0.78)1),2),3),4),5),6),7),8),10),11),12),13),36)であり,非内視鏡的治療に比べ有意に致死率を抑制した。