(旧版)EBMに基づく 胃潰瘍診療ガイドライン 第2版 -H. pylori二次除菌保険適用対応-

 
第1部 胃潰瘍の基礎知識

 
4.合併症
2)穿孔

潰瘍穿孔例の70〜75%は十二指腸潰瘍であり,胃潰瘍での穿孔は少ない。近年高齢者の穿孔例が増加傾向にある。消化性潰瘍に対する外科的治療は減少しているが,潰瘍難治例や出血例に比べて穿孔例の減少は少ない。通常,腹痛を主訴として来院するため急性腹症として取り扱われる。高齢者では自覚症状ならびに腹部の理学的所見が不明瞭なことがあるので,注意を要する。突然の上腹部痛と腹膜刺激症状を呈する場合には,穿孔を疑い,横隔膜下遊離ガス像を確認する。穿孔早期には遊離ガス像が証明されない場合もある。穿孔が疑われる症例に対しては,鎮痛を十分に行い,送気量をおさえて緊急内視鏡検査を施行する。
穿孔例の予後は,術前併存疾患,ショックの有無,穿孔後の経過時間(24時間以上)が関係する。従来,穿孔例に対しては,手術の絶対適応と考えられていたが,上記のリスクのない十二指腸潰瘍例(65歳以下)で,穿孔早期で上腹部に限局する腹膜炎所見を呈する症例では,経鼻胃管による持続吸引と抗潰瘍薬の併用による保存的治療を選択する施設が増加している。なお,500mL以上の大量腹水例や高齢者(65歳以上)では,早期手術を考慮すべきであるとされている。
外科的治療は医療機器の進歩とともに,腹腔鏡下手術が普及してきている。胃潰瘍穿孔例に対しても腹腔鏡下の穿孔部閉鎖術が行われるが,巨大潰瘍例では閉鎖不良,胃角部潰瘍では閉鎖後の通過障害の危険性があるため,開腹下の広範囲胃切除術の選択が推奨されている。

 

 
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