(旧版)EBMに基づく 胃潰瘍診療ガイドライン 第2版 -H. pylori二次除菌保険適用対応-

 
第1部 胃潰瘍の基礎知識

 
1.疫学

胃潰瘍の疫学では指標として使える公的資料は少ない。一般的な疫学的指標に関する公的統計資料には1 人口動態統計(1年当たりの死亡率),2 国民健康調査(1日当たりの有病率),3 患者調査(1日当たりの受療率)があげられる1)。その他,公的資料ではないが,4 胃集検全国集計2)(1年当たりの発見率)などが利用できる。NSAID関連の胃潰瘍については,日本リウマチ財団が行った疫学調査(1999年)の結果が公表されている3)表1)。人口動態統計による死亡率は癌やその他の致死的な疾患については有用であるが,胃潰瘍のような通常致死的でない疾患では,死亡率からは疾患の全体像を掴むことはできない。わが国の有病統計には国民健康調査と患者調査がある。国民健康調査は被調査者自身が傷病名を回答するため,傷病名の正確性に問題が存在する。また,1985年以降は別の統計(国民生活基礎調査)の一部となっているので1985年以前と以後の比較は困難である。患者調査は,医療機関に対する調査で,指定された日の入院・外来患者全員の傷病について調査するものである。傷病名の正確性は高いが,受療率の統計には主病名しか反映されておらず,患者数は過小評価されることになる。胃集検は,精度の高い診断方法で継続的にほぼ一定の集団について行われていることから,発見頻度の変遷などを検討するうえで貴重な資料である。


表1 わが国における胃潰瘍の疫学的指標
項目   調査年  
死亡率(人口動態統計)※ 2.7/10万人 2004年
有病率/1日当たり(国民健康調査)       353.9/10万人 1985年
推計総患者数(患者調査)※ 782,000人 2002年
胃潰瘍発見率(胃集検全国集計) 1.17% 2003年
NSAID関連胃潰瘍発見率
(リウマチ財団疫学調査)
15.5% 1991年
※胃潰瘍と十二指腸潰瘍を併せた数値

 

 
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