(旧版)科学的根拠に基づく 乳癌診療ガイドライン 5 疫学・予防 2005年版

 

Research Question 7
閉経後ホルモン補充療法は乳癌の危険因子になるか

エビデンスグレード I    リスクの増加はわずかであるが危険因子となり得る。


【背景・目的】

閉経後ホルモン補充療法(hormone replacement therapy;HRT)は全世界で2億人以上の女性に使用されていると推定されている。初期のエストロゲン補充療法(estrogen replacement therapy;ERT)からプロゲスチン併用補充療法(combined hormone replacement therapy;CHRT)が増加するに従い乳癌発生のリスク増加が多数の疫学調査から指摘され,1990年代以降,大規模ランダム化比較試験が行われてきた。ここではHRTと乳癌発生のリスクについて解説する。

【解説】

検索の結果,ランダム化比較試験のシステマティック・レビュー1件,大規模ランダム化比較試験3件,メタアナリシス2件,コホート研究(症例数20,000人以上)7件を選択した。
大規模ランダム化比較試験の結果ではCHRTで乳癌発生のリスク増加が認められるとしている。ただし追跡期間,相対リスクの信頼区間が広いことなどから有意差があるとは結論づけていない1),2)。大規模ランダム化比較試験のシステマティック・レビューでも結果は同様である3)。メタアナリシスでもHRTの使用はリスクを増加させるとしている4),5)。コホート研究では,CHRTで乳癌発生のリスクが有意に増加するとする報告が3件あり6),7),8),ほかの4件ではリスク増加は認めるが有意とは結論づけていなかった9),10),11),12)
ERTに関するランダム化比較試験の結果では,乳癌発生のリスク増加は認められず,むしろ減少させる傾向を認めたが13),コホート研究ではERTでリスクを有意に増加させるとする報告が2件7),8),ERTでリスクの増加は認めるが有意ではないとする報告が1件あり12),結論が一致していない。したがってERTに関しては現時点では乳癌発生のリスクを増加させるとは結論づけられない。ERTに関するランダム化比較試験の長期成績が待たれる。
HRTの使用中止から乳癌が発生する(乳癌と診断される)期間についてはランダム化比較試験ではエンドポイントの設定から検証は困難である。コホート研究では,定義はさまざまであるが使用中あるいは最近まで使用していた(current user)女性にのみリスク増加が認められ4),6),7),8),9),10),11),12),使用中止から5年以上経過するとリスク増加は認められなくなるとしている。また容量,期間の増加にしたがってリスクが増加すると考えられるが,使用期間の延長によるリスク増加は使用中止後5年以内の女性にのみ認められ4),6),7),9),中止後5年以上経過すればリスク増加は認められなくなる。
以上より,リスクの増加はわずかであるが(大規模試験のハザード比は1.2〜1.3程度)CHRTは乳癌発生のリスクを増加させると結論できるが,使用薬剤,期間,時期などについてさらに検証が必要である。また,これらの結果は主に白人女性で得られた知見に基づくものであり,日本人女性に直接当てはめるのは困難である。なお,本RQは乳癌の発生リスクに関するものであり,発生した乳癌による死亡リスクが増加するか否か,ほかの腫瘍(結腸・直腸癌など)の発生リスクの減少,その他臨床上得られるHRTによる利得についてはあえて考慮していない。

【検索式・参考にした二次資料】

経口避妊薬に関するRQとの重複がある。

海外文献検索:MEDLINE(Dialog)1966〜2004/04/30
S1  BREAST CANCER×HUMAN×LA=ENGLISH 115,540件
S2  S1×HORMONE REPLACEMENT THERAPY×RISK 4,044件
S3  S2×(RCT+META-ANALYSIS+SYSTEMATIC REVIEW+COHORT) 1,786件
S4  S3×HORMONE REPLACEMENT THERAPY/TI, DE 935件
S5  S1×HORMONE REPLACEMENT THERAPY/TI, DE×RISK/TI, DE 694件
S6  HORMONE REPLACEMENT THERAPY×RISK×(RCT+
META-ANALYSIS+SYSTEMATIC REVIEW)
2,960件
S7  S6×HORMONE REPLACEMENT THERAPY/TI, DE 1,672件
S8  S4+S5+S7 3,044件
S9  S1×CONTRACEPTIVE AGENTS×RISK 1,404件
S10  S9×(RCT+META-ANALYSIS+SYSTEMATIC REVIEW+COHORT) 731件
S11  S10×BREAST/TI, DE 610件
S12  S8+S11 3,514件
S13  S12×PY=>1990 NOT(LETTER+EDITORIAL) 2,602件
  注)TI:タイトル,DE:MeSH索引,LA:Language,PY:Published Year
<内訳(重複を含む)>
  S8×S13 (ホルモン補充療法) 2,345件
  S11×S13 (経口避妊薬) 459件
 
海外文献検索:Cochrane Library (Web) 2004 Issue 2
#1  BREAST CANCER 8,632件
#2  #1×HORMONE REPLACEMENT THERAPY×RISK 411件
#3  #2×HORMONE REPLACEMENT THERAPY/ti, ky 145件
#4  #1×CONTRACEPTIVE AGENTS 286件
#5  #4×BREAST/ti, ky 210件
#6  #3+#5 334件
#7  #6(1990 to current date) 246件
  MEDLINEとの重複除去 148件
  注)ti:タイトル,ky:キーワード
<内訳(重複を含む)>
  #3×#7 (ホルモン補充療法) 78件
  #5×#7 (経口避妊薬) 86件
 
国内文献検索:医中誌Web 1983〜2004/04
#1  乳癌 44,904件
#2  #1×(エストロゲン代償+ホルモン補充) 172件
#3  #1×経口避妊 19件
#4  #2+#3 186件
#5  #4(会議録,症例報告除く) 138件
<内訳(重複を含む)>
  #2×#5 (ホルモン補充療法) 131件
  #3×#5 (経口避妊薬) 16件

海外文献該当2,750件より,タイトルと抄録で関連文献115件を選択した。ホルモン補充療法(2,423件):原論文査読により28件の構造化抄録を作成,本RQの解説に13件引用した。国内文献該当138件(ホルモン補充療法131件)には採択すべき論文はなかった。

【参考文献】

1) Rossouw JE, Anderson GL, Prentice RL, La Croix AZ, Kooperberg C, Stefanick ML, et al. Risks and benefits of estrogen plus progestin in healthy postmenopausal women:principal results From the Women' s Health Initiative randomized controlled trial. JAMA 2002;288(3):321-33.
2) Hulley S, Furberg C, Barrett-Connor E, Cauley J, Grady D, Haskell W, et al. Noncardiovascular disease outcomes during 6.8 years of hormone therapy:Heart and Estrogen/progestin Replacement Study follow-up(HERS II). JAMA 2002;288(1):58-66.
3) Beral V, Banks E, Reeves G. Evidence from randomised trials on the long-term effects of hormone replacement therapy. Lancet 2002;360(9337):942-4.
4) Anonymous. Breast cancer and hormone replacement therapy:collaborative reanalysis of data from 51 epidemiological studies of 52,705 women with breast cancer and 108,411 women without breast cancer. Collaborative Group on Hormonal Factors in Breast Cancer. Lancet 1997;350(9084):1047-59.
5) Nelson HD, Humphrey LL, Nygren P, Teutsch SM, Allan JD. Postmenopausal hormone replacement therapy:scientific review. JAMA 2002;288(7):872-81.
6) Olsson HL, Ingvar C, Bladstrom A. Hormone replacement therapy containing progestins and given continuously increases breast carcinoma risk in Sweden. Cancer 2003;97(6):1387-92.
7) Beral V; Million Women Study Collaborators. Breast cancer and hormone-replacement therapy in the Million Women Study. Lancet 2003;362(9382):419-27.
8) Colditz GA, Hankinson SE, Hunter DJ, Willett WC, Manson JE, Stampfer MJ, et al. The use of estrogens and progestins and the risk of breast cancer in postmenopausal women. N Engl J Med 1995;332(24):1589-93.
9) Olsson H, Bladstrom A, Ingvar C, Moller TR. A population-based cohort study of HRT use and breast cancer in southern Sweden. Br J Cancer 2001;85(5):674-7.
10) Folsom AR, Mink PJ, Sellers TA, Hong CP, Zheng W, Potter JD. Hormonal replacement therapy and morbidity and mortality in a prospective study of postmenopausal women. Am J Public Health 1995;85(8 Pt 1):1128-32.
11) Schairer C, Lubin J, Troisi R, Sturgeon S, Brinton L, Hoover R. Menopausal estrogen and estrogen-progestin replacement therapy and breast cancer risk. JAMA 2000;283(4):485-91.
12) Kerlikowske K, Miglioretti DL, Ballard-Barbash R, Weaver DL, Buist DS, Barlow WE, et al. Prognostic characteristics of breast cancer among postmenopausal hormone users in a screened population. J Clin Oncol 2003;21(23):4314-21.
13) Anderson GL, Limacher M, Assaf AR, Bassford T, Beresford SA, Black H, et al. Effects of conjugated equine estrogen in postmenopausal women with hysterectomy:the Women' s Health Initiative randomized controlled trial. JAMA 2004;291(14):1701-12.


RQ7 閉経後ホルモン補充療法は乳癌の危険因子になるか
アブストラクトテーブル
参考
文献
EV
レベル
目的 対象患者(数・人種) 介入
(曝露・case vs. control)
結果
1 1b HRTによる主要な健康利得およびリスクを検討する。 USA,16,608人,閉経後,健常 ランダム化比較試験
0.625mg/d conjugated equine estrogen(CEE)+2.5mg/d medroxyprogesterone acetate or placebo
2002年に利得がリスクを上回ったため中止。CHD286例(HR:1.29, 95%CI:1.02-1.63),乳癌290例(HR:1.26, 95%CI:1.00-1.59),卒中212例(HR:1.41, 95%CI:1.07-1.85),肺梗塞101例(HR:2.13, 95%CI:1.39-3.25),結腸・直腸癌112例(HR:0.63, 95%CI:0.43-0.92),内膜癌47例(HR:0.83, 95%CI:0.47-1.47),大腿骨骨折106例(HR:0.66, 95%CI:0.45-0.98),その他の死亡133例(HR:0.92, 95%CI:0.74-1.14)。1,000人年に対してCHD:7,卒中:8,肺梗塞:8,乳癌:8の増加があり,結腸直腸癌:8,大腿骨骨折:5の減少があった。
2 1b 長期のHRT使用が心血管系疾患の予後に与える影響を検討する。 USA,2,763人,閉経後,虚血性心疾患患者,平均67歳 ランダム化比較試験
0.625mg/d conjugated equine estrogen(CEE)+2.5mg/d medroxyprogesterone acetate or placebo
相対ハザード比(RH)は血栓症(RH:2.08, 95%CI:1.28-3.40),手術を要する胆管系疾患(RH:1.48, 95%CI:1.12-1.95),腫瘍(RH:1.19, 95%CI:0.95-1.50)で腫瘍の発生増加は有意ではなかった。乳癌も増加していなかった(HR:1.27, 95%CI:0.84-1.94)。
3 1a HRT使用者と非使用者の腫瘍と心血管系疾患の発生を比較する。 USA,UK,20,000人以上,平均追跡期間4.9年 HRT 乳癌,卒中,肺梗塞が有意に増加し,結腸・直腸癌,大腿骨頸部骨折が有意に減少する。内膜癌,心血管系疾患は有意な変化はない。5年間のHRT使用により欧米では乳癌や,卒中・肺梗塞が50〜59歳の使用者1,000人当たり約6人60〜69歳の使用者1,000人当たり12人新たに発生する。また結腸・直腸癌や大腿骨頸部骨折が50〜59歳の使用者1,000人当たり約1.7人,60〜69歳の使用者1,000人当たり5.5人減少する。
4 2a 乳癌のリスクとHRTの関係を再検討する。 21カ国,症例52,705人,コントロール108,411人 HRT,メタアナリシス 使用期間が1〜4年間,過去12カ月以内のHRT使用者では使用1年当たり相対リスクが1.023(95%CI:1.011-1.036)増加し,5年以上の使用者では1.35(95%CI:1.21-1.49)であった。このリスク増加はHRT非使用者で閉経年齢が1年高くなる場合の1.028(95%CI:1.021-1.034)と同等であった。使用中後5年以上経過するとリスク増加は認められない。既知の危険因子との関係では体重,あるいはBMIが低い場合にこのリスク上昇が認められた。
5 2a HRTの利点と欠点を検証する。 不明 HRT,メタアナリシス 乳癌に関しては,最近までエストロゲンによるHRTを使用している女性の乳癌発生リスクは使用期間の延長にしたがって増加する。(最近まで使用している場合RR:1.21-1.41,過去5年以内RR:0.85-1.14,中止後5年以上RR:1.23-1.35)死亡率は増加しない(最近まで使用している場合RR:1.14,過去5年以内RR:0.5-1.0,中止後5年以上RR:0.55-1.45)。
6 2b HRTのタイプによって乳癌発生のリスクは異なるのかを検討。 29,508人,スウェーデン HRT,コホート 自然閉経の女性では長期(48カ月以上)・プロゲスチンとの併用で持続的なHRT使用者(HR:4.60,95%CI:2.39-8.84)は非使用者よりも有意に乳癌発生のリスクが高かった。長期・プロゲスチンとの併用で周期的(sequential)なHRT使用者(HR:2.23,95%CI:0.90-5.56),gestagenのみ(HR:3.79,95%CI:0.94-14.97),estriolのみ(HR:1.89,95%CI:0.81-4.39)と有意ではないが増加する傾向にあった。HRT使用から5年以上経過している場合にはリスクは増加していなかった。
7 2b HRTの方法が乳癌の発生および死亡に及ぼす影響を検討する。 UK,1,084,110人,50〜64歳 HRT,コホート 乳癌発生9,364例(平均観察期間2.6年),乳癌死亡637例(平均観察期間4.1年)が認められた。HRTを使用していない女性に比べて最近までHRTを使用していた場合は乳癌発生(RR:1.66, 95%CI:1.58-1.75),死亡(RR:1.22, 95%CI:1.00-1.48)が増加する傾向にあった。過去にHRTを使用した女性では乳癌発生や乳癌死亡の増加は認められなかった。最近までHRTを使用していた女性では乳癌発生はエストロゲンのみ(RR:1.30, 95%CI:1.21-1.40),エストロゲンとプロゲスチン併用(RR:2.00, 95%CI:1.88-2.12),チボロン(RR:1.45, 95%CI:1.24-1.68)と有意に増加していたが,リスクは他のHRTに比べてエストロゲンとプロゲスチン併用が有意に高かった。特定のエストロゲンとプロゲスチンの併用やその用量ではほとんど差がなかったが,エストロゲンのみの場合は経口(RR:1.32, 95%CI:1.21-1.45),経皮(RR:1.24, 95%CI:1.11-1.39),埋め込み型(RR:1.65, 95%CI:1.26-2.16)ではそれぞれリスクが増加していた。最近までHRTを使用していた女性ではHRTのタイプにかかわらず,使用した総期間が増加するにしたがって乳癌の危険度が増加していた。HRTを10年以上使用している女性1,000人につき,エストロゲンのみの場合5人,エストロゲンとプロゲスチンの併用の場合19人の乳癌発生の増加がある。
8 2b HRTと乳癌リスクの関係を検討する。 USA,121,700人,看護師,30〜55歳 HRT,コホート HRT非使用の女性に比べて過去2年以内にHRTを使用していた女性ではエストロゲン単剤(RR:1.32, 95%CI:1.14-1.54),エストロゲンとプロゲスチンの併用(RR:1.41, 95%CI:1.15-1.74),プロゲスチン単剤(RR:2.24, 95%CI:1.26-3.98)と乳癌発生のリスクが有意に増加していたが各レジメンの間では有意差はなかった。過去2年以内にHRTを使用していた女性では使用期間が5年以下ではリスクの増加は認められず,HRT使用期間が5〜9年(RR:1.46, 95%CI:1.22-1.74)の場合と,10年以上(RR:1.46, 95%CI:1.20-1.76)では乳癌のリスクは同等であった。5年以上HRTを使用した女性のリスクは50歳〜54歳(RR:1.46, 95%CI:0.91-2.33),55歳〜59歳(RR:1.54, 95%CI:1.19-2.00),60歳〜64歳(RR:1.71, 95%CI:1.34-2.18)と年齢が高いほど増加していた。
9 2b 総腫瘍発生および乳癌発生とHRTの関係を検討する。 スウェーデン,29,508人,25〜65歳 HRT,コホート 総腫瘍発生は1,145で(標準化発生率との比(SIR):0.98, 95%CI:0.93-1.04),乳癌発生は434(SIR:1.12, 95%CI:1.02-1.23)であった。HRTを使用したことのある3,663人の総腫瘍発生増加は認められなかったが(SIR:0.98, 95%CI:0.86-1.12),乳癌発生は非使用者(SIR:1.07, 95%CI:0.96-1.19)に比べて有意に増加していた(SIR:1.35, 95%CI:1.09-1.64)。乳癌発生は使用期間の延長により増加し,48〜120カ月の使用で顕著であった(SIR:1.92, 95%CI:1.32-2.70)。乳癌家族歴による追加の増加はなかった。Cox regression modelで解析するとHTR使用期間の延長は非使用者と比較して有意なリスクとなっていた。使用中止後5年以上経過していればリスク増加は認められなかった。経口避妊薬の使用と後のHRTの相互関係は認められなかった。
10 2b HRTと種々の疾患の発生率,死亡率の関係を検討する。 41,070人,55〜69歳,閉経後 HRT,コホート HRTにより乳癌発生の増加が認められたが(RR:1.23, 95%CI:0.99-1.55)有意ではなかった。HRTの使用状況で層別化すると,以前使用していた女性では増加は認めず(RR:0.96, 95%CI:0.81-1.14),最近まで使用していた女性で増加していたが(RR:1.24, 95%CI:0.99-1.56)有意ではなかった。最近まで使用していた女性では使用期間の延長による増加傾向は認めなかった。5年以下(RR:1.45, 95%CI:1.03-2.06),5年以上(RR:1.21, 95%CI:0.92-1.60)。
11 2b エストロゲンとプロゲスチンの併用HRTがエストロゲンのみのHRTより乳癌発生リスクが大きいかを検討する。 USA,46,355人,閉経後 HRT,コホート 2,082例の乳癌発生があった。エストロゲンのみ(RR:1.2, 95%CI:1.0-1.4)でも併用(RR:1.4, 95%CI:1.1-1.8)でも乳癌発生リスクは最近の4年以内の使用者に限られていた。使用期間が1年延長するごとに相対リスクはそれぞれ0.01(95%CI:0.002-0.03)と0.08(95%CI:0.02-0.16)増加していた。最近までHRTを使用していた女性をBMIで層別化するとBMI 24.4のカテゴリーでは使用期間が1年延長するごとに相対リスクがそれぞれ0.03(95%CI:0.01-0.06),0.12(95%CI:0.02-0.25)と有意に増加していた。このカテゴリーでは使用期間が1年延長するごとに小葉癌の発生はエストロゲンのみで0.03(95%CI:0.01-0.07),併用で0.17(95%CI:0.02-0.41),乳管癌で0.03(95%CI:0.001-0.07)と0.17(95%CI:0.02-0.41)と有意に増加していた。BMI 24.4のカテゴリーではこれらの増加は認められなかった。
12 2b HRTを使用した女性の乳癌発生の危険率と腫瘍の性質を検討する。 USA,374,465人 HRT,コホート HRT非使用者に比べエストロゲンとプロゲスチンの併用によるHRT使用者は乳癌のリスクが高く(RR:1.39,95%CI:1.31-1.47),エストロゲンのみによるHRT使用者は危険性の増加は認められなかった(RR:1.05,95%CI:0.99-1.12)。年齢の増加に伴って乳癌の危険性は増加していたがいずれの年代でもエストロゲンとプロゲスチンの併用のほうがエストロゲンのみや非使用者に比べリスクは高かった。HRT非使用者に比べてエストロゲンとプロゲスチンの併用によるHRTを5年以上使用した女性では病期(Stage 0〜I と II 以上),腫瘍径(2cm以下と2cm以上),グレード(1,2と3,4)などはいずれも危険率が増加しており,エストロゲン受容体陽性乳癌も増加していた。
13 1b 閉経後HRTの主要な疾患発生に対する影響を検討する。 10,739人,USA,閉経後(子宮摘出後) ランダム化比較試験,0.625mg/d conjugated equine estrogen(CEE) or placebo 平均追跡期間6.8年での主要疾患のリスクは虚血性心疾患376例(HR:0.91, 95%CI:0.75-1.12),乳癌218例(HR:0.77, 95%CI:0.59-1.01),脳卒中276例(HR:1.39, 95%CI:1.10-1.77),肺梗塞85例(HR:1.34, 95%CI:0.87-2.06),結腸・直腸癌119例(HR:1.08, 95%CI:0.75-1.55),大腿骨骨折102例(HR:0.61, 95%CI:0.41-0.91)で要約すると心血管系疾患(HR:1.12, 95%CI:1.01-1.24),腫瘍(HR:0.93, 0.81-1.07),骨折(HR:0.7, 95%CI:0.63-0.79),総死亡(HR:1.04, 95%CI:0.88-1.22),global index(HR:1.01, 95%CI:0.91-1.12)であった。

 

 
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