(旧版)科学的根拠に基づく 乳癌診療ガイドライン 5 疫学・予防 2005年版

 
用語解説

 
用語 解説
アウトカム
Outcome
何らかの介入(治療やケア)が行われた後の結果や成果。
アウトカム指標
Outcome index
アウトカムを評価,測定するための指標。
異型過形成
Atypical hyperplasia
組織学的に乳腺内の乳管内あるいは小葉内に上皮細胞が増生している状態を過形成と呼ぶが,その形態が非浸潤癌に非常に似ているが非浸潤癌の組織学的基準のすべては満たさないもの。この場合も異型乳管過形成(atypical ductal hyperplasia)と異型小葉過形成(atypical lobular hyperplasia)の2種類がある。
遺伝カウンセリング
Genetic counseling
患者・家族のニーズに対応する遺伝学的情報およびすべての関連情報を提供し,患者・家族がそのニーズ・価値・予想などを理解したうえで意志決定ができるように援助する医療行為。
後ろ向き研究
Retrospective study
あるイベントの発生した個人からなる集団を集積し,分析する研究デザイン。
オーバービュー
Overview
ある分野における文献の要約。必ずしもシステマティック・レビューと同意義ではなく,系統的に文献を収集したものではない総括を含む場合がある。
オッズ比
Odds ratio
治療の有効性の指標の一つ。実験群のオッズと,コントロール群のオッズの比で,イベントが稀な場合,相対リスクと近似する。ここでいうオッズとは,イベントの発生したものと発生していないものの比と定義される。
過剰相対リスク
Excessive relative risk(ERR)
相対リスクから1を引いたもの。ERR1Svは1Sv当たりの過剰相対リスク。
癌特異的心配
Cancer specific worry
「心配worry」とは外界の人物,事物,あるいはその将来などの対象に向けて危険を予測する心の働きであり,自身の「不安」を外界の対象に投影しているもの。不安anxietyを認知的不安worryと感情的不安emotionalityに分類する考え方がある。
ケースコントロール研究
Case control study
あるイベントを経験した集団と経験しなかった集団を比較し,両群の間で特定の曝露の有無を探索する研究。
原子爆弾
Atomic bomb
広島,長崎において投下された爆弾で,そのエネルギーは爆風,熱風,放射線からなる。個人の被曝放射線量は長崎型原爆を用いたネバダ州での実験結果により爆心からの距離,遮蔽物の透過率などを考慮して推定するT65Dにより行われてきたが,最近では放射線が人体各臓器に到達する過程を物理的素過程に基づいて計算されたDS86により推定されている。
原爆被爆者
Atomic bomb survivor
原子爆弾の被爆者。一般に,原子爆弾による「ひばく」は被爆,放射線による「ひばく」は被曝が使用される。
コホート研究
Cohort study
ある固定された集団(コホート)を追跡し,その集団内でのイベント発生を検討する研究,あるいは,ある曝露を受けた集団と受けていない集団の2つの集団で,あるイベントの発生を追跡する研究。コホートを時間的に前向きに追跡する前向きコホートと後ろ向きコホート研究があるが,信頼性は前者のほうが高い。
しきい値
Threshold
放射線の影響の有無を分ける線量。確定的影響においては,それ以下の線量の放射線では影響がないが,それ以上になると影響が出る,確率的影響においてはこのようなしきい値は存在せず,受ける線量が多くなるほど影響の出る確率が高まる。癌と遺伝的影響以外は確定的影響と考えられている。
システマティック・レビュー
Systematic review
ある特定のトピックスについて,医学文献を同定,吟味,要約した論文。メタアナリシスも含まれる。
実存的集団療法
Existential group psychotherapy
こころのメカニズムを把握し,しかるべき方向に動機付けや操作をするのではなく,むしろ相談者の世界を知り,自分もその世界の中に存在しなければならないと考える心理療法。
寿命調査
Life span study
原爆被爆者の寿命や死因を非被爆対照群のそれらと比較する疫学調査。昭和25年の国勢調査資料に基づいて広島市および長崎市在住の原爆被爆者(近距離,遠距離)および非被爆者よりなる約12万人のコホートが対象。
信頼区間
Confidence interval(CI)
真の値を含むことが期待される試験結果の範囲で,通常,95%信頼区間が使用される。p値と異なり,起こりそうな効果の範囲が示される。
相対リスク
Relative risk(RR)
絶対リスクの比で,ある群の,別の群に対するイベントの起こりやすさ(あるいは起こりにくさ)を示す。イベントが稀な場合はオッズ比に近似する。
第1度近親者
First-degree relative
遺伝子を1/2ずつ共有している親,兄弟姉妹,子供のこと。祖父母,孫,おじ,おば,甥,姪は第2度近親であり,1/4の遺伝子を共有している。いとこは第3度近親で,1/8の遺伝子を共有している。
代替補完療法サポート
Complementary and alternative
medicine(CAM) support
生活習慣の変化を目的とし,身体自覚,肯定的イメージ,瞑想,スピリチュアリティ,食生活,生活様式,などについて学習する支援。
多重性
Multiplicity
多数回の検定により望ましくないp値が得られ,1回の検定より結論を誤りやすくなるとする過誤の概念。多群を対比較で検定する場合,多項目で検定を繰り返す場合,経時的データを各時点について順次比較し検定する場合,あるデータにt検定,U検定,χ二乗検定などの複数の検定を適用したり,検定を繰り返す場合,中間解析の場合などで問題になる。
認知-行動ストレス管理介入
Cognitive behavioral stress
management(CBSM)
認知,行動,対処(コーピング),ストレス解消の教授法が織り込まれた介入。
認知行動療法
Cognitive-behavioral therapy
認知と行動に焦点をあて,それらを修正したり,それらの幅を広げたりすることによって,その人がよりよい状態で暮らしていけるようにする心理学的療法。
バイアス
Bias
試験の結果に影響を及ぼす偏り。選択バイアス(ランダム化で回避),観察バイアス(盲検化で回避),解析バイアス(intention to treat analysisで回避),出版バイアスがある。
ハザード比
Hazard ratio
広い意味では相対リスクと等しく,経時的な生存率を示す場合に使用されることが多い。
非浸潤癌
In situ carcinoma/
non-invasive carcinoma
組織学的に基底膜を破っていない状態で増殖している癌のこと。この状態は癌の最も早期の状態であり,この時期には転移を起こさない。乳癌では非浸潤性乳管癌と非浸潤性小葉癌の2種類がある。
プール解析
Pooled analysis
既に行われた複数の研究からデータを集積し,事実上大きな1つの研究にする統計手法。データ数を大きくできる反面,各研究で調査方法が大きく異なる場合には異質なデータを集めた解析となる場合がある。
放射線
Radiation
物質と反応して電離を起こすもの。この電離を起こす放射線にはアルファ線やベータ線,ガンマ線,X線,中性子線などがある。
メタアナリシス
Meta-analysis
定量的方法を用いて結果を要約するシステマティック・レビュー。
ランダム化比較試験
Randomized controlled trial
介入の相対的な効果を評価するために,参加者をランダムに2群以上に割り付ける臨床試験。
リスク
Risk
ある患者,患者群でイベントが発生する確率のこと。一般的には,危害または損失の起こるおそれがあること,あるいは,危害または損失の起きる程度(確率)を示す。
リスク受容
Risk acceptance
リスクを受容する意思決定のこと。リスクアセスメントによって,リスクが特定されていても,各種要因によりリスクマネジメントできないリスクに対して,それを受容する行為を指す。
リスク認知
Risk perception
「主観的な確率推定」と「望ましくない出来事のひどさの程度の認知」によって感じているリスクの大きさのこと。望ましくない出来事の不確実性に関する主観的な見積もりのこと。
BRCA1, 2 遺伝性乳癌家系を利用した連鎖解析により同定された遺伝性乳癌の原因遺伝子,Breast cancer 1, early onset(17q),Breast cancer 2, early onset(13q)。癌抑制遺伝子で,構造的,機能的相同性を持ち,コードする蛋白はDNA安定性に関与している。
Gy 吸収線量の単位で,単位物質(kg)あたりに吸収されたエネルギーを表す。1Gy=100Rad。
Population based study 地域住民をベースにした研究。
Sv 放射線の生体への影響を表す等価線量の単位。吸収線量に放射線荷重係数をかけて得られる。1Sv=100rem。

 

 
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