(旧版)科学的根拠に基づく 乳癌診療ガイドライン 5 疫学・予防 2005年版

 
 
日本乳癌学会診療ガイドライン(疫学・予防)


3. 本ガイドラインの作成手順

診療ガイドライン作成小委員会(疫学・予防)においては,エビデンス評価の作業は,システマティック・レビューの手法に則って行った。すなわち,網羅的・系統的な文献の収集を行った。二次情報の有効活用は行ったものの最小限にとどめ,極力原著にさかのぼり精読することによって評価を行い,RQごとに使用したデータベースや検索式をガイドライン本文に明示したことが,本小委員会の作業の特徴である。
次に主な手順を箇条書きにして示す。


1)RQの収集・整理
疫学・予防小委員会メンバー全員によりガイドラインで取り上げるべきRQを収集し,優先順位付けを行った。


2)文献の検索,データベース
RQに含まれる用語および関連用語をキーワードとして行った。主に用いたデータベースは,英文では,MEDLINE,Cochrane Library,PsycINFO,和文では,医学中央雑誌(医中誌)である。


3)文献の絞込みと構造化抄録(アブストラクトフォーム)の作成
小委員会メンバー一人あたり2〜3のRQを割り当て,文献の絞込みを行い,原著にさかのぼり精読し,文献の吟味を行った。Evidence levelとともに質の評価に必要な項目をまとめて一覧にしたアブストラクトフォーム(表1)をRQごとに作成した。

表1 アブストラクトフォームの一例
文献タイトル Body fat distribution and obesity in pre-and postmenopausal breast cancer.
Evidence level 2b
著者名 Sonnenschein E, Toniolo P, Terry MB, Bruning PF, Kato I, Koenig KL, et al.
雑誌名・頁・出版年 Int J Epidemiol 1999;28(6):1026-31.
目的 閉経前女性,閉経女性の乳癌のリスクと人体測定学的因子の関連性を検討すること。
研究施設,組織 ニューヨーク大学
研究期間 1985〜1994年
対象患者(数・人種) 症例群109人(閉経前女性)と150人(閉経女性),対照群8,157人
介入(曝露・case vs. control) 前向きコホート研究。人体測定学的因子(体重,身長,胴囲臀囲比WHRなど)と乳癌のリスクとの関連性を検討した。
主要評価項目 閉経前後で分けて人体測定学的因子から相対リスクをみた。
結果 閉経前女性ではWHRが増えると乳癌リスクが増える。閉経女性ではWHRは関連性がなかった。
結論 閉経女性では過度の体重は乳癌のリスクを高める。他方,閉経前女性では過度の体重はWHRが小さい(脂肪蓄積が少ない)女性では予防的かもしれない。閉経前女性ではWHRが大きい(脂肪蓄積が多い)ことは乳癌リスクの指標になる。
作成者 今井博久
コメント 閉経前女性ではWHRが危険因子になり,閉経女性では危険因子にならない。


4)ガイドライン(案)の作成
アブストラクトフォームから特に重要な10件前後の文献を参考として,各メンバーが担当のRQごとにガイドライン(案)を作成した。文献の選択基準は文中に明示的に示した。


5)ダブルチェックとガイドライン完成
小委員会内の他のメンバー(1〜2名)が,論評者としてレビューし,その意見に従って改良を行った。さらに,用語の統一を図り,解説集を作成し,前書きを加えて最終版とした。


6)補足-完成した情報の配置
各RQの完成した推奨グレードあるいはエビデンスグレード(「5. 推奨グレード,エビデンスグレードの評価基準」参照)を,この前書きの最後にまとめて記載した。読者の便宜を考慮してRQに採用した文献のアブストラクトフォームは,アブストラクトテーブル(表2)としてまとめ,RQごとの本文文末に掲載した。

表2 アブストラクトテーブルの一例
EV
レベル
目的 対象患者(数・人種) 介入
(曝露・case vs. control)
結果
2b 閉経前女性,閉経女性の乳癌のリスクと人体測定学的因子の関連性を検討すること。 症例群109人(閉経前女性)と150人(閉経女性),対照群8,157人 前向きコホート研究。人体測定学的因子(体重,身長,胴囲臀囲比WHRなど)と乳癌のリスクとの関連性を検討した。 閉経前女性ではWHRが増えると乳癌リスクが増える。閉経女性ではWHRは関連性がなかった。

 

 
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