(旧版)科学的根拠に基づく糖尿病診療ガイドライン 改訂第2版
付録:メタボリックシンドローム
アブストラクトテーブル
論文コード | 対象 | 方法 | 結果 | |||||||||||||||
1)Edwards KL et al (Kaiser Permanente Women Twins Study), 1994 横断研究 レベル4 | 米国カリフォルニア州オークランドに住む遺伝的に関係のない281人の女性 | 因子分析 解析した危険因子:体重,腹囲,空腹時IRI,FPG,75g OGTT負荷後2h IRI,負荷後2h PG,収縮期血圧,TG,HDL-C,LDL粒子径 | 3つの因子に分類. 因子1(体重↑,腹囲↑,F-IRI↑,FPG↑):バリアンス22.9% 因子2(2h PG↑,FPG↑,F-IRI↑,SBP↑):バリアンス21.7% 因子3(LDL粒子径↓,TG↑,HDL-C↓):バリアンス21.2% | |||||||||||||||
2)Lempiäinen P et al (Kuopio Ischaemic Heart Disease Risk Factor Study), 1999 コホート研究 レベル3 | DMを合併していない65〜74歳のフィンランド人.男性396人(平均68.9歳),女性673人(平均69.0歳).追跡期間7年 | 因子分析によりCHD危険因子の重積について検討.変数として用いた危険因子:MIの既往,喫煙,飲酒,脳卒中の既往,アポE4,年齢,BMI,ウエスト・ヒップ比,収縮期血圧,TC,HDL-C,TG,FPG,空腹時IRI,アルブミン尿,LVH.因子分析により導き出された因子について,CHDイベント発症との関連を多変量Cox回帰分析で検討 | 男性: 因子1(BMI↑,WHR↑,TG↑,FPG↑,F-IRI↑)[HR(95%CI):1.33(1.08〜1.65)] 因子2(飲酒↑,HDL-C↑,TG↓)[HR(95%CI):0.78(0.63〜0.96)] 因子3(年齢↑,SBP↑,UAER↑,LVH↑)[HR(95%CI):1.52(1.26〜1.83)] 因子4(TC↑,TG↑)[HR(95%CI):1.42(1.15〜1.77)] 女性: 因子1(BMI↑,WHR↑,HDL-C,TG↑,FPG↑,F-IRI↑)[HR(95%CI):1.06(0.82〜1.36)] 因子2(脳卒中の既往↑,HDL-C↓,TG↑)[HR(95%CI):1.34(1.06〜1.69)] 因子3(年齢↑,SBP↑,UAER↑,LVH↑)[HR(95%CI):1.44(1.15〜1.82)] 因子4(喫煙↓,飲酒↓,TC↑)[HR(95%CI):1.13(0.84〜1.53) インスリン抵抗性症候群は,高齢男性のCHD危険因子であるが,高齢女性のCHD危険因子ではなかった | |||||||||||||||
3)Pyölälä M et al (Helsinki Policeman Study), 2000 コホート研究 レベル3 | CVDとDMを合併しない970人のフィンランド人男性.年齢は34〜64歳(平均48歳).追跡期間22年 | ベースライン時のCVD危険因子の集積を因子分析で解析.この危険因子の集積がCHDと脳卒中を予測できるかどうか多変量Cox回帰分析で検討.変数として用いた危険因子:BMI,肩甲骨皮膚厚,75g OGTT AUC IRI,75g OGTT AUC glucose,最大酸素摂取量,平均血圧,TG,TC,身体活動度,喫煙 | イベント発症は,CHD 164人,脳卒中70人.10の危険因子を3つの因子に分類.因子1は,インスリン抵抗性因子(BMI↑,肩甲骨皮膚厚↑,AUC IRI↑,AUC glucose↑,最大酸素摂取量↓,平均血圧↑,TG↑).因子2は脂質因子(TC↑,TG↑),因子3は生活習慣因子(身体活動度↑,喫煙↓).22年間の追跡期間中におけるCHDと脳卒中のHR(95%CI)は,(1)インスリンに抵抗性因子で1.28(1.10〜1.50)と1.64(1.29〜2.08),(2)脂質因子で1.47(1.26〜1.71)と1.18(0.95〜1.49),(3)生活習慣因子で0.87(0.74〜1.01)と0.85(0.66〜1.09)であった.インスリン抵抗性因子を変数とした因子分析では,1つの因子に集約され,22年間の追跡期間中のCHDと脳卒中のリスクは,1.48(1.23〜1.77)と2.02(1.54〜2.66)であった. | |||||||||||||||
4)Lakka HM et al (Kuopio Ischaemic Heart Disease Risk Factor Study), 2002 コホート研究 レベル3 | ベースライン時(1984〜1989)にCVDおよび癌,DMを合併していない1,209人のフィンランド人男性.ベースラインの年齢が42〜60歳.1998年まで追跡(中央値11.4年) | 診断基準:NCEPATP IIIとWHO(おのおの腹部肥満の基準を2種類用意).MetSの有無によるCHD死,CVD死,総死亡 | MetSの頻度は基準により8.8〜14.3%の範囲に分布.従来のCVD危険因子で補正したMetS合併によるCHD死の相対危険度:NCEP;2.9〜42.0,WHO;2.6〜3.0.WHO基準のMetS合併によるCVD死と総死亡の相対危険度は,2.6〜3.0,1.9〜2.1.NCEP基準によるCVD死と総死亡の相対危険度の上昇は,WHO基準ほど確固としたものではなかった.代謝または心血管疾患のリスクとなる13の因子(BMI,WHR,F-IRI,FPG,TG,HDL-C,SBP,喫煙,飲酒,LDL-C,虚血性心疾患の家族歴,フィブリノーゲン,白血球数)による因子分析では,MetS因子(BMI,WHR,F-IRI,FPG,TG,HDL-C,SBP)が抽出され,全体の分散の18%が説明可能であった.MetS因子の上位4分の1位では,CHD死,CVD死,総死亡のHR(95%CI)は,おのおの3.6(1.7〜7.9),3.2(1.7〜5.8),2.3(1.5〜3.4)であった | |||||||||||||||
5)Wang JJ et al, 2004 コホート研究 レベル3 | 北京在住の非糖尿病者934人と糖尿病者305人.5年間追跡 | ベースライン時のデータについて非糖尿病者と糖尿病者の因子分析を行った.解析に用いた変数は,BMI,WHR,SBP,DBP,UAER,TC,TG,F-IRI,2h IRI,FPG,2h PG.非糖尿病者559人のうち129人が糖尿病を発症 | 非糖尿病者: 因子1;肥満・インスリン抵抗性(F-IRI,BMI,WHR) 因子2;血圧(SBP,DBP) 因子3;グルコース・2h IRI(2h PG,2h IRI,FPG) 因子4;脂質(TC,TG)因子1と因子3が2型糖尿病の発症と関連していた 糖尿病者:SBPとDBPが第一の因子であった.UAERは,FPGと2hPGと同じ因子に集積した | |||||||||||||||
6)Austin MA et al (Japanese-American Family Study), 2004 横断研究 レベル4 | 日系米国人68家系432人 | MetSの構成要素への遺伝の関与を因子分析および遺伝率分析(heritability analysis)で解析.MetSの構成要素;LDL粒子径,CRP,TG,HDL-C,収縮期血圧,拡張期血圧,腹囲,F-IRI,FPG. | 因子分析により3つの独立した因子が抽出 因子1(脂質因子);LDL粒子径,TG,HDL-C(h2=0.52,p<0.001) 因子2;体脂肪,F-IRI,FPG,CRP(h2=0.27,p=0.016) 因子3;収縮期血圧,拡張期血圧(h2=0.25,p=0.026) 3つの因子でバリアンスの65%が説明可能.遺伝率分析では3つの因子すべてにおいて有意な遺伝的影響が認められた | |||||||||||||||
7)Lin HF et al (NOMAS), 2005 横断研究 レベル4 | ヒスパニックの89家系803人 | 診断基準;NCEP ATP III.MetSの共通病態と遺伝について明らかにするため因子分析で検討.変数としてはNCEP ATP IIIに含まれる6つのMetSの構成要素を使用 | MetSの遺伝率は24%(p=0.009). 因子分析により2つの独立した因子が抽出 因子1;TG,HDL-C,FPG,腹囲(h2=0.24,p<0.001) 因子2;SBP,DBP(h2=0.20,p<0.001) | |||||||||||||||
8)Pladevall M et al, 2006 横断研究 レベル4 | スペイン人(男性207人,女性203人),モーリシャス人(男性1,411人,女性1,650人),過去に検証的因子分析の報告のある米国人男性集団847人 | 検証的因子分析でMetSの構成要素が1つの共通因子によるのかどうかについて検討.MetSの中心となる構成要素(腹部肥満=腹囲,インスリン抵抗性=HOMA-R,血圧=平均血圧,脂質値=TG/HDL-C比)を変数として使用 | 4因子モデルも1因子モデルも高い適合度を示したが,最も単純な1因子モデルが最適な適合度を示した | |||||||||||||||
9)Ishizaka N et al, 2005 横断研究 レベル4 | 19〜88歳の日本人健診受診者8,144人.平均年齢56.6歳,男性5.473人 | 診断基準:NCEP ATP III(腹囲の代わりにBMI>25を代用).MetS頻度を検討 | 男性の19%,女性の7%がMetS | |||||||||||||||
10)Shiwaku K et al, 2005 横断研究 レベル4 | 30〜60歳の会社員1,384人.日本人男性368人,女性351人.韓国人男性232人,女性176人.モンゴル人男性102人,女性155人 | 診断基準;NCEP-ATP III(腹囲の代わりにBMIで代用).BMIのカットオフ値を30とした場合と25の場合のアジア人のMetSの頻度について検討 | BMI 30:日本人男性7.1%,女性6.2%.韓国人男性7.8%,女性5.1%.モンゴル人男性15.7%,女性9.6%.BMI 25:日本人男性13.3%,女性11.5%.韓国人男性14.2%,女性11.9%.モンゴル人男性18.6%,女性13.5% | |||||||||||||||
11)Sone H et al (JDCS), 2005 コホート研究 レベル3 | 心血管疾患の既往のない日本人2型糖尿病患者1,424人.8年間追跡 | 診断基準:NCEP ATP III(腹囲は男性≧85cm,女性≧90cmを使用),WHO.MetS合併による心血管イベントの発症をCox回帰分析で検討 | MetSの頻度は,WHO基準で男性51%,女性53%,NCEP基準で男性45%,女性38%.MetS合併によるCHD発症のHR(95%CI)は,WHO基準で男性1.3(0.7〜2.4),女性2.8(1.0〜7.9),NCEP基準で男性1.9(1.0〜3.6),女性1.7(0.7〜4.0).MetS合併による脳卒中発症のHRは,WHO基準で男性2.0(0.9〜4.1),女性3.7(1.4〜9.9),NCEP基準で男性1.4(0.7〜2.8),女性1.3(0.6〜2.8).MetS合併によるCVD発症のHRは,WHO基準で男性1.6(1.0〜2.6),女性3.2(1.6〜6.5),NCEP基準で男性1.8(1.1〜3.8),女性1.4(0.8〜2.5).MetSの構成要素の合併数のカットオフ値を増やしてもCVDリスクは増加せず,男性ではむしろHRは低下 | |||||||||||||||
12)Takeuchi H et al(端野・壮瞥町研究), 2005 コホート研究 レベル3 | 高血圧や糖尿病,高脂血症治療を受けていない,北海道の端野および壮瞥町に在住の男性808人.平均年齢60.3歳 | 診断基準;NCEP ATP III(腹囲>85cm).MetS合併の有無による心疾患(狭心症,心筋梗塞,心不全,心疾患死)発症についてCox回帰分析.6年間追跡 | MetSの合併は25.3%.MetSの11.7%,MetS非合併の6.7%に心疾患が発症(HR 2.23,95%CI 1.14〜4.34) | |||||||||||||||
13)Sattar N et al (WOSCOPS study), 2003 コホート研究 レベル3 | プラバスタチンによるCHDの一次予防試験WOSCOPS studyに登録したスコットランド人の男性高コレステロール血症6,447人.2型DMの発症については,DM患者を除外した5,974人が対象.平均年齢55歳.平均4.9年間追跡 | 診断基準:NCEP ATP III(腹囲の代わりにBMI>28.8を代用).MetSの合併とCHDおよび2型DMの発症について検討 | MetS合併者は,非合併者に比べてCHDと2型DM発症のリスクが有意に高値であった(HRはおのおの1.76と3.50).年齢,収縮期血圧,TC/HDL―C比,喫煙,プラバスタチン治療を加えた多変量解析においても,MetSの合併は,CHDと2型DM発症の独立した危険因子であった.MetSの構成要素の合併数が多いほど,CHDと2型DMの発症リスクは増加した.MetSの構成要素を4つもしくは5つ合併することによるHRは,CHDで3.65,2型DMで24.4であった.CRPの上昇を加えることにより,MetS合併者,非合併者ともに,CHDおよび2型DMのリスクは上昇した | |||||||||||||||
14)Stern MP et al, 2004 コホート研究 レベル3 | San Antonio Heart Study(SAHS):ベースライン時に糖尿病を合併していない1,709人を7.5年間追跡 Mexico City Diabetes Study(MCDS):ベースライン時に糖尿病を合併していない1,353人を6.5年間追跡 | 診断基準;NCEP-ATP III.MetSの2型DMおよび心血管疾患発症予測能について検討 | MetSの2型DM発症に関する感度はSAHSで66.2%,MCDSで62.4%,偽陽性率はSAHSで27.8%,MCDSで38.7%.MetSのCVD発症に関する感度はSAHS 67.3%,偽陽性率はSAHS 34.2% | |||||||||||||||
15)Malik S et al (NHANES II), 2004 コホート研究 レベル3 | 30〜75歳(平均49.7歳)の米国人6,255人(54%が女性).平均追跡期間13.3年 | 診断基準:NCEP ATP IIIの基準を一部改変.MetSのCHD死,CVD死,総死亡に対する影響をCox回帰分析で検討 | 26.0%がMetSを合併.MetSまたはDM,CVDの既往のない対象者の補正HRを1.0とした場合,CHD死のHR(95%CI)は,MetS合併で2.02(1.42〜2.89),CVD既往者で3.14(2.49〜3.96).CVDのHRは,MetSで1.82(1.40〜2.37),CVD既往者で3.14(2.49〜3.96).総死亡のHRは,MetSで1.40(1.19〜1.66),CVD既往者で1.87(1.60〜2.17).糖尿病を合併していないMetS者だけを対象としても,CHD死とCVD死の発症は上昇していた;CHD死1.65(1.10〜2.47),CVD死1.56(1.15〜2.12),総死亡1.17(0.96〜1.42) | |||||||||||||||
16)Hunt KJ et al (San Antonio Heart Study), 2004 コホート研究 レベル3 | 25〜64歳の2,815人.人種は白人とヒスパニック | 診断基準;NCEP-ATP IIIとWHO.CVD発症におけるNCEP-ATP IIIとWHO基準の有用性を検討.12.7年間追跡 | MetSの合併は,両方509人,NCEPのみ197人,WHOのみ199人.全体で229人が死亡(117人がCVD死).ベースライン時CVDおよびDMを合併していなかった一次予防群では132人が死亡(50人がCVD死).一次予防群では,NCEP-MetSとCVD死にのみ有意な関連が認められた(補正ハザード比2.01;95%CI 1.13〜3.57).全体では,総死亡のハザード比はNCEP-MetSで1.47(1.13〜1.92),WHO-MetSで1.27(0.97〜1.66).CVD死に関しては,性別によりリスクは異なっていた:NCEP-MetS女性4.65(2.35〜9.21),男性1.82(1.14〜2.91),WHO-MetS女性2.83(1.55〜5.17),男性1.15(0.72〜1.86) | |||||||||||||||
17)Hu G et al (DECODE study), 2004 コホート研究 レベル3 | ヨーロッパの11のコホートに登録している糖尿病を発症していない30〜89歳までの男性6,156人と女性5,356人 | 診断基準;WHO基準を一部改変(高インスリン血症と以下の2つ以上を合併;肥満,高血圧,脂質代謝異常,糖代謝異常).総死亡およびCVD死をCox回帰分析で評価.8.8年間(中央値)追跡 | MetSの年齢調整頻度は男性で15.7%,女性で14.2%.追跡期間中に1,119人死亡し,うち432人はCVD死.年齢,TC値,喫煙で補正した総死亡およびCVD死のハザード比はおのおの男性で1.44(95%CI1.17〜1.84),2.26(1.61〜3.17),女性で1.38(1.02〜1.87),2.78(1.57〜4.94) | |||||||||||||||
18)Heng D et al, 2006 横断研究 レベル4 | DMとCHDの既往のない3,954人のシンガポール人(男性1,905人,女性2,049人).人種は,中国系(男性59.7%,女性60.9%),マレー系(男性21.3%,女性20.1%),インド系(男性19.1%,女性19.1%).平均年齢は,男性38.6歳,女性38.9歳 | 診断基準;NCEP ATPIII.腹囲をオリジナルの男性>102cm,女性>88cmとした場合と,アジア人に適応するため男性>90cm,女性>80cmとした場合で検討.MetS合併によるCHDリスクをCox回帰分析で検討 | MetSの頻度は,オリジナルの基準で男性14.1%,女性1.3%,修正基準で男性19.2%,女性16.4%であった.オリジナルの基準によるCHDのHR(95%CI)は,3.09(1.96〜4.88),修正基準では2.13(0.99〜4.58)であった. | |||||||||||||||
19)McNeill AM et al (ARIC study), 2005 コホート研究 レベル3 | 糖尿病および心血管疾患の既往のない白人および黒人男女12,089人.男性5,208人(黒人1,084人),女性6,881人(黒人1,764人).平均11年追跡 | 診断基準:NCEP ATP III.CHDと脳卒中の発症をCox回帰分析で検討 | MetSの頻度は約23%.追跡期間中にCHD879人,脳卒中216人が発症.年齢,人種,LDL-C,喫煙で補正したMetS合併によるCVD発症のHR(95%CI)は,CHD;女性2.05(1.59〜2.64),男性1.46(1.23〜1.74),虚血性脳卒中;女性1.96(1.28〜3.00),男性1.42(0.96〜2.11).MetSの個々の構成要素とCHDリスクは,血圧上昇と低HDL-C血症において最も強い関連が認められた.空腹時血糖上昇とCHDリスクの上昇には有意な関連は認められなかった.MetS構成要素の合併数が増えるにつれてCHD発症HRも増加するが,MetSの合併によるCHD発症のHRは,個々のMetS構成要素のHRを超えない | |||||||||||||||
20)Wilson PW et al (Framingham Offspring Study), 2005 コホート研究 レベル3 | 22〜81歳のベースライン時にCVDのない3,323人(男性1,549人) | 診断基準;NCEP2005改訂基準.MetSとCVDおよびCHD,2型DM新規発症との関連について検討.8年間追跡 | ベースライン時2型DMまたはCVDのない集団のMetSの有病率は男性26.8%,女性16.6%.CVD 174,CHD 107,2型DM 178発症.
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21)Levantesi G et al (GISSIPrevenzione Trial), 2005 コホート研究 レベル3 | GISSI-Prevenzione Trialに登録した心筋梗塞既往患者11,323人 | 診断基準;NCEP ATP IIIを一部改変(腹囲の代わりにBMI≧26を代用).DMおよびDMを合併していないMetSの合併が糖尿病発症,死亡,主要心血管イベント(CVE),心不全による入院(CHF)に与える影響についてCox回帰分析で検討 | 試験開始時のDMとMetSの合併はおのおの21%と29%.MetS患者はDMの発症が有意に増加(93%).コントロール群と比べてDM群とMetS群では死亡(DM,+68%,p<0.0001;MetS+29%,p=0.002)およびCVE(DM,+47%,p<0.0001;MetS+23%,p=0.005)のリスクが有意に増加していた.CHFによる入院はDM群のみで有意に増加していた(DM+89%,p<0.0003;MetS+24%,p=0.241).中等度(-6%〜-10%)および大幅な(>-10%)体重減少の認められた患者ではDMの発症リスクがおのおの18%と41%有意に低下していた.体重増加は有意にDM発症リスクが増加していた.DMやMetSによるDM発症,死亡率,CVEのリスクの上昇は,男性よりも女性で増加する傾向にあった | |||||||||||||||
22)He Y et al, 2006 横断研究 レベル4 | 北京在住の中国人60〜95歳の2,334人(男性943人,女性1,391人) | 診断基準;NCEP(腹囲;男性<102cm,女性>88cm,空腹時血糖は≧110mg/dLの場合と≧100mg/dLの場合の両者で検討),IDF(腹囲は男性≧90cm,女性≧80cm).MetS合併による心血管イベントの発症リスクをロジスティック回帰分析で検討 | MetS合併による動脈硬化性疾患のオッズ比(95%CI)は,以下の通り.
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23)Lorenzo C et al (San Antonio Heart Study), 2003 コホート研究 レベル3 | ベースライン時にDMを発症していない1,734人.人種はメキシコ系米国人と非ヒスパニック系白人 | 診断基準;NCEP-ATP IIIとWHO.2型DM発症におけるNCEP-ATP IIIとWHO基準の有用性を検討.7〜8年間追跡 | IGTとNCEP基準はWHO基準よりも感度が高かった(おのおの51.9%,52.8%,42.8%).IGTはNCEP基準およびWHO基準よりも陽性適中率が高かった(おのおの43.0%,30.8%,30.4%).IGTとNCEP基準の組み合わせでは,感度70.8%,陽性適中率29.7%であった.NCEP基準を用いた2型DM発症のリスクは,IGTおよび空腹時インスリン値を含む他の危険因子に独立していた(オッズ比3.30,95%CI 2.27〜4.80).NCEP基準の空腹時血糖を98mg/dL以上とした場合,感度62.0%,陽性適中率30.9%とより向上した | |||||||||||||||
24)Hanley AJ et al (Insulin Resistance Atherosclerosis Study), 2005 コホート研究 レベル3 | 40〜69歳のベースライン時に糖尿病を発症していない822人 | 診断基準;WHO,NCEP-ATP III,IDF.IGTおよびWHO MetS,NCEP MetS,IDF-MetSの糖尿病予測能について検討.平均5.2年間追跡 | 148人がDMを発症.IGTおよび3つのMetS診断基準,インスリン抵抗性(IR)マーカーとも有意にDMを予測:オッズ比(95%CI)は,IGT 5.42(3.60〜8.17),NCEP-MetS 4.14(2.79〜6.16),WHOMetS 3.68(2.48〜5.45),IDF-MetS 3.40(2.28〜5.06).オリジナルのNCEP-ATP IIIの基準の肥満やFPGのカットオフ値を変更したり,IFGの代わりにIGTを用たり,NCEP-ATP III基準にIRマーカーやCRPを加えてもDMの予測能に有意な変化が認められなかった | |||||||||||||||
25)Mori T et al, 2005 コホート研究 レベル3 | 狭心症または陳旧性心筋梗塞に対して経皮的冠動脈インターベンションを施行し,6ヵ月後の負荷201Tl SPECTで虚血が認められなかった症例のうち2年以上経過した456人(平均年齢63歳).DM(-)MetS(-)196人,DM(-)MetS(+)89人,DM(+)MetS(-)61人,DM(+)MetS(+)110人 | 診断基準;NCEP-ATP III基準(腹囲はBMI<25で代用).MetSとDMが心血管イベントに及ぼす影響について検討.観察期間2.0〜8.7年(平均3.7年) | DM(-)MetS(+)群のイベントフリー生存曲線はDM(-)MetS(-)群に比べ有意に低く(p<0.05),DM(+)MetS(-)群とは差がなかった.DM(+)MetS(+)群のイベントフリー生存曲線はDM(-)MetS(+)群に比べ著明に低かった(p<0.005).Cox比例ハザードモデルからDMとMetSが有意な独立したイベントの危険要因であった | |||||||||||||||
26)Schwartz GG et al (MIRACL trial), 2005 コホート研究 レベル3 | MIRACL trialに登録した急性冠症候群患者3,038人 | 診断基準;NCEP-ATP III(腹囲をBMI>30で,糖代謝異常をDMの既往で代用).急性冠症候群患者の心血管イベント発症とMetSの関連について検討.16週間追跡 | 38%(1,161人)がMetSを合併し,MetS合併者のうち19%が一次エンドポイント(死亡,非致死的心筋梗塞,心停止,または不安定狭心症)を発症.MetS(-)では,その14%が一次エンドポイントを発症.単変量モデルでは,DMおよび低HDL-C血症がイベントと有意に関連していた.年齢と性別,治療を含む多変量モデルでは,MetS合併の一次エンドポイント発症のハザード比は1.49(95%CI1.24〜1.79,p<0.0001)であった.アトルバスタチン80mg/日投与によるリスク低下はMetS合併の有無で同程度であった | |||||||||||||||
27)Nakanishi N et al, 2004 コホート研究 レベル3 | 35〜59歳の日本人男性会社員6,182人.5,588人は非糖尿病 | WHO基準のMetSの構成要素の集積とCVDおよび2型糖尿病発症との関連について検討.MetS構成要素;空腹時高血糖,BMI≧25,高血圧,脂質代謝異常,蛋白尿,白血球数増多 | 年齢,糖尿病の家族歴,飲酒,喫煙で補正したCVD発症の相対危険度は,MetS構成要素の合併が0個を1とした場合,合併数が1個,2個,3個,≧4個の場合,おのおの3.18,3.48,12.55,14.15.2型糖尿病の発症は同様に1.92,4.36,6.44,15.08 | |||||||||||||||
28)Ford ES et al (NHANES III), 2003 横断研究 レベル4 | NHANES III(1988〜1994年)に登録した20歳以上の米国人8,608人 | MetSの有病率をNCEP ATP IIIとWHOのMetS診断基準で比較 | 年齢で補正したMetSの有病率は,ATP III基準で23.9%,WHO基準で25.1%.全ての参加者のうち,86.2%が両方の基準でMetS合併もしくは非合併と診断された.しかし,いくつかのサブグループではWHO基準とATP III基準でMetSの有病率が異なっていた(たとえば,アフリカ系米国人男性ではWHO基準で24.9%であったが,ATP III基準では16.5%) | |||||||||||||||
29)Meigs JB et al, 2003 横断研究 レベル4 | Framingham Offspring Study(FOS)に参加している白人3,224人と,San Antonio Heart Study(SAHS)に参加している非ヒスパニック系白人1,081人とメキシコ系米国人1,656人.約半数が女性で,年齢は30〜79歳(平均54歳) | 診断基準:NCEP ATP III,WHO.両診断基準におけるMetSの頻度とFramingham Risk Scoreによる10年間の予測CHDリスクをロジスティック回帰分析で検討 | 年齢および性別で補正したMetSの頻度は,FOSでATP IIIとWHOの両基準ともに24%,SAHSの非ヒスパニック系白人で23%と21%,メキシコ系米国人で31%と30%であった.ATP III基準でもWHO基準でも空腹時インスリン値とHOMA-IRは,MetS群の方が高値であった.MetSの基準が異なるとMetSと診断される集団が必ずしも同一とならない.FOSの白人では,ATP III基準でMetSと診断された者のうち,WHO基準を満たした者は66.5%であった.一方,ATP III基準でMetS(-)と診断された者のうち11.0%はWHO基準でMetSと診断された | |||||||||||||||
30)Sone H et al (JDCS), 2006 コホート研究 レベル3 | 心血管疾患の既往のない日本人2型糖尿病患者1,424人.8年間追跡 | 診断基準:IDF基準.MetS合併による心血管イベントの発症をCox回帰分析で検討 | IDF基準によるMetSの頻度は男性32.0%,女性9.2%.CHDのHR(95%CI)は男性1.72(0.94〜3.15),女性1.15(0.27〜4.90),脳卒中のHRは男性1.14(0.56〜2.34),女性1.13(0.31〜4.11),CHDかつ/または脳卒中のHRは男性1.47(0.91〜2.35),女性1.14(0.44〜3.01) | |||||||||||||||
31)Orchard TJ et al (DPP), 2005 RCT(サブ解析) レベル1 | DPPに登録したIGT患者3,234人 | プラセボ群とメトホルミン群(1,700mg/日),生活習慣改善群(7%の体重減少と週150分の運動)の3群に無作為に割付.MetS(ATP III基準)への進展とMetSの改善について検討.平均3.2年追跡 | 53%がベースラインでMetSであった.MetSの頻度は,プラセボ群と比べて生活習慣改善群では41%(p<0.001),メトホルミン群では17%(p=0.03)減少した.3年間の累積発症率は,プラセボ群とメトホルミン群,生活習慣改善群で,おのおの51%,45%,34%であった.介入の効果に人種差は認められなかった | |||||||||||||||
32)DPP, 2005 RCT レベル1 | 3,234人のIGT患者(男性32.3%).白人54.7%,アフリカ系米国人,ヒスパニック19.9%,ネイティブアメリカン5.3%,アジア人4.4%.平均年齢50.6歳 | プラセボ群とメトホルミン群(1,700mg/日),生活習慣改善群(7%の体重減少と週150分の運動)の3群に無作為に割付.3年の追跡期間中,1年毎に血圧,脂質値,心電図,CVDイベントを評価 | 試験開始時の高血圧合併は30%.生活習慣改善群において高血圧の頻度は有意に低下したが,プラセボ群とメトホルミン群では増加した.TG値は3群とも低下したが,生活習慣改善群でより低下した.TC値およびLDL-C値は3群間で有意差なし.生活習慣群でHDL-Cが有意に増加し,小粒子LDLが有意に減少.生活習慣改善群における薬物療法の頻度は,プラセボ群とメトホルミン群に比べて高血圧で27〜28%,高脂血症で25%少なかった.64人の参加者に89のCVDイベントが発症したが,3群で有意な差は認められなかった.生活習慣改善群では,CVDイベントによる入院と血行再建術の頻度が高い傾向が認められた | |||||||||||||||
33)Watkins LL et al, 2003 RCT レベル2 | メタボリックシンドロームを合併する米国人男女53人 | 運動療法群(Ex)と運動療法+体重減少プログラム群(EX+WL),コントロール群(C)の3群にランダム化して割り付け.試験開始前と開始後6ヵ月での耐糖能と血清脂質値,血圧の変化について検討 | 75g OGTTのIRI 2h値はEX+WL群(p<0.001)およびEX群(p= 0.003)で有意に低下した.IRI2h値の低下は心肺機能よりも体重減少の程度と関連が認められた.血圧は,EX+WL群で有意に低下[96±4→87±5mmHg;(mean±SD)p=0.01]したが,EX群では有意な低下が認められなかった(93±4→89±5mmHg;p=0.08).血清脂質値は,EX+WL群およびEX群ともにC群と比べて有意な改善は認めなかった | |||||||||||||||
34)Frank LL et al, 2005 RCT レベル2 | 身体活動度の低い閉経後女性173人.BMI≧25または,BMI≧24かつ体脂肪≧33%),年齢50〜75歳 | 運動療法群(45分以上の中等度の有酸素運動週5日)vs.ストレッチだけのコントロール群.開始前と12ヵ月後の体組成をDXA法で,腹腔脂肪面積をCTで評価.IRIと血糖,TG,レプチンを試験開始前と3ヵ月目,12ヵ月目に採血.インスリン抵抗性はHOMA-Rで評価 | 試験開始前と12ヵ月後のIRI値は,運動療法群で4%減少,コントロール群で12%増加(p=0.0002).HOMA-Rは運動療法群で2%減少し,コントロール群で14%増加(p=0.0005).運動がIRIとTGに与える効果は,総体脂肪量の変化と関連 | |||||||||||||||
35)Esposito K et al, 2004 RCT レベル2 | ATP III基準のメタボリックシンドロームを合併するイタリア人男女180人(男性99人,女性81人).2年間追跡 | 地中海食と通常食(炭水化物50〜60%,蛋白質15〜20%,脂質<30%)が血管内皮機能および炎症マーカーに与える影響を検討.地中海食群では炭水化物および蛋白質,脂質の比率はコントロール食群と同様であるが,コレステロール摂取<300mg/日,1日に少なくとも250〜300gの果物,125〜150gの野菜,25〜50gのクルミ,400gの全粒粉を摂取するよう指導.各群とも90人 | 2年後,コントロール食群に比べて地中海食群では,一価および多価不飽和脂肪酸,食物繊維の摂取が多く,ω6/ω3脂肪酸比が低かった.両群の身体活動度は60%増加したが,両群間に有意差は認められなかった.平均体重減少はコントロール食群(-1.2kg)に比べて地中海食群(-4.0kg)で有意に大きかった(p<0.001).高感度CRP,IL-6,IL-7,IL-18は地中海食群で有意に低下.内皮機能は,コントロール食群で変化が認められなかったのに対し,地中海食群では改善が認められた.2年後,メタボリックシンドロームの基準を満たしていたのは,地中海食群で40人,コントロール食群で78人(p<0.001) | |||||||||||||||
36)Azadbakht L et al, 2005 RCT レベル2 | イラン人のMetS患者116人(男性34人).平均41.2歳.平均BMI 29.7 | 診断基準;NCEP ATP III.コントロール食群,減量食群,DASH食群の3群にランダムに割り付け.6ヵ月間追跡.MetSの構成要素の変化について検討.コントロール食;イラン人が通常摂取している食事.炭水化物50〜60%,蛋白質15〜20%,総脂質(ほとんどは飽和脂肪酸)<30%,果物2〜3皿,野菜3皿,乳製品1人前.減量食;1食500kcal以下(体格による).栄養組成はコントロール食群と同じ.DASH食;1食500kcal以下(体格による).果物や野菜,低脂肪乳製品,全粒粉を多く摂取し,総脂質や飽和脂肪酸,コレステロール摂取を減らし,Na摂取を2,400mgに制限 | コントロール食群に比べてDASH食群では,HDL-C上昇(男性7mg/dL,女性10mg/dL),TG低下(-18,-14mg/dL),収縮期(-12,-11mmHg)および拡張期血圧(-5,-6mmHg)の低下,FPG減少(-15,-8mg/dL),体重減少(-16kg,-15kg)が認められた(すべてp<0.001).減量食群では,コントロール食群に比べて,TG低下(-13,-10mg/dL),収縮期血圧低下(-6,-6mmHg),体重減少(-13,-12kg)が認められた(すべてp<0.05) | |||||||||||||||
37)Ito H et al, 2003 横断研究 レベル4 | 20〜79歳の日本人健診受診者2,728人(男性768人) | 高血圧や脂質代謝異常,糖尿病を発見するための肥満に関する身体計測値のカットオフ値を求める | BMI,腹囲,ウエスト・ヒップ比のカットオフ値は,男性で23.5kg/m2,84cm,0.9,女性で22.5kg/m2,72cm,0.8 | |||||||||||||||
38)Shiwaku K et al, 2005 横断研究 レベル4 | 30〜60歳の日本人752人(男性388人,女性364人)とモンゴル人257人(男性102人,女性155人) | 代謝疾患パラメーターと身体計測値との関連について検討 | ROC解析から,身体計測値との相関は,日本人ではHDL-CおよびTGで最も強く,モンゴル人ではHOMA-IRが最も強かった.両人種ともにBMIと腹囲は,代謝疾患パラメーターの重複と比較的強い相関が認められた.日本人における代謝疾患の重複を予測する至適カットオフ値は,男性でBMI 24,腹囲82cm,女性でBMI 23,腹囲73cmであり,モンゴル人では男性でBMI 27,腹囲92cm,女性でBMI 27,腹囲84cmであった |