(旧版)科学的根拠に基づく糖尿病診療ガイドライン 改訂第2版

 
21.2型糖尿病の発症予防


解説

1.スクリーニングの対象者
2型糖尿病のハイリスク者としては表1に示すものが挙げられる.この中で特に重要なのが糖負荷試験で境界型(日本糖尿病学会1999年診断基準:空腹時血糖値110mg/dL以上で126mg/dL未満,あるいは負荷後2時間値140mg/dL以上で200mg/dL未満,静脈血漿値)を示すものである.2型糖尿病は境界型を経て発症すると考えられており,境界型を示すものの中には糖尿病予備群が含まれていることになる.境界型は十分に経過を観察していくとともに,糖尿病発症予防のために積極的に介入治療を考えていく必要がある.
IGT(境界型のうち,糖負荷試験2時間血糖値が140〜199mg/dLのもの)からの糖尿病発症率は正常型からの発症より数倍多い.山形県舟形町の住民調査1)では5年間の観察で正常型からの発症率が3.5/1,000人・年であるのに対し,IGTからは21.3/1,000人・年と報告されている.健診センターの成績ではさらに高い発症率が報告されている.たとえば大阪成人病センターの人間ドック2)ではIGTからの発症率は69.5/1,000人・年(観察期間3.6年)であった.広島原爆障害対策協議会健康管理センターの成績3)では,IGTを2時間の血糖値から2群に分けて発症率をみているが,正常型からの2/1,000人・年に対し,2時間値140〜169mg/dL(IGT-1)からは34/1,000人・年,170〜199mg/dLのIGT(IGT-2)からは87/1,000人・年(観察期間2.1〜3年)と報告されている(注:これらの疫学研究では1回の糖負荷試験の結果に基づく発症率であり,正確には糖尿病型へと移行した割合をみていることになる).
境界型の中でも,(1)血糖値の高いもの,(2)糖負荷後初期(負荷後30分)インスリン分泌が低下しているもの4),5),(3)糖尿病の家族歴のあるもの,は糖尿病への移行のリスクが特に高いので要注意である.先に述べた広島原爆障害対策協議会健康管理センターの成績3)をみても,糖負荷試験で2時間値の高いIGTでは低いIGTに比し移行率が高い.虎の門病院健康医学センターの健診受診者についての8年間の追跡成績4)によると,IGTからの累積糖尿病発症率は,追跡開始時の糖負荷試験で初期インスリン分泌の低下があるもの(負荷後30分のΔIRI/ΔBG<0.5)では低下のないものの約5倍となっている.


表1 スクリーニングの対象となる人―2型糖尿病のハイリスク者
糖尿病の家族歴
妊娠糖尿病や巨大児出産の既往
境界型
過体重・肥満
脂質代謝異常(低HDLコレステロール, 高中性脂肪血症)
高血圧

 
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