(旧版)科学的根拠に基づく糖尿病診療ガイドライン 改訂第2版
20.糖尿病の療養指導・患者教育
アブストラクトテーブル
論文コード | 対象 | 方法 | 結果 |
1)Gagliardino JJ et al, 2001 前後比較研究 レベル4 | 65歳以下の非インスリン療法2型446人 | ある計画された教育プログラムによる代謝調整の改善[1年間] | FPG,HbA1c,体重,血圧,総コレステロール,医療コストなどに有意の改善をみた |
2)Woodcock AJ et al, 1999 RCT レベル2 | 診断されて1年後の患者141人,対照108人 | 患者中心の研修を受けた看護師29人と非専門看護師20人による療養指導を患者が評価 | 患者中心の信念,態度,行動のトレーニングを受けた看護師の療養指導のほうが優れている |
3)DCCT Research Group, 1993 RCT レベル1 | 1型患者1441人.強化療法群と従来法群に分割 | 強化療法群730人,従来法群711人[10年間(平均6.5年)追跡] | 観察期間中のHbA1cは強化療法群9%,従来法群7%.強化療法群における合併症の発症率,進展率ともに有意に低かった |
4)SCCT Group, 1997 RCT レベル2 | 2型糖尿病患者177人 | 血糖自己測定(SMBG) | SMBG施行群では対照群と比べQOLスコアが有意に改善した |
5)de Vaciana M et al, 1995 RCT レベル2 | 妊娠糖尿病例66人 | SMBG食前実施群(33人)と食後実施群(33人)の無作為比較試験 | 食後実施群で母のHbA1cと児の予後が有意に改善 |
6)Housten A et al, 2005 RCT レベル3 | 2型症例.介入群44例,対照群60例 | 糖尿病への理解を深めるために教育看護師による介入1年間 | 介入群における血糖値とトリグリセリドの改善が有意に認められた,とする間接評価である |
7)Lasater LM et al, 2001 コホート研究 レベル3 | 2型ヒスパニック例,英語を話す106人とスペイン語のみ77人の比較 | ヒスパニック系患者の英語能力と教育効果は相関するか | HbA1c,入院回数など有意差なし.血糖コントロールは英語能力と関係ない.母国語でわからせることこそ重要 |
8)Rachmani R et al, 2002 RCT レベル2 | 参加型教育70人と従来型71人 | 情報,治療の責任を共有する参加型プログラム(治療・転帰情報の共有)群の効果を4年にわたり検証 | 網膜症65%,虚血性心疾患34%,神経障害100%の抑制効果あり |
9)Funnel MM et al, 1998 コホート研究 レベル4 | 65歳以上,53人がチームケアによるコースに参加 | 糖尿病全般,気分,ストレス,問題解決など12項目の話題について18ヵ月のコースの結果 | 出席率は72~68%.インスリン療法開始後間もない例,医療機関が近い例の出席率はよい |
10)Eriksson J et al, 1999 RCT レベル1 | 2型糖尿病の1等親で,肥満(BMI>25),40~65歳,GTTで糖代謝異常例.生活指導介入256人vs.非介入250人 | 糖尿病発症ハイリスク群の生活習慣を改善すると,2型糖尿病の発症を抑えられるか[3年間の観察] | 介入群11%,非介入群23%の移行.目標を決め,具体的生活指導実施例の糖尿病への移行は少ない |
11)Rickheim PL et al, 2002 RCT レベル2 | 2型例87人をグループ指導,83人を個人指導に | 個人指導か集団指導か,BMI,HbA1c,知識など6ヵ月間の経過 | 両群とも知識,行動,体重,HbA1cの改善に差はなかった. グループ指導はコスト面でも有用 |
12)Raji A et al, 2002 RCT レベル2 | HbA1c>8.5%の患者50例が集中教育群,56例が受身的教育群へ | 集中群で医師を含む教育チームによる3.5日のプログラム.受身群は3ヵ月に1回メールによる情報受信.12ヵ月の追跡調査 | 両群ともHbA1cが2%低下したが,群間差はなかった.ボストンではこんなものらしい |
13)Gouldwaard AN et al, 2004 RCT レベル3 | インスリン療法へ移行段階の2型糖尿病54例.専門看護師と通常のケア.6ヵ月間調査 | 経口血糖降下薬が最大用量のとき,HbA1c 6週後と18ヵ月後の成績を検討 | 6週後専門看護師ケア群が通常ケア群より優位に改善したが,1年後は教育の中止で群間差なし |
14)New JP et al, 2004 RCT レベル3 | 高脂質血症,高血圧症を有する糖尿病患者でリコールされた44例 | 専門看護師または一般看護師が二次予防に介入し1年後の成績 | 1年後のOdd-ratioで比較.専門看護師の起用で高血圧,高脂血症ともに一般看護師より予防効果あり |
15)Trento M et al, 2001 RCT レベル2 | 3ヵ月毎のチームアプローチ.112人を分割 | 生活指導チームの訪問と補講による知識,治療成績の追跡2年間 | 知識の増加,QOLの改善,HDL-Cの増加に有意差あり.HbA1cは有意差をもって安定していた |
16)Dargis V et al, 1999 RCT レベル2 | 介入56人,非介入145人 | 医師,看護師,足治療士のチーム介入あり・なしの効果[3年間] | 介入群のほうが潰瘍再発率が低い |
17)Sadur CN et al, 1999 RCT レベル2 | 16~75歳97人,対照88人 | 看護師,栄養士,薬剤師,心理療法士のチームによる集中教育の成績調査[6ヵ月] | HbA1cの低下(集中介入群で-1.3%,非介入群で-0.22%).栄養士との面会率,SMBG実施率など集中教育群で有意に良好 |
18)李廷秀ほか,2003 コホート研究 レベル4 | 糖尿病患者352人 | 治療中断例(25人)と治療継続例の生活と意識の差に関するアンケート調査 | 中断例では自己判断によるコンプライアンス不良,生活環境の低下,治療効果に対する疑問を有する例が多い |
19)Davies M et al, 2001 RCT レベル2 | 介入148人,非介入152人 | 糖尿病専門看護師(DSN)介入の効果を1年間観察.DSNはバイアス回避のため途中で交代している | 専門性のあるスタッフの介入は知識の向上,満足度,入院日数,通常生活から離れる期間など有意に優れている |
20)Lustman PJ et al, 1998 RCT レベル2 | うつ病合併糖尿病51人に行動修正介入(最終20:22) | うつ病例に対し一般的糖尿病教育を実施し,CBT(cognitive beheviour therapy)による介入10週間の有無別効果を調査 | 寛解率は85%:27%,寛解期間も長い.4週間でのHbA1cは大差なかったが,その後の経過観察では,9.5%:10.9% |
21)Grey M et al, 1999 RCT レベル1 | 12.5~20歳の1型77人うち介入群42人 | CST(coping skill training)+強化インスリン療法による自己効力の獲得を6ヵ月間観察 | CST群における自己効力増加,血糖コントロールは良好(p<0.02).QOL向上(p<0.01).思春期問題の解決に有用 |
22)Grey N et al, 2002 コホート研究 レベル4 | 18歳以上227人 | ADA勧告基準に独自のプログラムを加えて経過観察[3~6ヵ月] | HbA1c,受診率ともにADA勧告に病院独自のプログラムを加えるとさらに改善可能 |
23)Noël PH et al, 1998 RCT レベル1 | 2型596人.自己選択のコース305:291,食事療法選択383:213 | 標準型コースか患者が選択したコースがよいか[6ヵ月間の観察] | 選択群,標準型群ともに出席率のよい患者の知識評価点は有意に高い.患者の選択は必ずしもあたっていない.選択時の説明/理解度条件がある |
24)Cagliero E et al, 1999 RCT レベル2 | 1型およびインスリン治療中の2型(201人) | HbA1c値を即時患者に知らせるか否かによる血糖コントロールの差 | HbA1c値を即時に告知した群で血糖コントロールはより良好であった |
25)Howorka K et al, 2000 短期RCTおよびコホート研究 レベル2 | 32人のRCT短期.68人の長期コホート調査 | 日常管理の自己効力をつけるプログラムをRCTで4週間.コホートの追跡調査3年間68人 | 外来指導に計画された方法を導入し,患者の認識が向上した.長期例では自己効力が増し,医師のコントロールから開放感あり |
26)Paterson B, 2001 コホート研究 レベル4 | 22人の自己管理に熟練した1型患者 | 自己決定のプロセスを記録し,1年間の変化を観察 | 真のエンパワーメントには,患者の意思決定のためにさらに細かい援助が必要.医家が禁じたことを否定的なものとみなしたり,医家は自己の経験則からエンパワーを評価する傾向がある |
27)富永真琴ほか,2003 比較研究 レベル4 | 患者数30人,健常対象10人 | SMBG用(簡易測定器)6機種の比較検討 | 各機種ごとの特徴を知ったうえで使用し,療養指導を実施すべきである |
28)Coster S et al, 2000 メタアナリシス レベル2+ | 8件のRCT | 血糖自己測定,尿糖自己測定,自己測定なしを比較 | 血糖または尿糖自己測定による4件の文献のメタアナリシスによる有意差は認められなかった |
29)Kinsley BT et al, 1999 RCT レベル2- | 1型糖尿病の強化療法例(47人) | SMBGによる低血糖認識訓練を行った25人を対照22人と比較 | 訓練は低血糖に対するカウンターレギュラトリーホルモンの反応を改善した |
30)Cox DJ et al, 2004 RCT レベル4 | 重症低血糖症のある1型60例を従来法のSMBG群と低血糖予知トレーニング演習群に分け18ヵ月追跡 | 米国で開発されたHAATT(低血糖予知・治療演習プログラム)を適応.予知および適切な処置行動により評価 | 低血糖予知演習群では短期的にも長期的にも血糖コントロールの悪化をみることなく低血糖の予知・処置に有意に成功している |
31)Edmonds M et al, 1998 RCT レベル2- | 35人のインスリンで治療中の糖尿病患者 | SMBGデータの電話相談 | 電話相談は受け入れられ,これによる大規模なスタディが計画されている |
32)Piette JD et al, 2000 RCT レベル2 | 介入・非介入各124人 | 月1.4回の体重,血糖コントロール,足のケアなどに関する自動的な電話介入が効を奏するか[1年間の観察] | SMBG,服薬,足の観察などコンプライアンスは向上した(p<0.01).HbA1c正常化率はp<0.05 |
33)Kwon HS et al, 2004 RCT レベル2 | 患者数110人.インターネット連絡群と対照群に二分 | 12週の追跡.SMBG成績をインターネットで登録し,指示を受ける群のHbA1cの改善がp<0.001で有意であった | インターネットのよる一定の指示を出す有用性が明らかとなった |
34)Tate DF et al, 2003 RCT レベル2 | 92例の過体重例を二分.インターネット連絡群とeカウンセリングを追加した群を1年追跡 | 両群とも基礎講習のあと,カウンセリング群は体重など毎週の送信に対しカウンセラーがフィードバックした | カウンセリングを加えると体重,ウエスト徑ともに有意差をもって改善成績が良好であった |
35)Kumar VS et al, 2004 RCT レベル2 | 8~18歳の患者40人.コンピュータが個々に作成するプログラムをゲームで教えた群と技術面の指導のみの群の4週間の比較 | ゲーム群では血糖値の改善は有意であったが,HbA1cではp=0.06にとどまった. | 個々に仕立てられたゲームによる動機付け効果は認められ,血糖の測定回数が増え,著しい高血糖が減っている |
36)Boukhors Y et al, 2003 RCT レベル4 | 1型糖尿病10例によるクロスオーバー調査.コンピューターによる用量決定の効果を8週間追跡 | 個々のSMBG記録からアルゴリズムを作成しあらかじめ入力した.治療成績はコンピュータの利用と非利用の間に差はなかった | 差がなかったことに意味がある.過去のSMBG記録を生かす上で,教育の一環となり,意思決定の援助となる |
37)Lawson ML et al, 2005 RCT レベル4 | 13~17歳のコントロール不良1型46人.single blindによる介入6ヵ月の経過観察 | SMBGのコンプライアンス向上と血糖コントロールのためのインスリン要領調節を主目的とし,生活面の指導を実施した | HbA1cは1%下がったが,成人にみられるような改善はなかった |
38)山田信博ほか,2003 RCT レベル2 | 2,547人の2型糖尿病患者を電話介入・非介入に割付け | 看護師による電話介入の有無別に結果観察した | 介入開始5年後にHbA1cが介入群で有意に低くなった(p<0.001).参加した59施設のほとんどが日本糖尿病学会の教育認定施設であったことから,主治医,療養指導士ともに学会が勧告するガイドラインに沿っていたことから群間差はわずかであった |
39)Phillips LS et al, 2005 RCT レベル2 | 一般内科医が診療中の2型糖尿病4,138例を(1)コンピュータが個々に創出するプリントによる介入,(2)2週に1回の面接,(3)両方とも,(4)従来どおりの対照に分け2年間観察 | (1)専門医がADA基準をフィードバックするプログラムを作成,(2)2週に1回の面接,(3)両方とも,(4)従来どおりの対照に分け15ヵ月観察 | 面接+コンピュータ介入群がHbA1cの改善が良好であった.ADA基準をフィードバックできるのは面接である.プライマリケア現場で一般医と専門医との連携は非常に重要 |
40)Harris SB et al, 2005 RCT(群層別) レベル3 | 61医師を群・層別に分け660の診療録が治療ガイドに沿った成績となっているか否か,医師への介入を患者のデータで12ヵ月後の検証 | 糖尿病ガイド配布(テレカンファレンスへの参加)による介入後HbA1cに変化があったのは患者にガイドの内容を配布してからであった.医師の介入法を患者の成績で間接評価した | テレカンファレンスへの参加は良く受け入れられた.介入群では治療計画への理解が向上し,フローチャートが利用され,患者の体重調整,眼底検査など受診状況がよくなった |
41)Glasgow RE et al, 2004 RCT レベル2 | 52診療所をクラスターとして介入群と対照群に分け,886人の2型糖尿病患者 | 52診療所を2群に分け,2型糖尿病886人についてコンピュータによる医師の患者中心介入群と対照群を比較した | 勧告した検査項目の遵守,患者中心の態度,足の診察,通院率,栄養指導率などいずれも介入群が有意に良好であった |
42)Rith-Najarian S et al, 1998 前後比較研究 レベル4 | 639人の足のケア指針別にみた足病変の経過観察 | 足ケアへのSDM(staged diabetes management)導入後のコホート研究.内足病変例は:標準的ケア期42人,公衆衛生期33人,SDM期20人 | 詳細な管理基準を示す標準的ケアの実践ガイドラインの導入により切断例が1/4に減少 |
43)Wdowik MJ et al, 2000 RCT レベル2 | 1型学生21人,別の大学の1型11人を対照に | コントロールonキャンパスと題してHBMの教育と社会学習を指導.21人を3群に他に対照11人 | 知識,HbA1cともに,介入群のほうが好成績であった |
44)Thompson DM et al, 1999 RCT レベル2 | インスリン療法例で血糖コントロール不良の56人を2分割[6ヵ月観察] | 従来法によるインスリン用量調節と糖尿病専門看護師による週3回の電話連絡による用量調節6ヵ月間 | 用量調節には決められたガイドラインを使用.6ヵ月後のHbA1cは従来法群8.9%,介入群7.8%(p<0.01) |