(旧版)科学的根拠に基づく糖尿病診療ガイドライン 改訂第2版
17.高齢者の糖尿病
ステートメント
1.高齢者の糖尿病


加齢とともに糖尿病の頻度は増加するが5),6),高血糖は高齢者においても糖尿病細小血管症7),8),9)および大血管症10),11),12)の危険因子であることを認識し,血糖の正常化に努めるべきである.
2.高齢者糖尿病の診断

高齢者においても糖尿病の診断は若・壮年者と同様の手順,基準値を用いて行う.しかし,高齢者では空腹時血糖値は糖尿病診断基準値を満たさなくても,糖負荷後2時間血糖値高値より糖尿病と診断される例の頻度が高くなるため13),診断は糖負荷試験によることが望ましい.
3.高齢者糖尿病と食事・運動療法

高齢者においても食事療法19),20)および運動療法21),22),23),24),25)は糖尿病の有用な治療法である.また,運動の継続は大血管症,認知症の発症予防,日常生活動作(activities of daily living:ADL)の維持・向上に有用である.
4.高齢者糖尿病と薬物療法
高齢者においても薬物療法は,糖尿病の有用な治療法である26),27),28),29).
レベル1
しかし,薬物療法に伴う重症低血糖が高齢者31),32),特に75歳以上の高齢者(後期高齢者),多剤(糖尿病治療薬以外)併用例,退院直後の例33),腎不全例,食事摂取量低下例32)などに発症しやすいこと,高齢者では低血糖の自覚症が軽微であり34),しかも典型的な低血糖症状のみならず非典型的な症状を訴える例が多いこと35)に注意する必要がある.

80歳以上の患者に対するメトホルミン投与は原則として避けるべきとされている37).
レベル4

しかし,薬物療法に伴う重症低血糖が高齢者31),32),特に75歳以上の高齢者(後期高齢者),多剤(糖尿病治療薬以外)併用例,退院直後の例33),腎不全例,食事摂取量低下例32)などに発症しやすいこと,高齢者では低血糖の自覚症が軽微であり34),しかも典型的な低血糖症状のみならず非典型的な症状を訴える例が多いこと35)に注意する必要がある.


80歳以上の患者に対するメトホルミン投与は原則として避けるべきとされている37).

5.高齢者糖尿病の特徴と治療の視点
高齢者糖尿病では,複数の血管合併症,特に大血管症38)に加えてADL,認知機能など自立した生活,自己管理を困難とする生活機能障害例の頻度が高くなる38),39),40).
高齢者糖尿病の治療においては,血糖のみならず血圧,血清脂質,体重などの適正化をはかり糖尿病細小血管症および大血管症の発症・進展を予防することが重要である.

高齢者糖尿病の治療においてはQOLの維持・向上が重要である.したがって,治療がQOLを低下させることがないように細心の注意を払い,糖尿病の状態のみならず,個々の患者の身体的,精神・心理的,社会的背景および本人の希望を十分に考慮した,それぞれの患者に最適と考えられる治療を実施すべきである.

高齢者糖尿病の治療においては,血糖のみならず血圧,血清脂質,体重などの適正化をはかり糖尿病細小血管症および大血管症の発症・進展を予防することが重要である.


高齢者糖尿病の治療においてはQOLの維持・向上が重要である.したがって,治療がQOLを低下させることがないように細心の注意を払い,糖尿病の状態のみならず,個々の患者の身体的,精神・心理的,社会的背景および本人の希望を十分に考慮した,それぞれの患者に最適と考えられる治療を実施すべきである.

