(旧版)科学的根拠に基づく糖尿病診療ガイドライン 改訂第2版
16.小児思春期糖尿病
解説
3.2型糖尿病
(1)診断
糖尿病診断のためのブドウ糖負荷を行う際は,実際の体重×1.75g(ただし最大75g)のブドウ糖を負荷する.高血糖の判定区分ならびに糖尿病の診断は成人と同じである.
(2)治療目標
2型糖尿病の治療の目標は,食生活ならびに運動習慣を改善することによって,インスリン抵抗性ならびに代謝を改善し,血糖コントロールを正常化させることにあるf).2型糖尿病においても,思春期では摂食障害などにより血糖コントロールが困難になることがある.
小児2型糖尿病は,通常自覚症状が乏しいために治療に対する動機づけが難しい.したがって通院が不定期になりやすく,その結果として1型糖尿病よりも短い期間で合併症が進行しがちである24).診断時から糖尿病教育を行い,さらには個々の患者の背景も考慮し,治療の放置や中断を防ぐ.
(3)食事・運動療法
食事療法は,正常な成長と発育を促し,かつ,インスリン抵抗性を改善することを目標とする.基本的な1日摂取エネルギー量は1型糖尿病と同じであり,肥満を伴う症例に関しては表2に示した性別・年齢のエネルギー必要量の90~95%程度にエネルギー制限することもあるが,長期的に維持可能な指導を行うことが肝要であるk).適切な食品を選び,食事量のコントロールができるように指導し,この習慣を一生続けられるように支援する.同じように,身体活動度に関する生活習慣も改善する.患児の日常生活を把握して,楽しみながら運動量を増やせるように,実行可能な運動メニューを作成する.基本的には毎日30分以上体を動かし,1日摂取エネルギーの最低10%以上を運動で消費できるようにする.進行した合併症がない限り運動を制限しない.運動療法に定型はなく,活動的な生活を行うことによって日々の活動エネルギーを増やすようにする.食事および運動療法は,本人のみでなく家族全体の生活習慣の見直しによってうまくいく場合が多い.
表2 エネルギーの食事摂取基準:推定エネルギー量(kcal/日)
(4)薬物療法
わが国では,食事療法ならびに運動療法のみで血糖コントロールが得られるのは60~70%で,残りの症例において薬物療法が行われているb).米国では症例の大半は最終的に薬物療法が必要になるというg).小児2型糖尿病の薬物療法に関して,確立されたevidenceはないc).近年,肥満を伴う2型糖尿病にメトホルミンが有効かつ安全であると報告されたが25),この報告での1日最大使用量は2,000mgである.わが国で,認可されている用量は1日750mgであるが,1日750mgもしくは500mgの使用により血糖改善効果が認められる症例があるl).チアゾリジン薬に関しては,安全性が確立されていない.小児糖尿病に対する経口血糖降下薬の使用に際しては説明に基づいた同意を得るようにする.一方,感染,ストレス,ペットボトル症候群などによるケトアシドーシスや,経口薬によって十分なコントロールが得られない場合はインスリンを使用するb).
動脈硬化の危険因子である高脂血症や高血圧が存在する場合は,生活習慣の改善によってこれらの病態の改善を図ることが原則である.改善しない場合は,薬物により治療するg),h).
糖尿病診断のためのブドウ糖負荷を行う際は,実際の体重×1.75g(ただし最大75g)のブドウ糖を負荷する.高血糖の判定区分ならびに糖尿病の診断は成人と同じである.
(2)治療目標
2型糖尿病の治療の目標は,食生活ならびに運動習慣を改善することによって,インスリン抵抗性ならびに代謝を改善し,血糖コントロールを正常化させることにあるf).2型糖尿病においても,思春期では摂食障害などにより血糖コントロールが困難になることがある.
小児2型糖尿病は,通常自覚症状が乏しいために治療に対する動機づけが難しい.したがって通院が不定期になりやすく,その結果として1型糖尿病よりも短い期間で合併症が進行しがちである24).診断時から糖尿病教育を行い,さらには個々の患者の背景も考慮し,治療の放置や中断を防ぐ.
(3)食事・運動療法
食事療法は,正常な成長と発育を促し,かつ,インスリン抵抗性を改善することを目標とする.基本的な1日摂取エネルギー量は1型糖尿病と同じであり,肥満を伴う症例に関しては表2に示した性別・年齢のエネルギー必要量の90~95%程度にエネルギー制限することもあるが,長期的に維持可能な指導を行うことが肝要であるk).適切な食品を選び,食事量のコントロールができるように指導し,この習慣を一生続けられるように支援する.同じように,身体活動度に関する生活習慣も改善する.患児の日常生活を把握して,楽しみながら運動量を増やせるように,実行可能な運動メニューを作成する.基本的には毎日30分以上体を動かし,1日摂取エネルギーの最低10%以上を運動で消費できるようにする.進行した合併症がない限り運動を制限しない.運動療法に定型はなく,活動的な生活を行うことによって日々の活動エネルギーを増やすようにする.食事および運動療法は,本人のみでなく家族全体の生活習慣の見直しによってうまくいく場合が多い.
表2 エネルギーの食事摂取基準:推定エネルギー量(kcal/日)
年齢 | 男性 | 女性 | ||||
身体活動レベル | 身体活動レベル | |||||
I | II | III | I | II | III | |
0~5(月)母乳栄養児 | - | 600 | - | - | 550 | - |
人工乳栄養児 | - | 650 | - | - | 600 | - |
6~11(月) | - | 700 | - | - | 650 | - |
1~2(歳) | - | 1,050 | - | - | 950 | - |
3~5(歳) | - | 1,400 | - | - | 1,250 | - |
6~7(歳) | - | 1,650 | - | - | 1,450 | - |
8~9(歳) | - | 1,950 | 2,200 | - | 1,800 | 2,000 |
10~11(歳) | - | 2,300 | 2,550 | - | 2,150 | 2,400 |
12~14(歳) | 2,350 | 2,650 | 2,950 | 2,050 | 2,300 | 2,600 |
15~17(歳) | 2,350 | 2,750 | 3,150 | 1,900 | 2,200 | 2,550 |
(4)薬物療法
わが国では,食事療法ならびに運動療法のみで血糖コントロールが得られるのは60~70%で,残りの症例において薬物療法が行われているb).米国では症例の大半は最終的に薬物療法が必要になるというg).小児2型糖尿病の薬物療法に関して,確立されたevidenceはないc).近年,肥満を伴う2型糖尿病にメトホルミンが有効かつ安全であると報告されたが25),この報告での1日最大使用量は2,000mgである.わが国で,認可されている用量は1日750mgであるが,1日750mgもしくは500mgの使用により血糖改善効果が認められる症例があるl).チアゾリジン薬に関しては,安全性が確立されていない.小児糖尿病に対する経口血糖降下薬の使用に際しては説明に基づいた同意を得るようにする.一方,感染,ストレス,ペットボトル症候群などによるケトアシドーシスや,経口薬によって十分なコントロールが得られない場合はインスリンを使用するb).
動脈硬化の危険因子である高脂血症や高血圧が存在する場合は,生活習慣の改善によってこれらの病態の改善を図ることが原則である.改善しない場合は,薬物により治療するg),h).