(旧版)科学的根拠に基づく糖尿病診療ガイドライン 改訂第2版
16.小児思春期糖尿病
ステートメント
1.基本的事項


2.治療の担い手

3.1型糖尿病
(1)治療目標
レベル2
血糖コントロールによる合併症の予防と,社会的・精神的に健全な状態を保つことが治療の目標である.具体的な血糖コントロール目標は,表1に示すとおりであるb).コントロールは思春期に入ると乱れやすいが,思春期後に改善することが多い1),2),a),b),c).
表1 小児1型糖尿病の管理目標
血糖値
HbA1c値
*小児の血糖は血糖管理が不安定であり,目標値以下になることをいたずらに推奨してはならない.
特に早朝空腹時血糖値が70mg/dL未満では夜間の低血糖の存在を考慮する.
(2)食事療法の基本 

食事制限ではなく,正常な成長発育に必要十分なエネルギーを摂取させる.図1に応じ,年齢・身長および生活活動強度に応じた適切な食事を摂取する.部活動や登山,長距離走,水泳などで生活活動強度が普段より大きくなるときには,適宜,補食を加えるa),b),d).
(3)運動療法の基本

進行した合併症がなく,血糖コントロールが落ち着いている限り制約はなく,積極的に勧める.基本的にすべてのスポーツを許可するe).運動時には補食ならびにインスリン量の調節を行うb),f).
(4)インスリン療法の基本
インスリン注射は必須である.診断がつき次第,インスリン治療を開始する.
注射法の原理は,健常者の血中インスリン動態に合わせるように,インスリンの基礎分泌と追加分泌を補充する.正常な成長発育のために食事摂取に自由度を持たせ,血糖コントロールとのバランスを取るa).

思春期以降の患者では,1日2回のインスリン注射より3〜4回注射法(強化インスリン療法)のほうが良好な血糖コントロールが得られる1),2),4).
レベル2
(5)低血糖に留意する
レベル3
6〜7歳以下の患児は,低血糖を認知できない可能性があることを考慮するa).
小児における低血糖は認知機能障害をもたらす可能性があり,これを避けるべく,インスリン注射の方法(量・時間)やエネルギー(補食を含む)摂取に留意する必要がある8),9),17),18),19).

血糖コントロールによる合併症の予防と,社会的・精神的に健全な状態を保つことが治療の目標である.具体的な血糖コントロール目標は,表1に示すとおりであるb).コントロールは思春期に入ると乱れやすいが,思春期後に改善することが多い1),2),a),b),c).
表1 小児1型糖尿病の管理目標
血糖値
(年代別の)目標値 | 食前血糖値(mg/dL) | 食後血糖値(mg/dL) | 夜間血糖値(mg/dL) |
正常値 | <110 | <126 | ― |
思春期 | 80〜140 | 〜180 | 65〜126 |
学童期 | 80〜150 | 〜200 | 70〜140 |
幼児期 | 80〜160 | 〜250 | 70〜170 |
HbA1c値
(年代別の)目標値 | HbA1c(%) |
正常値 | <6 |
思春期 | 6.5〜7.4 |
学童期 | 6.5〜7.4 |
幼児期 | 7.5〜8.5 |
特に早朝空腹時血糖値が70mg/dL未満では夜間の低血糖の存在を考慮する.


食事制限ではなく,正常な成長発育に必要十分なエネルギーを摂取させる.図1に応じ,年齢・身長および生活活動強度に応じた適切な食事を摂取する.部活動や登山,長距離走,水泳などで生活活動強度が普段より大きくなるときには,適宜,補食を加えるa),b),d).
(3)運動療法の基本


進行した合併症がなく,血糖コントロールが落ち着いている限り制約はなく,積極的に勧める.基本的にすべてのスポーツを許可するe).運動時には補食ならびにインスリン量の調節を行うb),f).
(4)インスリン療法の基本
インスリン注射は必須である.診断がつき次第,インスリン治療を開始する.
注射法の原理は,健常者の血中インスリン動態に合わせるように,インスリンの基礎分泌と追加分泌を補充する.正常な成長発育のために食事摂取に自由度を持たせ,血糖コントロールとのバランスを取るa).


思春期以降の患者では,1日2回のインスリン注射より3〜4回注射法(強化インスリン療法)のほうが良好な血糖コントロールが得られる1),2),4).

(5)低血糖に留意する

6〜7歳以下の患児は,低血糖を認知できない可能性があることを考慮するa).
小児における低血糖は認知機能障害をもたらす可能性があり,これを避けるべく,インスリン注射の方法(量・時間)やエネルギー(補食を含む)摂取に留意する必要がある8),9),17),18),19).
4.2型糖尿病
(1)診断
糖尿病診断のためのブドウ糖負荷を行う際は,実際の体重×1.75g(ただし最大75g)のブドウ糖を負荷する.高血糖の判定区分ならびに糖尿病の診断は成人と同じである.
(2)治療目標
血糖値とHbA1cを本ガイドライン(「2.糖尿病治療の目標と指針」表1 血糖コントロールの指標と評価参照)の優〜良に維持することであるb).

小児2型糖尿病は自覚症状が乏しいために治療の放置や中断が多く,ドロップアウト群における合併症の頻度が高い24).ドロップアウトを防ぐためには,診断時からの家族を含めた糖尿病教育が重要である.
レベル3
(3)食事療法の基本

食事療法の基本は食事制限ではない.表2に従い,年齢・性別に即したエネルギー摂取を指導し,正常な成長発育に必要十分なエネルギーを摂取させる.ただし,肥満を伴う場合は,表2に示した性別・年齢のエネルギー必要量の90〜95%程度にエネルギー制限するk).
(4)運動療法の基本

身体活動度を増加させ消費エネルギーの増大を目指し,インスリン抵抗性の改善,ならびにストレスの解消を目的に積極的に行うb).
(5)経口血糖降下薬の使い方
食事ならびに運動療法で,目的とした血糖コントロールが得られない場合には,経口血糖降下薬や,ときにインスリンの投与を開始するg).

小児糖尿病を対象とした経口血糖降下薬の臨床試験はほとんど行われていないので,その使用にあたっては十分説明し同意を得る.米国では肥満を伴う2型糖尿病に関するメトホルミンの有効性と安全性が報告されている25).
レベル2
(6)インスリン注射の位置づけ

経口薬によっても十分なコントロールが得られない場合やケトアシドーシスがある場合には,インスリンを使用するg).
(7)高血圧・高脂血症の治療

高血圧ならびに高脂血症が存在する場合は,これらについても治療するg),h).
糖尿病診断のためのブドウ糖負荷を行う際は,実際の体重×1.75g(ただし最大75g)のブドウ糖を負荷する.高血糖の判定区分ならびに糖尿病の診断は成人と同じである.
(2)治療目標
血糖値とHbA1cを本ガイドライン(「2.糖尿病治療の目標と指針」表1 血糖コントロールの指標と評価参照)の優〜良に維持することであるb).


小児2型糖尿病は自覚症状が乏しいために治療の放置や中断が多く,ドロップアウト群における合併症の頻度が高い24).ドロップアウトを防ぐためには,診断時からの家族を含めた糖尿病教育が重要である.

(3)食事療法の基本


食事療法の基本は食事制限ではない.表2に従い,年齢・性別に即したエネルギー摂取を指導し,正常な成長発育に必要十分なエネルギーを摂取させる.ただし,肥満を伴う場合は,表2に示した性別・年齢のエネルギー必要量の90〜95%程度にエネルギー制限するk).
(4)運動療法の基本


身体活動度を増加させ消費エネルギーの増大を目指し,インスリン抵抗性の改善,ならびにストレスの解消を目的に積極的に行うb).
(5)経口血糖降下薬の使い方
食事ならびに運動療法で,目的とした血糖コントロールが得られない場合には,経口血糖降下薬や,ときにインスリンの投与を開始するg).


小児糖尿病を対象とした経口血糖降下薬の臨床試験はほとんど行われていないので,その使用にあたっては十分説明し同意を得る.米国では肥満を伴う2型糖尿病に関するメトホルミンの有効性と安全性が報告されている25).

(6)インスリン注射の位置づけ


経口薬によっても十分なコントロールが得られない場合やケトアシドーシスがある場合には,インスリンを使用するg).
(7)高血圧・高脂血症の治療


高血圧ならびに高脂血症が存在する場合は,これらについても治療するg),h).
5.その他の型の糖尿病


小児・思春期発症の糖尿病では“その他の型”の糖尿病のうちの,遺伝子異常に伴う糖尿病の頻度が成人発症の場合に比べて高いので,この点を念頭に置いておく.
図1-a

図1-b

- 1)年齢別の平均体重ならびに平均身長は,年齢と平均体重曲線ならびに平均身長曲線との交点となる.
例:10歳男児の平均体重は約33kg,平均身長は約136cmとなる. - 2)標準体重は身長から推定する.例:女子で身長125cmの場合の標準体重を推定する場合:125cmと平均身長曲線の交点が,8歳に相当するので,8歳の線と平均体重曲線の交点を求めると,約25kgとなる.
図1-b
