(旧版)科学的根拠に基づく糖尿病診療ガイドライン 改訂第2版

 
15.糖尿病合併妊娠と妊娠糖尿病


アブストラクトテーブル

論文コード 対象 方法 結果
1)Steel JM et al, 1990
非ランダム化比較試験
レベル3
英国.1型糖尿病女性(239人) 妊娠前管理(143人)vs.妊娠前管理なし(96人) 妊娠前管理により,妊娠初期HbA1c 2.1%低下,低血糖頻度上昇,先天奇形発生率低下(2/143 vs. 10/96)(7.4倍の差)
2)Hanson U et al, 1990
コホート研究
レベル3
スウェーデン.1型糖尿病女性(532妊娠),健常女性(222妊娠) 妊娠初期(9~10週)HbA1c 妊娠初期HbA1cが平均+8SD(HbA1c 10.1%にあたる)以上で,有意に流産および先天奇形発生率が著しく上昇
3)Suhonen L et al, 2000
コホート研究
レベル3
フィンランド.1型糖尿病女性(488人,691妊娠),健常女性(706人,729妊娠) 妊娠初期HbA1c DM群は大奇形4.2%,小奇形6.1%,非DM群は大奇形1.4%,小奇形3.0%.非DMを1.0とすると,RRは妊娠初期HbA1c<5.6%で1.6,5.6~6.8%で3.0,>9.4%で4.8
4)Schaefer-Graf UM et al, 2000
コホート研究
レベル3
米国.GDM(3,764妊娠),2型糖尿病(416妊娠) 初診時(主に17~20週)空腹時血糖値 奇形はFPG<120mg/dLで2.1%,120~200で5.9%,>200で12.9%.奇形の種類は偏らない
5)Klein BE et al, 1990
コホート研究
レベル3
米国.網膜症を有する1型糖尿病女性374人 妊娠133人,非妊娠241人で,妊娠初期と分娩後を比較 妊娠によって有意に網膜症が進行(オッズ比2.3).HbA1cの影響も大きい
6)DCCT Research Group, 2000
コホート研究
レベル3
米国.1型糖尿病女性(680人) 追跡中に妊娠した症例180人(270分娩)と非妊娠500人を平均6.5年間追跡比較.妊娠中はすべて強化療法を施行 網膜症のリスクは強化療法群1.63倍,通常療法群2.48倍である.妊娠中は有意に網膜症が悪化し,分娩後1年は影響が続くが,長期の観察では有意差なし
7)Ekbom P et al, 2001
コホート研究
レベル3
デンマーク.1型糖尿病合併妊婦(240人) 非腎症(203人),微量アルブミン尿(26人),顕性腎症(11人)の周産期予後を調査 尿蛋白排出量が多いほど,妊娠高血圧症候群に伴う早産が増える.微量アルブミン尿でも中毒症は増える.低体重児は顕性腎症で増える.2~6週のHbA1cが高いと早産が多くなる
8)Purdy LP et al, 1996
症例対照研究
レベル4
米国.腎機能の低下している中等度以上の糖尿病腎症合併妊婦(11人) 同程度に腎機能の低下している糖尿病腎症女性と比較 妊娠することによって40%以上の確率で腎機能の悪化が促進される
9)Langer O et al, 1989
コホート研究
レベル3
米国.NDDG基準によるGDM(334人) 平均血糖値86mg/dL以下(69人),87~104mg/dL(180人),105mg/dL以上(85人) 86mg/dL以下群で低体重児(SFG)の頻度が,105mg/dL以上群で巨大児(LFG)の頻度が上昇.インスリン治療の有無は関係なし
10)Langer O et al, 1994
非ランダム化比較試験
レベル3
米国.GDM(2,461人) 血糖自己測定群(1,316人),非測定群(1,145人).空腹時値95mg/dL,食後2時間値120mg/dL以上でインスリン投与 血糖自己測定群のほうが巨大児,新生児低血糖,帝王切開率,死産,多血症,高ビリルビン血症,低カルシウム血症,呼吸障害などが有意に減少.巨大児の危険因子は平均血糖値,年齢,巨大児分娩の既往
11)Langer O et al, 2000
RCT
レベル1
米国.妊娠糖尿病(404人) グリブライド(グリベンクラミド)治療群(201人)とインスリン治療群(203人) 血糖コントロール,LFG,巨大児,RDS,新生児低血糖などの周産期合併症,先天奇形率に差なし
12)Hellmuth E et al, 2000
コホート研究
レベル3
デンマーク.糖尿病妊娠症例(160人) メトホルミン(1.5gまで)治療(50人),スルホニル尿素薬治療(68人),インスリン治療(42人),経口薬使用期間はメトホルミン3週,スルホニル尿素薬4週(median)で20週以降に治療.メトホルミン群は肥満あり メトホルミン治療群では妊娠高血圧症候群の頻度(メトホルミン37%,スルホニル尿素薬7%,インスリン10%)および周産期死亡率(メトホルミン11.6%,他1.3%)が高い.生まれた児の異常はメトホルミンでも変わりなし
13)Griffin ME et al, 2000
RCT
レベル1
アイルランド.妊婦3,742人をランダムに2群に振り分け.異なったスクリーニング法を比較 危険因子による選択的スクリーニング(1,853人)(32週),(家族歴,体重増加,前回奇形,前回GDM,尿糖陽性,巨大児,羊水過多)およびGCTによるユニバーサルスクリーニング(1,299人)(26~28週) 選択的スクリーニング1.45%,ユニバーサルスクリーニング2.7%にGDM検出.ユニバーサルグループのほうが早く発見(30週vs.33週)周産期異常のリスク減る
14)Naylor CD et al, 1997
コホート研究
レベル3
カナダ.妊婦3,131人の約半数1,560人でスクリーニングの検討 低リスク群を除外し,リスクの程度によってスクリーニングの基準を変更.年齢,BMI,人種でスコアをつくり,その和で低,中,高リスク群を決める.GCTは中・高リスク群のみに行う.高リスク群は基準を低く130以上とする 34.6%のGCTを省略できる.同じ値の検出率を得る
15)Maegawa Y et al, 2003
コホート研究
レベル4
日本.妊婦(749人) 妊娠初期および妊娠24~28週にGCT,随時血糖,尿糖などによるGDMスクリーニングを行い,精度を比較検討した GDMの頻度は2.9%であり,そのうち63.6%は妊娠初期に発見された.GCTの精度が最も良好であった
16)杉山隆ほか,2006
prospective study
レベル3
日本.妊婦(4,070人) 妊娠初期および妊娠中期にGCT,随時血糖,食後血糖,空腹時血糖によるGDMスクリーニングを行い,精度,コスト効果などを比較検討した GDMの頻度は2.9%であり,そのうち78.6%は妊娠初期に発見された.妊娠時のスクリーニングとして,精度・コスト・簡便性の点より,妊娠初期は随時血糖(カットオフ値:95mg/dL),妊娠中期はGCT(カットオフ値:140mg/dL)が望ましい
17)O'Sullivan JB, 1991
コホート研究
レベル3
米国.妊婦(943人) GDM(615人)と正常妊婦(328人)を比較 28年間にわたる追跡調査で,GDM群で36.4%,正常群で5.5%がDMを発症した
18)Kaufmann RC et al, 1995
コホート研究
レベル3
米国.前にGDMだったものを10年以上経って再調査.GDM(331人).97%は白人 NDDGの基準をみたす群(199人)とCoustanの基準を満たす群(141人)を比較した(最長16年) 糖尿病を発症した比率はそれぞれ17.4%と22.7%で両基準とも同程度.DMになりやすい危険因子としてFPG,BMI,W/H,GDMの回数と期間がある
19)Kim C et al, 2002
システマティックレビュー
レベル1
種々のethnicityを対象 NDDGの基準を満たす計7論文を検討 分娩後10年で約70%がDMを発症した
20)Sugaya A et al, 2000
コホート研究
レベル3
日本.妊婦(416人) 妊娠時の75g OGTTの結果によるGDMの診断基準をWHO,JDSにおいて周産期因子を比較 JDSのGDMの診断基準を満たす症例のほうが,呼吸窮迫症候群や,低アプガースコア,新生児低血糖,早産などの合併症が高く,JDSの診断基準はWHOの診断基準よりも周産期予後の点で適切である.
21)HAPO Study, 2002
コホート研究
レベル4
25,000人(10ヵ国)の妊婦 妊娠24~28週時に75g OGTTを行い,治療介入によるバイアスを除いて血糖値と妊娠予後との関連を検討する 現在進行中で結果はまだ出ていない
22)Reece EA et al, 1988
前後比較試験
レベル3
米国.糖尿病腎症合併妊婦(1型糖尿病)31人 妊娠時および分娩後の比較.1975~1984年のデータを後方視的に調べた 妊娠時は尿蛋白増加,血圧上昇をきたすが,分娩後は元にもどり,腎症はnatural courseをたどる.3年後4人が透析,2人が腎移植.児2人死亡(6%),帝切70%,腎機能低下者は児が小さい
23)de Veciana M et al, 1995
RCT
レベル2
米国.GDM(66人)(O'Sullivanの基準による) 食前血糖60~105mg/dL目標群(33人),食後1時間血糖140mg/dL目標群(33人).すべてインスリン治療 食後血糖値目標群のほうが巨大児,新生児低血糖,帝王切開率などが有意に低下.食前群はHbA1c 0.6%低下であったが,食後群は3.0%低下した
24)Langer O et al, 1991
コホート研究
レベル3
米国.GDM(471人) 空腹時血糖値95mg/dL以下,95~105mg/dL(インスリン治療なしとあり),105mg/dL以上(すべてインスリン治療) 空腹時血糖値95mg/dL以上では巨大児の頻度が有意に上昇.FPG<95ではインスリンの有無ではLGAの%変わらず.FPG95~105ではインスリン治療の有無の影響大きい.FPG>95からインスリンを始めるべきである
25)Crowther CA et al, 2005
RCT
レベル1
オーストラリア.GDM(1,000人) 治療介入群(490人)と非介入群(510人)の周産期合併症と産後3ヵ月の母体のQOLを比較 治療介入群において周産期合併症(死亡,肩甲難産,骨折,神経麻痺)は有意に低く,母体のQOLも良好であった
26)Naeye RL, 1979
コホート研究
レベル4
米国.DMのない妊婦 妊婦をBMIでやせ,標準,肥満群に分け,それぞれの周産期死亡率と妊娠時体重増加量の相関を検討 妊娠時の体重増加量が約9kgのときに周産期死亡率が最も低い.やせの場合,9kg以上の体重増加が望ましい.肥満の場合,6.8~7.3kgのときに最も周産期死亡率が低いが,13kg以上になると著明な周産期死亡率の増加が認められる
27)Boskovic R et al, 2003
症例報告
レベル5
正期産の妊婦(8人)の胎盤.11人の糖代謝異常妊娠女性 灌流実験によるリスプロの胎盤の通過性を検討.母体へのリスプロ投与と血中のリスプロ濃度の相関を検討 100~200µU/mLの灌流実験では,リスプロの胎盤通過は認められなかった.リスプロを通常量の母体投与では,胎盤の移行性は無視しうる.ただし50単位/回以上の量では,通過する
28)Jovanovic L et al, 1999
RCT
レベル2
米国.妊娠糖尿病(42人) リスプロ治療群(19人)とレギュラーインスリン治療群(23人) 抗インスリン抗体レベルに差なし.リスプロは臍帯血に検出されなかった.リスプロ群において低血糖の頻度が有意に低かった.胎児・新生児の合併症は認められなかった
29)Loukovaara S et al, 2003
RCT
レベル2
フィンランド.1型糖尿病症例(69人) リスプロ群(36人)とレギュラーインスリン群(33人)で糖尿病網膜症の変化や血糖コントロール状態(HbA1c値)を妊娠各時期において比較 リスプロ治療群とレギュラーインスリン治療群で糖尿病網膜症の悪化などに有意差なし.リスプロ群で2ndと3rd trimesterにおいて有意にHbA1c値が低かった
30)Bhattacharyya A et al, 2001
コホート研究
レベル3
GDM(213人),1型糖尿病(89人)・2型糖尿病(8人)女性 糖代謝異常妊婦をリスプロ群とレギュラーインスリン群に分け,QOLと血糖コントロール状態を比較 リスプロ群においてQOLと血糖コントロールはレギュラーインスリン群に比し,有意に良好であった
31)Pettitt DJ et al, 2003
症例対照研究
レベル4
米国.GDM 15例に対する検討 リスプロとレギュラーインスリン投与後の血糖値のareas under curv(AUC)を比較検討 リスプロ群のほうがレギュラーインスリン群に比し,有意にAUCは小さくなり,食後の最も高くなる血糖値も有意にレギュラーインスリン群に比し低くなった
32)Pettitt DJ et al, 2007
RCT
レベル2-
米国.GDM27例に対する検討 アスパルトとレギュラーインスリン投与後の食事負荷試験による血糖値変化を比較検討 アスパルト群のほうが食後血糖値低下に対しより有効であった
33)McElduff A et al, 1994
比較試験
レベル4
28人の妊娠糖尿病 GCTと食後血糖値による妊娠糖尿病の検出を比較 前者の検出感度が後者に優った
34)Watson WJ, 1990
コホート研究
レベル4
500人の妊婦 尿糖によるスクリーニングの感度をGCTと比較 尿糖によるスクリーニングの感度は27%に過ぎなかった


 
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