(旧版)科学的根拠に基づく糖尿病診療ガイドライン 改訂第2版
14.糖尿病に合併した高脂血症
アブストラクトテーブル
論文コード | 対象 | 方法 | 結果 |
1)Abbott RD et al (Framingham Study), 1988 コホート研究 レベル3 | 心血管疾患のない白人男女5,209人(30~62歳).このうちコレステロール値を解析できたのは,非糖尿病男性359人,女性15人,糖尿病男性55人,女性37人 | Framinghamコホート[34年間の追跡] | 総コレステロール値は有意差がなかったが,糖尿病患者の冠動脈疾患の再発や心不全の進行は男性より女性に2~3倍多い |
2)Kannel WB et al, 1979 コホート研究 レベル3 | 心血管疾患のない白人男女5,209人(30~62歳) | Framingham Studyの20年間追跡データを解析.糖尿病の有無と心血管イベントの関連を検討 | 糖尿病患者では心血管疾患のリスクが非糖尿病患者に比べ2~3倍高い.心血管死/うっ血性心不全の糖尿病によるリスク増加は女性でより大きかった |
3)Lerner DJ et al (Framingham Study), 1986 コホート研究 レベル3 | 35~84歳の白人男女5,127人 | Framinghamコホート[26年間の追跡] | 冠動脈疾患とこれによる死亡には男女差がある.糖尿病患者は心血管合併症が非糖尿病者に比べ多い.総コレステロール値は,女性では男性に比し強い心血管病の予測因子となる |
4)Scheidt-Nave C et al, 1990 コホート研究 レベル3 | 59~89歳の白人男女2,223人 | 耐糖能による心血管障害の頻度の違いを断面調査した | 糖尿病患者では心筋梗塞が多く,無症候性心筋虚血も多い |
5)Garcia MJ et al (Framingham Study), 1974 コホート研究 レベル3 | 5,209人の白人男女,うち239人が最初の4年間で糖尿病と診断 | Framinghamコホート[16年間の追跡] | 糖尿病患者では糖尿病のない者に比べ心血管障害の発症が多い |
6)Stamler J et al, 1993 コホート研究 レベル3 | 35~75歳の白人男性347,978人.うち糖尿病患者5,163人 | 11~13年間にわたり,心血管疾患による死亡率を検討した | 血圧,コレステロールのコントロールと禁煙が心血管疾患の発症抑制に重要.糖尿病患者ではこれらの危険因子が非糖尿病者に比べ予後を増悪させる |
7)Haffner SM et al, 1998 コホート研究 レベル3 | 45~64歳のフィンランド人男女2,432人(糖尿病1,059人,非糖尿病1,373人) | 7年の追跡期間中の心筋梗塞発症率を比較 | 総コレステロール,中性脂肪値は,糖尿病患者で有意に高い.心筋梗塞の既往のない糖尿病患者が心筋梗塞を発症するリスクは,既往のある非糖尿病患者が再発を生じる率に匹敵するほど高い |
8),9),10)JDCS, 2002, 2003 RCT レベル1 | 糖尿病患者2,547人,全国59施設 | 患者指導の介入 | LDL 160mg/dL以上で虚血性心疾患のリスクは3.7倍であった |
11)UKPDS 23, 1998 コホート研究 レベル2 | UKPDSの患者のうちデータの完備した白人男女2,693人 | 虚血性心疾患の発症リスクをベースラインデータからCox比例ハザードモデルで解析 | LDL-C高値,HDL-C低値,高血圧,高血糖,喫煙が2型糖尿病における虚血性心疾患の危険因子であった |
12)Assmann G et al, 1998 コホート研究 レベル3 | 中年白人男性4,849人.うち糖尿病患者約300人 | 試験登録時にみられた危険因子と8年の追跡期間中の冠動脈性心疾患発症の関係を解析 | 中性脂肪は,冠動脈性心疾患の独立した危険因子である |
13)Austin MA et al, 1998 メタアナリシス レベル3 | 15~81歳の白人男性46,413人,女性10,864人を含む17のコホート研究を解析.糖尿病患者数については記載なし | 平均11.4年の調査期間における中性脂肪値と心血管疾患発生の関係を検討 | 高中性脂肪血症は心血管疾患発症リスクを男性で14%,女性では32%増加させた |
14)Huang ES et al, 2001 メタアナリシス レベル2+ | 1996年から2000年までに報告された7つのRCTを対象に,計2,603人の2型糖尿病患者の脂質治療効果を検討 | スタチンもしくはフィブラートvs.プラセボ[4.3~6.1年間追跡] | 脂質低下療法により心筋梗塞の発症が40%抑制され,心疾患死,脳梗塞発症にも低減傾向がみられた |
15)Downs JR et al (AFCAPS/TexCAPS), 2001 RCT レベル1 | 冠動脈性心疾患の既往がない45~73歳の男性5,608人,55~73歳の女性997人.うち糖尿病患者155人,白人89% | ロバスタチン(20~40mg/dL)vs.プラセボ[5.2年間] | 平均的LDL-C,低HDL-Cの男女においてロバスタチンは初発の冠動脈イベントのリスクを有意に低下させた |
16)Buchwald H et al (POSCH), 1990 RCT レベル1 | 838人の心筋梗塞の既往の高脂血症患者.平均年齢51歳 | 838人を部分的腸バイパス手術群とコントロール群に分け平均9.7年間 | 手術患者で血清脂質改善あり.心血管による死亡も低下 |
17)Rubins HB et al (VA-HIT), 1999 RCT レベル1 | 冠動脈性心疾患の既往があるLDL-C正常,HDL-C低値の74歳未満男性2,531人.うち糖尿病患者627人,白人90% | ジェムフィブロジル(1,200mg/dL)vs.プラセボ[5.1年間] | ジェムフィブロジル群で,中性脂肪の低下,HDL-Cの上昇により心血管疾患の発症リスクが24%低下した |
18)Goldberg RB et al (CARE), 1998 RCT レベル1 | 心筋梗塞患者の既往がありLDL-C平均値139mg/dLの21~75歳の男女(白人90%)4,159人(うち糖尿病586人) | プラバスタチン(40mg/dL)vs.プラセボ[5年間]冠動脈イベントの発症を検討 | プラバスタチン群は糖尿病患者において冠動脈イベントの発症リスクを25%低下させた |
19)LIPID Study Group, 1998 RCT レベル1 | 冠動脈疾患を有する31~75歳の9,014人.DM 782人 | プラバスタチン(40mg/日)vs.プラセボ[6.1年間] | コレステロール低下は心血管疾患の抑制に重要である |
20)Pyörälä K et al (4S), 1997 RCT レベル2 | 35~70歳のヨーロッパ人男女4,398人(うち糖尿病患者483人,IFG 678人) | シンバスタチン20~40mg/日vs.プラセボ[平均5.4年間] | シンバスタチンを用いたコレステロール低下療法は,糖尿病患者の冠動脈性心疾患二次予防に有効である |
21)Heart Protection Study Collaborative Group (HPS), 2003 RCT レベル1 | 糖尿病の英国人5,963人(40~80歳),と閉塞性動脈疾患を持つ非糖尿病者14,573人.糖尿病患者の平均LDL-Cは124mg/dLであった. | シンバスタチン投与群(40mg/日)vs.プラセボ群[治療期間5年間] | シンバスタチンは糖尿病患者,非糖尿病患者のいずれにおいても初発心血管イベントを約25%有意に低下させた |
22)Colhoun HM et al (CARDS), 2004 RCT レベル1 | 心血管疾患の既往がない2型糖尿病患者2,838人(40~75歳).LDL-Cは160mg/dL以下 | アトルバスタチン投与群(10mg/日)1,428人vs.非投与群1,410人[追跡期間3.9年(中央値)] | LDLが高くない2型糖尿病患者において,アトルバスタチン10mg/日は心血管イベントの発生を37%低下させた.総死亡率は27%減少した |
23)Collins R et al, 2004 RCT レベル1 | 心血管病のある患者3,280人,血管閉塞疾患および糖尿病のある患者17,256人,計20,536人 | シンバスタチン40mgまたはプラセボ[治療期間5年間] | 脳卒中25%減,梗塞28%減,主要血管イベントは20%減 |
24)The Kyushu Lipid Intervention Study Group, 2000 コホート研究 レベル3 | 総コレステロール250mg/dL以上の日本人男性5,640人 | 以前の治療継続またはプラバスタチン10~20mg追加 | 総コレステロールは15%減,追加なしでは8%減.プラバスタチンにて心血管イベントは危険率0.86,脳梗塞は0.78に減少,総合で0.81に減少. |
25)Ito H et al, 2001 RCT レベル1 | 60歳以上の高齢者665人 | 低容量(5mg/日)または標準用量の10~20mg/日のプラバスタチン | 標準用量にて心血管イベントが32.6%減少.この傾向は非糖尿病群にて著明 |
26)4S, 1994 RCT レベル1 | 35~70歳のヨーロッパ人男女4,444人(糖尿病患者202人) | シンバスタチン20~40mg/日vs.プラセボ[平均5.4年間] | 糖尿病患者を含め,冠動脈性心疾患の既往のある者はコレステロール低下により心血管疾患の発生が抑制される |
27)Hoogwerf BJ et al (Post CABG), 1999 RCT レベル2 | CABG後の患者1,351人(薬物療法の必要な糖尿病患者116人) | ロバスタチンによりLDL-Cを60~85mg/dLを目標に低下させた群 | 60~85mg/dLを目標にした群で,有意ではないものの,死亡,冠血管イベント,脳卒中の総和が減少した |
28)CARE Trial Investigators, 1996 RCT レベル1 | 血清総コレステロール,LDLコレステロールの平均値がそれぞれ209,139mg/dLの心筋梗塞の既往のある患者4,159人(男性3,583人,女性576人). プラバスタチン群2,081人,プラセボ群2,078人 | プラバスタチン40mg/日vs.プラセボ.5.0年(中央値)追跡 | 対照群と比べて,プラバスタチン群で冠動脈疾患死および非致死性心筋梗塞の発症が24%,CABGの必要が26%,PTCAの必要が23%,脳卒中の発症が31%減少した |
29)Heilbronn LK et al, 1999 RCT レベル2- | 35人の肥満2型糖尿病患者 | 異なる食事内容で12週にわたりエネルギー制限を行った | エネルギー制限は血糖コントロールに有用である |
30)DAIS, 2001 RCT レベル1 | カナダ,フィンランド,スウェーデンおよびフランス在住,40~65歳の2型糖尿病男女418人(96%が白人) | フェノフィブラート(200mg/dL)vs.プラセボ[3年間以上観察] | フェノフィブラート群で,冠動脈細小血管内径の減少や狭窄度の増加が有意に抑制された |
31)FIELD, 2005 RCT レベル1 | 軽度の脂質代謝異常を有する2型糖尿病患者(平均HbA1c 6.9%).9,795人 | 微粉化フェノフィブラート200mg/日投与群vs.プラセボ投与群[5年以上観察] | 一次エンドポイントで冠動脈イベントの発生に有意差を認めなかったが,一次予防患者において心血管イベントを有意に減少させた.また,糖尿病網膜症,アルブミン尿の進行を抑制した |
32)LRC-CPPT, 1984 RCT レベル1 | CABG後の患者1,351人(薬物療法の必要な糖尿病患者116人) | コレスチラミンとプラセボ群に分け[7年間] | 冠動脈疾患発症,死亡を抑制 |