(旧版)科学的根拠に基づく糖尿病診療ガイドライン 改訂第2版
14.糖尿病に合併した高脂血症
解説
3.治療法
(1)ライフスタイル
ライフスタイルの改善は高脂血症治療の基本である.食事療法による肥満の改善と運動には,直接的および糖代謝の是正を通じて間接的に高脂血症を改善させる効果がある29).食事療法としては,高LDL-C血症では,糖尿病の血糖コントロールのための摂取エネルギー制限に加え,コレステロール摂取を300mg/日以下とする.高LDL-C血症がさらに持続する場合には,コレステロール摂取を200mg/日以下とする.脂肪摂取量は摂取エネルギーの25%以下とする.飽和脂肪酸の多い動物性脂肪の摂取制限,一価不飽和脂肪酸の適切な摂取,n-3系多価不飽和脂肪酸の適切な摂取の指導も有用であるとされる.食物繊維は25g/日以上摂取を指導する.高中性脂肪血症を合併する場合には,アルコール摂取制限または禁酒を加え,炭水化物摂取制限(摂取エネルギーの50%以下),単糖類の制限,高カイロミクロン血症では,脂肪摂取を15%以下とするb).
(2)スタチン系薬剤
スタチン系薬剤は強力なLDL-C低下作用を持ち,使用上の安全性も高い.糖尿病患者を対象にしたevidenceも多く,糖尿病に合併した高LDL-C血症の第一選択薬に位置付けられる.
(3)フィブラート系薬剤
フィブラート系薬剤は,高中性脂肪血症,低HDL-C血症の改善に効果がある.VA-HIT(Veterans Affairs High-Density Lipoprotein Cholesterol Intervention Trial)は,低HDL-C血症がありLDL-C値は140mg/dL以下のCHD既往男性を対象にgemfibrozil(国内未承認)の効果をみた試験である17).その糖尿病サブグループ解析ではCHDの発症が24%有意に抑制された.2型糖尿病患者のみを対象としたDAIS(Diabetes Atherosclerosis Intervention Study)では,フェノフィブラートの投与による冠動脈病変の進展抑制効果が確認された30).FIELD(Fenofibrate Intervention and Event Lowering in Diabetes)は,軽度の脂質代謝異常(フェノフィブラート群:総コレステロール195mg/dL,LDL-C 119mg/dL,TG 154mg/dL,HDL-C 43mg/dL,コントロール群:総コレステロール195mg/dL,LDL-C 119mg/dL,TG 153mg/dL,HDL-C 43mg/dL)を伴う2型糖尿病患者約10,000例を対象に,フェノフィブラートの心血管イベント抑制効果を検証したプロスペクティブスタディである31).対象の78%が心血管疾患の既往歴のない一次予防患者であったが,それらの患者においては非致死的心筋梗塞の初発または冠動脈心疾患による死亡の発生率が25%有意に低下した.また,細小血管症である糖尿病網膜症(レーザー治療)と糖尿病性腎症の進展を有意に抑制することが高脂血症治療薬としてはじめて確認された.
陰イオン交換樹脂を用いた大規模試験は,糖尿病患者のみを対象にしたものはないがII型高脂血症男性患者を対象にしたコレスチラミンの臨床試験では,冠動脈疾患発症率および死亡率を低下させた32).
(4)薬物副作用
高脂血症治療薬の副作用として,スタチン系薬剤やフィブラート系薬剤を使用する場合には,横紋筋融解症などに注意する必要があるe),f).特に腎機能低下時にはこれら薬剤の使用が禁忌となる場合がある.FIELDにおいては,フェノフィブラート群の16%がスタチン系薬剤を併用しており,プラセボ群(スタチン併用32%)に比し横紋筋融解症両群とも1%未満で有意差はなかったが31),スタチン系薬剤とフィブラート系薬剤の併用は日本においては原則禁忌となっている.やむをえず併用する際には,十分な注意が必要である.スタチン系薬剤やフィブラート系薬剤が副作用などで使用できない場合には,プロブコール,ニコチン酸製剤,陰イオン交換樹脂またはEPA製剤の使用(いまだ論文報告はない)を考慮する.
スタチン系薬剤であるシンバスタチン,アトルバスタチンは,薬物代謝酵素であるCYP3A4で代謝されるため,CYPを分子種非選択的に阻害するような薬物やCYP3A4で代謝される他の薬物との相互作用に注意する必要がある.
多くのスタチンの長期安全性は確認されている.
ライフスタイルの改善は高脂血症治療の基本である.食事療法による肥満の改善と運動には,直接的および糖代謝の是正を通じて間接的に高脂血症を改善させる効果がある29).食事療法としては,高LDL-C血症では,糖尿病の血糖コントロールのための摂取エネルギー制限に加え,コレステロール摂取を300mg/日以下とする.高LDL-C血症がさらに持続する場合には,コレステロール摂取を200mg/日以下とする.脂肪摂取量は摂取エネルギーの25%以下とする.飽和脂肪酸の多い動物性脂肪の摂取制限,一価不飽和脂肪酸の適切な摂取,n-3系多価不飽和脂肪酸の適切な摂取の指導も有用であるとされる.食物繊維は25g/日以上摂取を指導する.高中性脂肪血症を合併する場合には,アルコール摂取制限または禁酒を加え,炭水化物摂取制限(摂取エネルギーの50%以下),単糖類の制限,高カイロミクロン血症では,脂肪摂取を15%以下とするb).
(2)スタチン系薬剤
スタチン系薬剤は強力なLDL-C低下作用を持ち,使用上の安全性も高い.糖尿病患者を対象にしたevidenceも多く,糖尿病に合併した高LDL-C血症の第一選択薬に位置付けられる.
(3)フィブラート系薬剤
フィブラート系薬剤は,高中性脂肪血症,低HDL-C血症の改善に効果がある.VA-HIT(Veterans Affairs High-Density Lipoprotein Cholesterol Intervention Trial)は,低HDL-C血症がありLDL-C値は140mg/dL以下のCHD既往男性を対象にgemfibrozil(国内未承認)の効果をみた試験である17).その糖尿病サブグループ解析ではCHDの発症が24%有意に抑制された.2型糖尿病患者のみを対象としたDAIS(Diabetes Atherosclerosis Intervention Study)では,フェノフィブラートの投与による冠動脈病変の進展抑制効果が確認された30).FIELD(Fenofibrate Intervention and Event Lowering in Diabetes)は,軽度の脂質代謝異常(フェノフィブラート群:総コレステロール195mg/dL,LDL-C 119mg/dL,TG 154mg/dL,HDL-C 43mg/dL,コントロール群:総コレステロール195mg/dL,LDL-C 119mg/dL,TG 153mg/dL,HDL-C 43mg/dL)を伴う2型糖尿病患者約10,000例を対象に,フェノフィブラートの心血管イベント抑制効果を検証したプロスペクティブスタディである31).対象の78%が心血管疾患の既往歴のない一次予防患者であったが,それらの患者においては非致死的心筋梗塞の初発または冠動脈心疾患による死亡の発生率が25%有意に低下した.また,細小血管症である糖尿病網膜症(レーザー治療)と糖尿病性腎症の進展を有意に抑制することが高脂血症治療薬としてはじめて確認された.
陰イオン交換樹脂を用いた大規模試験は,糖尿病患者のみを対象にしたものはないがII型高脂血症男性患者を対象にしたコレスチラミンの臨床試験では,冠動脈疾患発症率および死亡率を低下させた32).
(4)薬物副作用
高脂血症治療薬の副作用として,スタチン系薬剤やフィブラート系薬剤を使用する場合には,横紋筋融解症などに注意する必要があるe),f).特に腎機能低下時にはこれら薬剤の使用が禁忌となる場合がある.FIELDにおいては,フェノフィブラート群の16%がスタチン系薬剤を併用しており,プラセボ群(スタチン併用32%)に比し横紋筋融解症両群とも1%未満で有意差はなかったが31),スタチン系薬剤とフィブラート系薬剤の併用は日本においては原則禁忌となっている.やむをえず併用する際には,十分な注意が必要である.スタチン系薬剤やフィブラート系薬剤が副作用などで使用できない場合には,プロブコール,ニコチン酸製剤,陰イオン交換樹脂またはEPA製剤の使用(いまだ論文報告はない)を考慮する.
スタチン系薬剤であるシンバスタチン,アトルバスタチンは,薬物代謝酵素であるCYP3A4で代謝されるため,CYPを分子種非選択的に阻害するような薬物やCYP3A4で代謝される他の薬物との相互作用に注意する必要がある.
多くのスタチンの長期安全性は確認されている.