(旧版)科学的根拠に基づく糖尿病診療ガイドライン 改訂第2版
13.糖尿病に合併した高血圧
アブストラクトテーブル
論文コード | 対象 | 方法 | 結果 |
1)Hansson L et al, 1998 RCT レベル1 | 2型糖尿病1,501人を含む(18,790人).ヨーロッパ,北米,南米,東アジア | 拡張期血圧を80未満,80~85,85~90mmHgにカルシウム拮抗薬で降圧 | 糖尿病では85~90mmHg群に比し80mmHg未満群で心血管系疾患が半減した |
2)UKPDS 38, 1998 RCT レベル1 | 高血圧合併2型糖尿病(1,148人).白人が86~88% | ACE阻害薬あるいはβ遮断薬を用いた厳格な血圧コントロールと緩やかな血圧コントロールを比較 | 厳格群では緩徐群に比して,糖尿病関連死が32%,細小血管症が37%,脳卒中が44%,心筋梗塞が21%減少した |
3)Lewis JB et al, 1999 RCT レベル2 | 蛋白尿を伴う1型糖尿病患者(129人).白人が92~97% | ACE阻害薬で,平均血圧を100~107と92mmHg未満にコントロール | 平均血圧が92mmHg未満になった者47人のうち,27人(57%)で尿中蛋白排泄量が0.5g/日未満に低下 |
4)Estacio RO et al, 2000 RCT レベル2 | 40~74歳(平均58歳)の高血圧の2型糖尿病患者(470人).米国人 | エナラプリル(5~40mg/日)あるいはニソルジピン(10~60mg/日)を用いて,拡張期血圧を75mmHg未満と80~89mmHgにコントロール | 5年間に厳格群と通常群で,正常から微量アルブミン尿への進展率(25%vs.18%),微量アルブミン尿から蛋白尿への進展率(16%vs.23%)に差はなし |
5)Katayama S et al, 2002 RCT レベル2 | 20~50歳の微量アルブミン尿あるいは蛋白尿の1型糖尿病患者(79人).日本人 | イミダプリルvs.カプトプリルvs.プラセボ | 1.5年間で,アルブミン尿はプラセボ群で1.72倍へ増加,イミダプリル群で0.59倍へ,カプトプリル群で0.94倍に減少 |
6)Pollare T et al, 1989 RCT レベル2 | 50人の本態性高血圧患者.スウェーデン人 | カプトプリル(81mg/日),あるいはハイドロクロロサイアザイド(40mg/日)[3ヵ月] | インスリン感受性(GIR)をカプトプリルは10.5%改善,サイアザイドは11%悪化 |
7)Kodama J et al, 1990 オープンラベル試験 レベル4 | 33~76歳(平均54歳)の正常血圧の2型糖尿病患者(12人).日本人 | カプトプリル | カプトプリルの投与で,1日血糖の曲線下面積が減少 |
8)Harano Y et al, 1995 オープンラベル試験 レベル4 | 高血圧患者(耐糖能正常6,境界型4,糖尿病3),平均年齢56歳(13人).日本人 | アムロジピン(2.5~7.5mg/日)[2~4ヵ月] | SSPG値が213から170mg/dLへ改善 |
9)Kosegawa I et al, 1998 オープンラベル試験 レベル4 | 平均54歳の高血圧の2型糖尿病患者(18人).日本人 | ニプラジロール(3mg/日)あるいはバルニジピン(15mg/日)[3ヵ月] | ニプラジロールは50.8%,バルニジピンは35.3%インスリン感受性(GIR)を改善 |
10)Miyazaki Y et al, 1998 オープンラベル試験 レベル4 | 耐糖能正常の高血圧患者.平均年齢52歳(7人).日本人 | テモカプリル(4mg/日)[2週間] | テモカプリルはインスリン感受性(GIR)を20.7%改善 |
11)Paolisso G et al, 1997 単盲検 レベル4 | 耐糖能正常の高血圧患者.平均年齢46歳(16人).イタリア人 | ロサルタン(50mg/日)あるいはプラセボ[4週間] | ロサルタンはインスリン感受性(GIR)を30.5%改善 |
12)Iimura O et al, 1995 オープンラベル試験 レベル4 | 耐糖能正常の高血圧患者.平均年齢47歳(13人).日本人 | デラプリル(120mg/日)あるいはカンデサルタン(8mg/日)[2週間] | デラプリルは31.2%,カンデサルタンは41.2%インスリン感受性(GIR)を改善 |
13)Tuomilehto J et al, 1999 RCT レベル1 | SBPが160~219mmHg,DBP<95mmHgで60歳以上の高血圧合併2型糖尿病(492人).ヨーロッパ | カルシウム拮抗薬(ニトレンジピン)とプラセボを比較 | 2.5年間で,プラセボ群に比較して,全死亡率が45%に,心血管系疾患による死亡が24%に,脳卒中が27%に減少した |
14)Curb JD et al, 1996 RCT レベル1 | 60歳以上の高血圧合併2型糖尿病,SBP≧160mmHg,DBP 90mmHg(583人).白人86%,黒人14% | クロルタリドン(12.5~25mg)を主とする降圧治療とプラセボ群を比較 | 5年間で,実薬群でプラセボ群に比して,全死亡率が74%に,心血管系疾患イベントが66%に,心イベントが44%に,脳卒中が78%に減少した |
15)The ALLHAT Officers and Coordinators, 2002 RCT レベル1 | 36%の2型糖尿病患者を含む55歳以上の高リスク高血圧患者(33,357人).白人47%,黒人32%,ヒスパニック15% | 利尿薬・カルシウム拮抗薬(アムロジピン)・ACE阻害薬(リシノプリル)を比較 | 4.9年間で,一次エンドポイント(致死性冠動脈疾患および非致死性心筋梗塞)は,3群間で差なし.利尿薬に比べカルシウム拮抗薬・ACE阻害薬群で,心不全は138%・119%に増加,脳卒中は93%・115%.糖尿病患者でも同傾向 |
16)Jukius S et al, 2004 RCT レベル1 | 2型糖尿病患者を31.7%含むハイリスクの高血圧患者15,245人.白人89%,黒人4%,アジア人3.5% | ARB(バルサルタン)とカルシウム拮抗薬(アムロジピン)を比較 | 心イベントによる死亡は,両群で同等であった |
17)HOPE Study Investigators, 2000 RCT レベル1 | 心血管事故の既往やリスクファクターを有する2型糖尿病(3,577人).多国間共同試験(人種の記載なし) | ACE阻害薬のラミプリルあるいはプラセボ | 4.5年間で,ACE阻害薬群では,全死亡が76%に,心血管死が63%に,心筋梗塞が78%に,脳卒中が67%に,顕性腎症が76%に減少 |
18)Lindholm LH et al, 2002 RCT レベル1 | 55~80歳の左室肥大を伴った高血圧合併2型糖尿病(1,195人).白人86%,黒人11% | ARB(ロサルタン)とβ遮断薬(アテノロール)を比較 | 4.7年間でARB群では一次複合エンドポイント(心血管死・心筋梗塞・脳卒中)は76%に,心血管死は63%に,心筋梗塞は83%に,脳卒中は79%に減少 |
19)Lewis EJ et al, 1993 RCT レベル1 | 18~49歳(平均35歳)の蛋白尿を伴う1型糖尿病(血清Cre<2.5mg/dL).高血圧患者が約75%(409人).白人89%,黒人11% | ACE阻害薬(カプトプリル)vs.プラセボ | 3年間で,ACE阻害薬群で血清Cr濃度の2倍化が48%減少.血圧はACE阻害薬群で137/85,プラセボ群で140/86mmHg |
20)The EUCLID Study Group, 1997 RCT レベル1 | 20~59歳の正常あるいは微量(15%)アルブミン尿で正常血圧の1型糖尿病患者(530人).ヨーロッパ | リシノプリルあるいはプラセボ | 2年間で,リシノプリル群の尿中アルブミン排泄率はプラセボ群に比べて,2.2µg/分低かった |
21)Ravid M et al, 1998 RCT レベル2 | 40歳以上の正常アルブミン尿で正常血圧の2型糖尿病患者(156人).イスラエル人 | エナラプリルvs.プラセボ | 6年間で,アルブミン尿はエナラプリル群で11.6から15.8mg/日へ,プラセボ群で10.8から26.5mg/日へ増加 |
22)Baba S, 2001 オープンラベル試験 レベル2 | 75歳以下の正常および微量アルブミン尿の2型糖尿病患者(436人).日本人 | ニフェジピン持効錠vs.エナラプリル | 2年間で,両群でアルブミン尿の推移は有意差なし |
23)Giordano M et al, 1996 オープンラベル試験 レベル3 | 平均50歳の高血圧の2型糖尿病患者(30人).ヒスパニックが70% | カプトプリル,ニフェジピンあるいはドキサゾシン[3ヵ月] | カプトプリルあるいはドキサゾシンは糸球体濾過量(GFR)を増加させ,尿中蛋白は排泄率を低下させた.ニフェジピンではGFRは不変で尿中蛋白は排泄率は低下した |
24)Brenner BM et al, 2001 RCT レベル1 | 31~70歳(平均60歳)の蛋白尿を有する高血圧合併2型糖尿病(3.5%は正常血圧)(1,513人).白人48.6%,アジア人16.7%,黒人15.2%,ヒスパニック18.2% | ロサルタンvs.プラセボ | 3.4年間でプラセボ群に比較して,血清Crの2倍化0.75に,末期腎不全0.72に,蛋白尿は0.65に低下した |
25)Lewis EJ et al, 2001 RCT レベル1 | 30~70歳(平均59歳)の蛋白尿を有する高血圧合併2型糖尿病(1,715人).白人72.4%,黒人13.3%,アジア人5.0% | イルベサルタンvs.アムロジピンvs.プラセボ | 2.6年間で,複合腎エンドポイントはARB群ではプラセボ群の0.80に,カルシウム拮抗薬の0.77に低下した |
26)Mogensen CE et al, 2000 RCT レベル2 | 微量アルブミン尿を示す高血圧の2型糖尿病患者(199人).オーストラリア人,北欧人,イスラエル人 | カンデサルタンvs.リシノプリルvs.両薬剤を併用[24週間のうち最後の12週間] | 併用群で血圧はより低下し,尿中アルブミン排泄量も50%減少(リシノプリル群-39%,カンデサルタン-24%) |
27)Parving HH et al, 2001 RCT レベル1 | 高血圧2型糖尿病,微量アルブミン尿期(590人).白人98% | イルベサルタン150mg(195人)vs.300mg(194人)vs.プラセボ(201人)[2年間] | イルベサルタンは顕性腎症への進行を抑制.ハザード比(150mg:0.61,300mg:0.30) |
28)Viberti G et al, 2002 RCT レベル1 | 微量アルブミン尿の2型糖尿病患者(35%の正常血圧者を含む)(332人).85~88%が白人,10%がアジア人 | バルサルタン80mg/日vs.アムロジピン5mg/日 | 24週間で,アルブミン尿はARB群で56%に,カルシウム拮抗薬群で92%.アルブミン尿の正常化率はARB群で29%,カルシウム拮抗薬群で14% |
29)Kjekshus J et al, 1990 オープンラベル試験 レベル2- | 心筋梗塞後の340人の糖尿病患者を含む2,024人.米国人(人種の記載なし) | β遮断薬(80%はプロプラノロール) | 1年間の死亡率は糖尿病患者β遮断薬服薬者で17%,非服薬者で23%.非糖尿病患者ではそれぞれ7%vs.13% |
30)Jonas M et al, 1996 オープンラベル試験 レベル2- | 冠動脈疾患の既往のある2,723人の糖尿病患者を含む14,417人.イスラエル人 | β遮断薬(80%はプロプラノロール) | 3年間の死亡率は糖尿病患者でβ遮断薬服薬者で7.8%,非服薬者で14%.相対リスクは0.46 |
31)Ohkubo T et al, 1998 オープンラベル試験 レベル2- | 40歳以上の大迫住民(1,789人).日本人 | 平均6.6年間の観察 | 心血管死には家庭で測定した収縮期血圧のみが相関した |
32)Kamoi K et al, 2002 オープンラベル レベル3 | 高血圧合併2型糖尿病170人.日本人 | 起床後10分以内に家庭血圧と外来受診時の随時血圧を測定 | 家庭血圧で早朝高血圧を示す群で,糖尿病性腎症や網膜症,冠動脈疾患や脳卒中の既往を有する者が有意に多かった |
33)Carlson JE et al, 1990 RCT レベル2 | 高血圧患者,25~70歳(257人).デンマーク人 | ベンドロフロロサイアザイド1.25,2.5,5,10mg/日あるいはプラセボ[3ヵ月] | すべての用量で拡張期血圧は10~11mmHg低下し,低カリウム血症・高尿酸血症・高血糖・高コレステロール血症の頻度は用量依存性であった |
34)Schorr RI et al, 1997 オープンラベル試験 レベル3 | 高齢糖尿病患者(平均年齢78歳)(13,559人).低血糖を起こした52%が白人 | 598件の重症低血糖に及ぼす種々の降圧薬の影響を検討 | 降圧薬非服用者での頻度は2.01/100人・年.降圧薬による有意な影響はなし |
35)Lindholm LH et al, 2000 RCT レベル3 | 70~84歳の高血圧合併2型糖尿病(719人).スウェーデン人 | 利尿薬あるいはβ遮断薬群と,カルシウム拮抗薬あるいはACE阻害薬群を比較 | 3群間で心血管死の差はなし.ただし,ACE阻害薬でカルシウム拮抗薬に比べて心筋梗塞は51%に低下し,脳卒中は116%にやや増加 |
36)Estacio RO et al, 1998 RCT レベル1 | 40~74歳(平均58歳)の高血圧の2型糖尿病患者(470人).白人67%,黒人14%,ヒスパニック17% | エナラプリル(5~40mg/日)あるいはニソルジピン(10~60mg/日)を用いて,拡張期血圧を75mmHg未満と80~89mmHgにコントロール | 5年間で,カルシウム拮抗薬群での致死的および非致死的心筋梗塞の発症率はACE阻害薬群の9.5倍であった |
37)Tatti P et al, 1998 オープンラベル試験 レベル3 | 高血圧2型糖尿病患者(380人).米国人(人種の記載なし) | フォシノプリル(20mg/日)あるいはアムロジピン(10mg/日) | 3.5年で,心筋梗塞・脳卒中・狭心症による入院はACE阻害薬群でカルシウム拮抗薬群の0.49倍に低下 |
38)Klein R et al, 1989 観察研究 レベル2 | 糖尿病患者(1,879人).米国人 | 4年間の観察 | 4分位で比べると血圧が最も高い群では最も低い群に比べて,網膜症の発症リスクは収縮期血圧で1.8倍,拡張期血圧で1.2倍であった.進展リスクはそれぞれ1.1・1.3倍であった.高齢者では血圧の影響はみられなかった |
39)Forrest KY et al, 1997 観察研究 レベル2 | 1型糖尿病患者(453人).米国人 | 6年間の観察 | 15%が末梢神経障害を発症.糖尿病罹病期間・高血圧・血糖コントロール不良・喫煙が独立した危険因子であったが,高血圧が相対リスクが4.1倍と最も強い影響を与えていた |
40)Chaturvedi N et al, 1998 RCT レベル1 | 20~59歳の正常あるいは微量(15%)アルブミン尿で正常血圧の1型糖尿病患者(530人).ヨーロッパ | リシノプリルあるいはプラセボ | 2年間で,リシノプリルは網膜症の5段階評価の1段階以上の悪化を0.50に抑制した |
41)Mancia G et al, 2003 RCT レベル1 | 55~80歳の高血圧と他に1つ以上の心血管疾患のリスクを有する2型糖尿病患者(1,302人).ヨーロッパ | カルシウム拮抗薬(ニフェジピン徐放薬)と配合利尿薬を比較 | 3.5年間で,一次エンドポイント(心血管死・心筋梗塞・心不全・脳卒中)は2群間で差なし.二次エンドポイント(一次エンドポイント+全死亡)は利尿薬に比べカルシウム拮抗薬で76%に減少 |
42)Dahlof B et al, 2005 RCT レベル1 | 2型糖尿病患者を27%含む3つ以上の危険因子を有するハイリスクの高血圧患者19,257人.白人95% | アムロジピンにペリンドプリルを併用した群と,アテノロールにベンドロフメチアジドを併用した群を比較 | 非致死性心筋梗塞と致死性冠動脈疾患による死亡が,カルシウム拮抗薬をベースとした群で10%低下した |