(旧版)科学的根拠に基づく糖尿病診療ガイドライン 改訂第2版
13.糖尿病に合併した高血圧
解説
3.降圧目標
糖尿病患者では,しばしば高血圧が合併する.両者は独立した心血管系疾患の危険因子であり,高血圧合併糖尿病がハイリスクであることが広く認識されている.1997年の米国合同委員会の第6次報告(JNC VI)では,糖尿病があり血圧が130/85mmHg以上あれば,薬物治療を開始するとしているe).降圧目標血圧は130/85mmHg未満とし,蛋白尿が1g/日以上の例では,さらに低い125/75mmHg未満を目標としている.2000年に発表された日本高血圧学会のガイドラインf)でも,糖尿病があり血圧が140/90mmHg以上あれば降圧薬による治療を開始するとし,正常高値血圧(130〜139/85〜89mmHg)では生活習慣の改善を3〜6ヵ月指導し,効果不十分な場合には降圧薬を開始するとしている.目標血圧は,糖尿病症例では,若年者・中壮年者の本態性高血圧症とともに130/85mmHg未満とされている.これらの降圧目標値については,最近報告されたHOT(Hypertension Optimal Treatment)Study1)やUKPDS(United Kingdom Prospective Diabetes Study)2)の結果により支持されている.本ステートメントでは,HOT Studyの結果を重視し,降圧目標をさらに低い130/80mmHg未満とした.このことは,最近発表された米国糖尿病学会(American Diabetes Association:ADA)の糖尿病患者における高血圧治療のrecommendationsや米国合同委員会の第7次報告(JNC 7)でも同様であるb),c).また,2004年に発表された日本高血圧学会のガイドラインa)でも,本ステートメントと同様な改訂がなされた.したがって,糖尿病患者では,血圧が130〜139/80〜89mmHgであれば,血糖コントロールと生活習慣の改善を3〜6ヵ月指導し,降圧が不十分な場合には降圧薬を開始する(図1).血圧が140/90mmHg以上あれば,血糖コントロールと生活習慣の改善を指導しつつ,ただちに降圧薬による治療を開始する.
なお,高齢者については収縮期血圧の上限をやや高めに設定し慎重な降圧を必要とするが,忍容性が良好ならば時間をかけて若年者と同様な血圧コントロールを目指すg).
図1 糖尿病に合併した高血圧の治療戦略

なお,高齢者については収縮期血圧の上限をやや高めに設定し慎重な降圧を必要とするが,忍容性が良好ならば時間をかけて若年者と同様な血圧コントロールを目指すg).
図1 糖尿病に合併した高血圧の治療戦略
