(旧版)科学的根拠に基づく糖尿病診療ガイドライン 改訂第2版
11.糖尿病大血管症
ステートメント
1.大血管症のリスク

糖尿病は,大血管症の危険因子のひとつであり,高血糖の程度が軽い境界型でも大血管症のリスクは増加する1),2).大血管症の危険因子で是正できるものとしては,他に,高血圧症,高脂血症,肥満,喫煙がある.糖尿病を含めた危険因子が複数合併するにつれ大血管症のリスクはいっそう増加する.そして,これらの危険因子を包括的にコントロールすることが大血管症の予防に重要である106).
2.厳格な血糖コントロールと生活習慣の改善
厳格な血糖コントロールは,大血管症の発症・進展抑制に有効である31),32),33),34),35),36),37),38).
レベル1
大血管症の一次予防には,境界型の時期から生活習慣を是正することが重要である1),2).
レベル3
ビグアナイド薬は,肥満2型糖尿病患者の大血管症予防に有効である42).
レベル1
チアゾリジン薬は,大血管症の二次予防に有効である43).
レベル1
αグルコシダーゼ阻害薬による食後高血糖のコントロールは,2型糖尿病患者の大血管症予防に有効である44),45).
レベル1
食事療法,運動療法,禁煙など生活習慣の改善は,大血管症の一次予防,二次予防87),88),89),90),91),92),93),94),95),96)に有効である.
レベル1

大血管症の一次予防には,境界型の時期から生活習慣を是正することが重要である1),2).

ビグアナイド薬は,肥満2型糖尿病患者の大血管症予防に有効である42).

チアゾリジン薬は,大血管症の二次予防に有効である43).

αグルコシダーゼ阻害薬による食後高血糖のコントロールは,2型糖尿病患者の大血管症予防に有効である44),45).

食事療法,運動療法,禁煙など生活習慣の改善は,大血管症の一次予防,二次予防87),88),89),90),91),92),93),94),95),96)に有効である.

3.糖尿病と高血圧の合併

糖尿病と高血圧の合併は大血管症の発症頻度を増加させる52).厳格な血圧コントロールは糖尿病大血管症の発症リスクを軽減46),47),48),49),50),51),52),54),56),58)する(血圧の目標値については「13.糖尿病に合併した高血圧」の項参照).
4.血清コレステロール値の厳格なコントロール
糖尿病における脂質管理は,まずLDLコレステロール値を目標値までコントロールする.スタチンによる血中コレステロール(LDLコレステロール)値の厳格なコントロールは,冠動脈疾患の一次予防,二次予防および脳血管障害の予防に有効である69),70),71),72),73),74),75),76),77),78).
レベル1
フィブラートの投与は,2型糖尿病の患者の冠動脈イベントを抑制する79),80)(脂質の目標値については「14.糖尿病に合併した高脂血症」の項参照)
レベル1

フィブラートの投与は,2型糖尿病の患者の冠動脈イベントを抑制する79),80)(脂質の目標値については「14.糖尿病に合併した高脂血症」の項参照)

5.肥満

肥満がある場合にはこれを是正することによって,高血糖,高血圧,脂質代謝異常などの大血管症危険因子を軽減できる97)(肥満是正の目標値については「12.糖尿病に合併した肥満」の項参照).
6.低用量アスピリンの投与
低用量アスピリンの投与は大血管症の二次予防に有効である.
レベル1+
糖尿病以外の心血管疾患危険因子を合併する2型糖尿病患者の大血管症の一次予防に低用量アスピリンは有効である25),98),99),100).
レベル1+
シロスタゾールは,閉塞性動脈硬化症を合併した2型糖尿病患者の歩行距離を改善させる104).
レベル2+

糖尿病以外の心血管疾患危険因子を合併する2型糖尿病患者の大血管症の一次予防に低用量アスピリンは有効である25),98),99),100).

シロスタゾールは,閉塞性動脈硬化症を合併した2型糖尿病患者の歩行距離を改善させる104).
