(旧版)科学的根拠に基づく糖尿病診療ガイドライン 改訂第2版
10.糖尿病足病変
アブストラクトテーブル
論文コード | 対象 | 方法 | 結果 |
1)de Sonnaville JJ et al, 1997 コホート研究 レベル4 | 609人の2型糖尿病[罹病年数4.3(0〜45)年] | 初診時に足治療士が足を診察して頻度と諸病態の相関を解析 | 切断は0人,潰瘍が11人(1.8%),前潰瘍が79人(12.9%).喫煙,末梢血管病変,神経障害,足の乾燥,槌状足趾が独立した危険因子 |
2)Moss SE et al, 1999 コホート研究 レベル4 | 若年発症906人と成人発症984人 | 登録14年後に足の病変を確認 | 若年発症の7.2%,成人発症の9.9%が下肢切断を受けていた.男性,高年齢,高HbA1c,高血圧,足潰瘍の既往,喫煙,網膜症進行が危険因子であった |
3)Young BA et al, 2003 コホート研究 レベル3 | 糖尿病で下肢切断施行3,289人 | 退役軍人ケアシステムの情報からの42万9千の糖尿病患者情報で比較検討 | ネイティブアメリカンが最も切断のリスク高い.糖尿病腎障害で切断率が3倍高い |
4)Kuzuya T et al, 1994 コホート研究 レベル4 | 35医療機関を受診した糖尿病2,120人 | 1990年11月の一日に受診した糖尿病患者の慢性合併症の断面調査 | 足の皮膚潰瘍は2%で,下肢切断は0.6%であった |
5)Abbott CA et al, 1998 コホート研究 レベル4 | 神経障害があって血流障害と潰瘍歴のない糖尿病1,035人 | 1年後に足の潰瘍を確認 | 1年後に足潰瘍が7.2%発生.年齢と神経障害の高スコアが危険因子 |
6)Pham H et al, 2000 コホート研究 レベル4 | 248人の糖尿病例 | 6ヵ月ごとに平均30ヵ月間,潰瘍の発生頻度を追跡 | 足潰瘍が73人の95足に発生.足の診察とモノフィラメント(5.07)テストが足潰瘍予知に有効 |
7)Boyko EJ et al, 1999 コホート研究 レベル4 | 749人の糖尿病例 | 既往,末梢神経障害,自律神経障害,下肢の血流障害を評価してから平均3.7年追跡 | モノフィラメントテスト,切断の既往,インスリン治療,シャルコーの変形などが独立した危険因子であった |
8)Adler AI et al, 1999 コホート研究 レベル4 | 776人の糖尿病例 | 末梢の血流と神経障害,潰瘍の既往など登録後,足潰瘍の発生率を調査した | 末梢神経障害,末梢血流障害,足潰瘍の既往,インスリン治療で出てこない |
9)Hämäläinen H et al, 1999 コホート研究 レベル4 | 糖尿病733人を平均7年追跡 | 追跡開始時の諸危険因子を切断,非切断に分けて相関をみている | 25人が切断施行.神経障害,網膜症,腎障害,長い罹病年数,ABI低値などが危険因子 |
10)Reiber GE et al, 1992 コホート研究 レベル3 | 糖尿病で足を切断した80人と足病変のない糖尿病236人を比較 | 血流障害,神経障害,セルフケア,血糖コントロール状態などを比較 | 血流障害,神経障害,教育不足,低HDLなどが有意な危険因子 |
11)Peters EJ et al, 2001 コホート研究 レベル3 | 足病変外来の糖尿病213人 | リスクにより4グループに分けて平均30ヵ月経過観察 | 潰瘍発生率は,神経障害なしグループで5.1%,神経障害のみグループで14.3%,神経障害+末梢血管障害グループで18.8%,潰瘍か切断歴のあるグループで55.8%でリスク分類の妥当性が証明された |
12)Malone JM et al, 1989 RCT レベル2 | 足病変のハイリスク患者203名を,介入103人と対照100人に分け,1年間調査 | フットケア教育 | 対照に比して潰瘍・切断が約1/3と減少 |
13)Rith-Najarian S et al, 1998 コホート研究 レベル3 | 639人から介入なし期1,464患者・年,通常のケア1,543患者・年と足病変に関するSDM応用期(Staged Diabetes Management)1,313患者・年で比較 | SDM応用期にはリスクに応じてフットケア,教育指導,処置を施行 | 介入なしに比べて,下肢切断率が通常ケアで28%減少,SDMを応用すると48%減少した |
14)Donohoe ME et al, 2000 RCT レベル1 | 強化フットケア教育群施設(981人)と従来ケア群施設(958人)を無作為に分けた | 施設スタッフを教育指導し,患者の足病変に関する知識や行動,専門医への紹介率など比較 | 強化教育施設の患者は,足に関する知識が増え,紹介率に有意な差が出たが,潰瘍発生には差がなかった |
15)Patout CA Jr et al, 2000 コホート研究 レベル4 | 低収入アフリカンアメリカン197人に予防的フットケアプログラムを行い評価 | 予防プログラム | 足病変での受診,入院,手術減少 |
16)Calle-Pascual AL et al, 2001 コホート研究 レベル3 | 足病変のハイリスク患者に,フットケアプログラム施行.完遂群223人と未遂群95人を比較 | フットケアの教育,不適切なフットケア行動の修正,定期的な足のチェック | 足潰瘍の発生率が完遂群は未遂群に比して約1/4であった |
17)Reiber GE et al, 2002 RCT レベル1 | 足潰瘍既往はあるが特殊な靴を必要としない400人を,治療靴121人,既製品の足底板使用靴119人,普通の靴使用160人の3群に無作為に分けた | 治療靴または既成品を使用して,定期的受診により足潰瘍の発生率を追跡した | 潰瘍再発率は,15%,14%,17%で差がなかった.再発率が予想(対照群で58%)を下回ったのは定期的受診が有効であった可能性がある |