(旧版)科学的根拠に基づく糖尿病診療ガイドライン 改訂第2版

 
9.糖尿病神経障害の治療


解説

5.有痛性神経障害の対症療法
神経障害による疼痛が強く日常生活に支障をきたす場合は,血糖コントロールと生活習慣の改善に加え,症状緩和のための薬物療法が必要である.軽症の場合は非ステロイド性消炎鎮痛薬も有効であるが,重症の場合は十分な効果を得ることは困難である.中等度以上の有痛性神経障害に対する症状改善薬としてはイミプラミン,アミトリプチリンなどの三環系抗うつ薬が最も推奨されている.三環系抗うつ薬の鎮痛効果は抗うつ作用によるものではなく,神経末端におけるノルエピネフリン再取り込み抑制作用によるものであり,かなり強い疼痛にも有効である19),20),21),22).三環系抗うつ薬の使用時に注意すべき副作用は,眠気・注意力低下などの精神神経系の症状と口渇・排尿排便障害・眼圧亢進などの抗コリン作用の出現である.これらの副作用は出現頻度が高いことから,緑内障や排尿排便困難を有する患者に対する三環系抗うつ薬の使用は好ましくない.
三環系抗うつ薬のみで十分な鎮痛効果を示さない場合はフルフェナジンやクロルプロマジンなどの抗精神病薬との併用も有効である.疼痛によるうつ傾向の強い場合は精神科医との連携が必要である.カルバマゼピン,ガバペンチンなどの抗痙攣薬も有痛性神経障害に有効であり,単独あるいは併用により症状改善をもたらすことが示されている23),24),25).ただし,健康保険上は,抗うつ薬および抗痙攣薬の糖尿病神経障害に対する使用は承認されていない.
抗不整脈薬であるメキシレチンの有痛性神経障害に対する効能が承認されているが,メキシレチンは急性の自発痛に特に有用であり,重症の疼痛に対しても短期間で有効性を示すことが報告されている26),27),28),29).メキシレチン投与時に注意すべき副作用は不整脈の出現である.特に心疾患を有する患者では重篤な不整脈をきたす可能性があることから,定期的に心電図検査を行い,不整脈の出現に注意しなければならない.健康保険上は,メキシレチンの投与量は1日300mgとし,4週間の投与をめどとするように指定されている.
上述の薬剤によっても疼痛コントロールが不十分な場合,麻薬性鎮痛薬の投与が考慮される.中等症以上の疼痛を伴う糖尿病神経障害に対して,徐放性オキシコドンは有意に疼痛を緩和するとともにQOLを改善することが報告されている30),31).しかし,その使用に際しては耽溺性や呼吸抑制などの副作用についての注意深い観察が必要である.


 
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