(旧版)科学的根拠に基づく糖尿病診療ガイドライン 改訂第2版
9.糖尿病神経障害の治療
ステートメント
1.糖尿病神経障害の診断


糖尿病神経障害は糖尿病患者に最も多い合併症のひとつである.したがって,糖尿病患者を診察する際には,必ず神経障害の有無あるいはその重症度を診断しなければならない.糖尿病神経障害の診断のためには,腱反射,振動覚,神経伝導速度,モノフィラメントを用いたタッチテスト,心拍変動などの検査が有用であり,これらの検査を定期的に行うべきである.
2.糖尿病神経障害の発症・進展

糖尿病神経障害の発症・進展に関与する危険因子には,(1)血糖コントロールの不良,(2)糖尿病罹病期間,(3)高血圧,(4)喫煙,(5)飲酒,(6)高身長などがあるが1),2),3),これらのうち最も重要な因子は血糖コントロールの不良であり,血糖コントロールの不良な症例では高頻度に神経障害が出現する4).しかし,厳格な血糖コントロールを行えば,その発症・進展を著明に抑制することができる5),6),7),8).
3.糖尿病神経障害の基本的治療


糖尿病神経障害の治療においては,できる限り厳格な血糖コントロールを行うとともに,禁酒,禁煙などの生活習慣の改善を指導する.ただし,長期に高血糖が続いていた場合は,急速な血糖降下により一時的に症状が出現あるいは悪化することがあるので注意が必要である.
4.有痛性神経障害の治療

軽症の場合は血糖コントロールと生活習慣の改善で軽快する.非ステロイド性消炎鎮痛薬は軽症例でのみ有効である.中等症以上の場合は,三環系抗うつ薬19),20),21),22),抗痙攣薬23),24),25),およびメキシレチンが有効であり26),27),28),29),単独あるいは併用で用いると有用である.
5.自律神経障害


軽症の場合は,血糖コントロールと生活習慣の改善のみでよい.自律神経障害がQOLを低下させる場合は,それぞれの症状に応じた対症療法を行う.
6.単発性神経障害


単発性神経障害の場合は,障害された神経症状に応じた対症療法を行うとともに,血糖コントロールと生活習慣の改善を指導する.