(旧版)科学的根拠に基づく糖尿病診療ガイドライン 改訂第2版
8.糖尿病腎症の治療
解説
2.糖尿病腎症の診断
すべての糖尿病患者は,糖尿病と診断されたときに,試験紙法で,蛋白尿の検査を行う.さらに,蛋白尿陽性の患者では,運動後,著明な高血糖・高血圧,尿路感染症,心不全,発熱などによって,蛋白尿が一時的に増加するので,そのような病態が除外されれば,24時間蓄尿もしくは随時尿を用いて,尿蛋白定量/尿中アルブミン定量を行い,顕性腎症(一日尿蛋白排泄量0.5g以上h),m),尿中アルブミン排泄量による顕性蛋白尿の定義b):24時間蓄尿300mg以上,時間尿200µg/min以上,随時尿300mg/gCr以上)かどうか診断する.尿蛋白陰性,あるいは1+程度の陽性を示す糖尿病患者においては,腎症を早期に診断するために,少なくとも年1回は,尿中アルブミン排泄量の測定を行うべきである(図1,表2)[尿中アルブミン排泄量を知るために,午前中の随時尿を用いて,アルブミン(mg)/クレアチニン(g)の測定を行う.3回測定し,2回以上30mg/gCr~299mg/gCrであれば,微量アルブミン尿と診断するb),c),d)].
アルブミン尿や蛋白尿を呈する患者は,眼科的診察を行い,糖尿病網膜症の合併の有無を確認すべきである.網膜症が存在すれば,アルブミン尿や蛋白尿は,糖尿病腎症(早期もしくは顕性腎症)に由来している可能性が高い.網膜症が存在しなければ,蛋白尿を呈する他の疾患の存在も考慮すべきである.また,説明のできない急激なGFRの低下あるいは,急激な尿蛋白量の増加など,腎症の自然経過から大きくはずれるような病態が生じた場合や,血尿,顆粒円柱など,活動性糸球体疾患を示唆する所見が認められた場合も,糖尿病腎症以外の糸球体疾患の存在を疑い,腎生検などの精査が必要と考えられる.
腎症の診断や管理のうえで,患者の腎機能を知ることは重要である.血清クレアチニン値の上昇を認めなくても腎機能の低下を示すことがよくある(特に高齢者).そこで,24時間クレアチニンクリアランス(Ccr)がGFRの推定にしばしば用いられるが,蓄尿は施行が困難な時も多く,性別,体格,年齢を考慮に入れてCcr・GFRを推測する式が考案されている(例:Cockcroftによる推測式,MDRD簡易式e)(表3).さらに近年,有意なアルブミン尿や蛋白尿を認めなくても腎機能の低下を示す患者(1型,2型においても)が多数存在することが明らかになった[いわゆる慢性腎臓病(chronic kidney disease:CKD)].アルブミン尿・蛋白尿を呈する典型的な腎症と,腎障害の発症機構やその進展が異なる可能性があるので注意すべきであるf).
図1 微量アルブミン尿のスクリーニング

表2 糖尿病腎症の早期診断基準(糖尿病性腎症合同委員会2005d))
表3 Ccr・GFRの推測式
アルブミン尿や蛋白尿を呈する患者は,眼科的診察を行い,糖尿病網膜症の合併の有無を確認すべきである.網膜症が存在すれば,アルブミン尿や蛋白尿は,糖尿病腎症(早期もしくは顕性腎症)に由来している可能性が高い.網膜症が存在しなければ,蛋白尿を呈する他の疾患の存在も考慮すべきである.また,説明のできない急激なGFRの低下あるいは,急激な尿蛋白量の増加など,腎症の自然経過から大きくはずれるような病態が生じた場合や,血尿,顆粒円柱など,活動性糸球体疾患を示唆する所見が認められた場合も,糖尿病腎症以外の糸球体疾患の存在を疑い,腎生検などの精査が必要と考えられる.
腎症の診断や管理のうえで,患者の腎機能を知ることは重要である.血清クレアチニン値の上昇を認めなくても腎機能の低下を示すことがよくある(特に高齢者).そこで,24時間クレアチニンクリアランス(Ccr)がGFRの推定にしばしば用いられるが,蓄尿は施行が困難な時も多く,性別,体格,年齢を考慮に入れてCcr・GFRを推測する式が考案されている(例:Cockcroftによる推測式,MDRD簡易式e)(表3).さらに近年,有意なアルブミン尿や蛋白尿を認めなくても腎機能の低下を示す患者(1型,2型においても)が多数存在することが明らかになった[いわゆる慢性腎臓病(chronic kidney disease:CKD)].アルブミン尿・蛋白尿を呈する典型的な腎症と,腎障害の発症機構やその進展が異なる可能性があるので注意すべきであるf).
図1 微量アルブミン尿のスクリーニング

表2 糖尿病腎症の早期診断基準(糖尿病性腎症合同委員会2005d))
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- 注1)高血圧(良性腎硬化症),高度肥満,メタボリック症候群,尿路系異常・尿路感染症,うっ血性心不全などでも微量アルブミン尿を認めることがある.
- 注2)高度の希釈尿,妊娠中・月経時の女性,過度の運動・過労・感冒などの条件下では検査を控える.
- 注3)定性法で微量アルブミン尿を判定するのはスクリーニングの場合に限り,後日必ず上記定量法で確認する.
- 注4)血糖や血圧管理が不良な場合,微量アルブミン尿の判定はさける.
表3 Ccr・GFRの推測式
Cockcroft-Gault の計算式 | ||||
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日本腎臓病学会慢性腎臓対策小委員会によるMDRD 簡易式 | ||||
GFR(ml/min/1.73m2)=186×Age-0.203 Cr-1.154 | ||||
Cr 測定値(酵素法)に,0.2mg/dLを加える. | ||||
日本人用に男性は,×0.881 | ||||
女性は,×0.881×0.742 | ||||
もしくは, | ||||
GFR(ml/min/1.73m2)=175×Age-0.203 Cr-1.154 | ||||
Cr測定値(酵素法)をそのまま用いる. | ||||
日本人用に男性は,×0.741 | ||||
女性は,×0.741×0.742 |