(旧版)科学的根拠に基づく糖尿病診療ガイドライン 改訂第2版

 
7.糖尿病網膜症の治療


解説

3.分類・疫学
病期分類にはDavis分類,福田分類,ETDRS(Early Treatment Diabetic Retinopathy Study)分類などが提唱されており,現在,統一されたものはないが,近年,新たな国際重症度分類が提唱されている(表1c)).この分類の特徴は,網膜症と黄斑症を分けて記載し,増殖網膜症への進展度と視力低下をきたす危険度をそれぞれevidenceに基づいて簡便に分類されている点である.現時点ではDavis分類を基本として,(1)正常,(2)単純網膜症,(3)増殖前網膜症,(4)増殖網膜症,の4期に分類されることが多い.
厚生省の平成3年度糖尿病調査研究報告書b)によると1型糖尿病では,罹病期間5年未満で17%,15〜19年で81%に糖尿病網膜症の合併が認められる.2型糖尿病では罹病期間5年未満で14%,15〜19年で57%に糖尿病網膜症の合併があり,15%は増殖網膜症である.糖尿病網膜症は初期のみならず,進行した段階においても自覚症状を欠くことがあるので,糖尿病の診断が確定,または糖尿病が疑われる時点で眼科医を受診させ糖尿病網膜症の有無と病期を評価する必要がある1),2)

表1 糖尿病網膜症と糖尿病黄斑浮腫の国際分類
糖尿病網膜症の国際分類
重症度分類 眼底所見
明らかな網膜症なし 異常なし
軽症非増殖糖尿病網膜症 毛細血管瘤のみ
中等症非増殖糖尿病網膜症 毛細血管瘤以上の病変を認めるが重症非増殖糖尿病網膜症より軽症
重症非増殖糖尿病網膜症 以下の所見を1つ以上認め,かつ増殖網膜症の所見を認めない:
  • 1)眼底の4象限のいずれにも20以上の網膜内出血がある
  • 2)眼底の2象限以上に明らかな数珠状静脈がある
  • 3)眼底の1象限以上に明らかな網膜内細小血管異常がある
増殖糖尿病網膜症 以下のいずれかの所見を認める:
  • 1)新生血管
  • 2)硝子体/網膜前出血


糖尿病黄斑浮腫の国際分類
重症度分類眼底所見
糖尿病黄斑浮腫なし 眼底後極部に網膜浮腫による肥厚,硬性白斑を認めない
糖尿病黄斑浮腫あり
  • 軽症糖尿病黄斑浮腫
  • 中等症糖尿病黄斑浮腫
  • 重症糖尿病黄斑浮腫
眼底後極部に網膜浮腫による肥厚,硬性白斑を認める
  • 網膜の肥厚,硬性白斑があるが黄斑部から離れている
  • 網膜の肥厚,硬性白斑があり黄斑部に近づくが黄斑中心部を含まない
  • 網膜の肥厚,硬性白斑があり黄斑中心部を含む


 
ページトップへ

ガイドライン解説

close-ico
カテゴリで探す
五十音で探す

診療ガイドライン検索

close-ico
カテゴリで探す
五十音で探す