(旧版)科学的根拠に基づく糖尿病診療ガイドライン 改訂第2版

 
6.インスリンによる治療


解説

3.1型糖尿病におけるインスリン療法
1型糖尿病におけるインスリン療法は,インスリンの生理的分泌プロフィールに沿った食直前の速効型あるいは超速効型,眠前の中間型あるいは持効型溶解インスリンの使用がスタンダードである.これに血糖自己測定や患者教育を行うことにより厳格な血糖制御が可能となり,細小血管症の予防,進展の抑制に効果が認められる3),4).強化インスリン療法により細小血管症の発症,および進展の抑制や初期の大血管症の進展抑制がもたらされ5),DCCT後の長期観察において,重篤な心血管イベント(心筋梗塞,脳卒中,致死的な心血管イベント)の発症抑制が認められた6)
インスリン治療を行っている患者が感染症などで食事が摂れない場合(シックデイ)ではインスリン拮抗ホルモンの影響で食事量が少なくてもむしろ血糖値は上昇する場合が多いため,インスリン中断は避け,水分摂取とインスリン量を調節しながらの継続が重要である.シックデイ・ルールとして,次の点に留意する.
  • (1)できるだけ摂取しやすいかたち(お粥,麺類,果汁など)でエネルギー,炭水化物を補給する.
  • (2)水分は少なくても1,000ml/日以上は摂る.
  • (3)血糖自己測定を行い,できれば尿ケトン体測定も行う.
  • (4)食事ができないからといってインスリン量を極端に減らしたり中止してはいけない.
インスリン製剤としては,動物由来のインスリン製剤は現在遺伝子組み換えにより生産された抗原性が低いヒトインスリン製剤にほとんどが切り替えられている.その作用時間および作用様式から,速効型インスリン製剤,中間型インスリン製剤(亜鉛懸濁製剤とNPH製剤),持続型インスリン製剤,および中間型と速効型インスリンをさまざまな割合で組み合わせた混合型インスリン製剤,さらにはインスリンアナログとして超速効型インスリン,超速効型インスリンと中間型のミックス製剤,および持効型溶解インスリンが使用されている.これらの種々のインスリン製剤を各患者の病態に合わせて選択することが高い治療効果を発揮する.


 
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