(旧版)科学的根拠に基づく糖尿病診療ガイドライン 改訂第2版
6.インスリンによる治療
解説
2.インスリン療法のリスク
インスリン療法のリスクとしては,まず低血糖が挙げられる.強化インスリン療法により血糖コントロールが良好になるのと比例して,重症低血糖が多くなることをDCCT(Diabetes Control and Complications Trial)は報告している3) .これを予防するには,低血糖に対する適切な処置や,血糖自己測定による効果的な予防などの患者教育が必要である.また,強化インスリン療法により急に血糖コントロールを行った際,網膜症増悪や神経障害の悪化を認めることがある1),2).さらに適切に食事療法が行われてない場合の体重増加も問題となる.インスリン治療は,糖尿病でインスリンが不足していることに対しそれを補う治療であり,生理的な治療法であるが,内因性のインスリンは膵臓から分泌され,門脈を通ってまず肝臓で作用するのに対し,皮下注射したインスリンは,末梢の毛細血管より全身循環に入っていくので,その点は生理的なインスリン作用とは異なることを理解する必要がある.
肥満や高齢者糖尿病患者に対し,食事・運動療法や経口薬による治療を検討せずに,インスリン治療を導入することには慎重でありたい.あくまでも,インスリン作用不足に対する補充療法であることを踏まえ,個々の症例に則した,適切な治療法が選択されるべきである.一方で,血糖コントロールが不十分な状態で無為に時間を過ごすことは避け,適応となる場合はインスリン療法をなるべく早く導入するべきである.インスリンの他の副作用としては,抗インスリン抗体によるインスリン抵抗性,インスリンアレルギー,インスリン浮腫などが起こることがある.
肥満や高齢者糖尿病患者に対し,食事・運動療法や経口薬による治療を検討せずに,インスリン治療を導入することには慎重でありたい.あくまでも,インスリン作用不足に対する補充療法であることを踏まえ,個々の症例に則した,適切な治療法が選択されるべきである.一方で,血糖コントロールが不十分な状態で無為に時間を過ごすことは避け,適応となる場合はインスリン療法をなるべく早く導入するべきである.インスリンの他の副作用としては,抗インスリン抗体によるインスリン抵抗性,インスリンアレルギー,インスリン浮腫などが起こることがある.