(旧版)科学的根拠に基づく糖尿病診療ガイドライン 改訂第2版
5.経口血糖降下薬による治療
アブストラクトテーブル
論文コード | 対象 | 方法 | 結果 |
1)UKPDS13, 1995 RCT レベル1 | 新たに診断された2型糖尿病(2,769人) | クロルプロパミド,グリベンクラミド,メトホルミン,インスリン,および食事療法の比較(平均3年) | 薬物投与群のHbA1cは6.8~7.0%,空腹時血糖は7.0~7.6mmol/L,食事療法群のHbA1cは7.6%,空腹時血糖は9.0mmol/L,体重・空腹時インスリンレベルの低下 |
2)UKPDS35, 2000 コホート解析 レベル3 | 新たに診断された2型糖尿病(4,585人) | UKPDS33,34の疫学的解析 | HbA1cが1%低下すると,糖尿病関連合併症と死亡は21%低下,心筋梗塞は14%低下,細小血管症は37%低下 |
3)Tominaga M et al, 1999 コホート解析 レベル3 | 正常(2,016人),耐糖能異常(382人),糖尿病(253人) | 心血管障害の発症の比較(7年) | 食後高血糖がある耐糖能異常者における心血管障害は正常者より高率 |
4)UKPDS33, 1998 RCT レベル1 | 新たに診断された2型糖尿病(3,867人) | 強化療法(クロルプロパミド,グリベンクラミド,インスリン,メトホルミン)と食事療法の比較(平均10年) | 強化療法は細小血管症のリスクが12%低下(p=0.029) |
5)Hanefeld M et al, 2004 RCTのメタ解析 レベル1+ | アカルボースを52週以上投与したRCT(2,180人) | アカルボースとプラセボの比較(52週) | アカルボース群で心筋梗塞の発症が64%低下(p=0.012),すべての心血管障害の発症が35%低下(p=0.0061) |
6)PROactive, 2005 RCT レベル1 | 大血管症の既往を有する2型糖尿病(5,238人) | ピオグリタゾンとプラセボの比較(平均34.5ヵ月) | ピオグリタゾンで死亡,心筋梗塞,脳卒中が16%低下(p=0.027) |
7)UKPDS34, 1998 RCT レベル1 | 新たに診断された肥満2型糖尿病(1,704人) | メトホルミン,インスリン,および食事療法の比較,メトホルミン+スルホニル尿素薬の併用効果(平均10.7年) | メトホルミン群は,糖尿病関連合併症の32%低下(p=0.002),糖尿病関連死の42%低下(p=0.017),全死亡の36%低下(p=0.011),低血糖・体重増加の頻度の低下 |
8)Hayward RA et al, 1997 コホート解析 レベル3 | 一般臨床医に管理されている2型糖尿病(8,668人) | インスリン療法と経口血糖降下薬のHbA1cの低下,安全性,費用・効果比の比較(2年) | インスリン療法を行っても60%は2年後のHbA1cが8%以上であり,低血糖が多く,費用・効果比は良くない |
9)Ohkubo Y et al, 1995 RCT レベル2 | 日本人の2型糖尿病(110人) | インスリン強化療法と従来型インスリン療法の比較(6年) | インスリン強化療法において,細小血管症の発症が有意に低下,細小血管症の発症閾値はHbA1c6.5% |
10)Van de Laar FA et al, 2005 RCTのメタ解析 レベル1+ | 12週間以上αグルコシダーゼ阻害薬を投与した41RCT(8,130人) | αグルコシダーゼ阻害薬とプラセボの比較 | αグルコシダーゼ阻害薬により血糖コントロールは改善,死亡,重大な合併症,QOLの改善に関するデータは不足 |
11)Simonson DC et al, 1997 RCT レベル2 | 2型糖尿病(347人) | グリピジドとプラセボの比較 | 空腹時血糖・食後血糖・HbA1cの低下,長期効果,安全性 |
12)Rosenstock J et al, 1996 RCT レベル1 | 2型糖尿病(416人) | グリメピリドとプラセボの比較 | 空腹時血糖・HbA1cの低下,最適用量 |
13)Blaum CS et al, 1997 RCT レベル2 | 血糖コントロールが不十分な2型糖尿病(393人) | 背景因子の解析 | インスリン分泌能,罹病期間,治療意欲,自己管理能力 |
14)DeFronzo RA et al, 1995 RCT レベル1 | 2型糖尿病(289人,632人) | メトホルミンと食事療法の比較,メトホルミン+グリベンクラミド併用とグリベンクラミド単独の比較 | 空腹時血糖・HbA1cの低下,低血糖,総コレステロール・LDL-C |
15)Johansen K, 1999 RCTのメタ解析 レベル1+ | 1957年以降に施行されたRCTのメタ分析 | メトホルミン,スルホニル尿素薬,および食事療法の比較 | 空腹時血糖,HbA1cの低下,体重 |
16)Saenz A et al, 2005 RCTのメタ解析 レベル1+ | メトホルミン単独療法に関する29RCT(2,007人) | メトホルミンとプラセボの比較 | メトホルミンによる大血管症,死亡の抑制,体重の減少,脂質・血圧の改善 |
17)Chiasson JL et al, 1994 RCT レベル2 | 耐糖能障害(18人) | アカルボースと食事療法の比較(1年) | 食後血糖,食後インスリンレベルの低下 |
18)後藤由夫ほか, 1992 RCT レベル2 | 食事療法では十分な血糖コントロールが得られない日本人の2型糖尿病(226人) | ボグリボースとプラセボの比較(8週) | 空腹時・食後血糖の低下,HbA1cの低下,消化器症状の副作用 |
19)GLAL study group, 2005 RCT レベル1 | 食事療法では十分な血糖コントロールが得られない2型糖尿病(567人) | ピオグリタゾンとグリクラジドの比較(平均2年) | 104週後HbA1cが8%未満を維持できたのはピオグリタゾン47.8%,グリクラジド37.0% |
20)兼子俊男ほか, 1997 RCT レベル2 | 食事療法では十分な血糖コントロールが得られない日本人の2型糖尿病(152人) | ピオグリタゾンとプラセボの比較(12週間) | 空腹時血糖が14.0%低下,HbA1cが1.08%低下,血中インスリン・中性脂肪の低下,HDL-Cの上昇 |
21)兼子俊男ほか, 1997 RCT レベル2 | 食事療法単独またはスルホニル尿素薬使用にて十分な血糖コントロールが得られない日本人の2型糖尿病(105人) | ピオグリタゾンとプラセボの比較(28週間) | 空腹時血糖が食事療法群で14.3%,スルホニル尿素薬併用群で12.8%低下,HbA1cが食事療法群で1.17%,スルホニル尿素薬併用群で1.18%低下,血中インスリン・中性脂肪の低下,HDL-Cの上昇,浮腫・むくみの出現 |
22)Aronoff S et al, 2000 RCT レベル1 | 2型糖尿病(408人) | ピオグリタゾンとプラセボの比較(26週) | 空腹時血糖,HbA1cの低下,中性脂肪の低下,HDLの上昇 |
23)繁田幸男ほか, 1997 RCT レベル2- | 食事療法で十分な血糖コントロールの得られない日本人の2型糖尿病(38人) | ナテグリニドとプラセボの比較(8週) | 食後血糖曲線下面積の低下,食後早期のインスリン分泌の上昇 |
24)小坂樹徳ほか, 1997 RCT レベル2 | 食事療法で十分な血糖コントロールの得られない日本人の2型糖尿病(93人) | ナテグリニドとプラセボの比較(1年) | 空腹時・食後血糖の低下,HbA1cの低下,食後早期のインスリン分泌の増加 |
25)Hanefeld M et al, 2000 RCT レベル2 | 食事運動療法でコントロールが不十分な2型糖尿病(289人) | ナテグリニドとプラセボの比較(12週) | 食後血糖,食後インスリンレベルの低下HbA1cの低下 |
26)UKPDS24, 1998 RCT レベル1 | 食事療法では血糖コントロールが不十分な新たに診断された2型糖尿病(458人) | クロルプロパミド,グリベンクラミド,メトホルミン,およびインスリンの比較(平均6年) | 空腹時血糖・HbA1cの低下,体重・空腹時インスリンレベルの低下,低血糖の増加 |
27)UKPDS49, 1999 RCT レベル1 | 新たに診断された2型糖尿病(4,075人) | インスリン,スルホニル尿素薬,メトホルミン,および食事療法の比較(9年) | HbA1c7%未満,FPB 7.8mM未満に到達した患者の割合は3年後で55%で食事療法群で特に低い,9年後の目標達成率は3年後の半数に減少 |
28)QUARTET Study Group, 2004 RCT レベル1 | 2型糖尿病(639人) | スルホニル尿素薬+ピオグリタゾンとスルホニル尿素薬+メトホルミンの比較(1年) | HbA1cの低下は1.20%と1.38%とほぼ同等.脂質代謝に両群間で有意な差 |
29)Coniff RF et al, 1995 RCT レベル2 | 2型糖尿病(290人) | アカルボース,トルブタミド,両者の併用,およびプラセボの比較(24週) | 食後血糖・HbA1cの低下,胃腸症状の副作用の増加 |
30)UKPDS44, 1999 RCT レベル1 | UKPDSに参加した2型糖尿病(1,946人) | アカルボースとプラセボの追加投与の比較(平均3年) | プラセボに比べてHbA1cが0.2%(服薬持続群だけでは0.5%)低下,空腹時血糖,体重は不変,服薬コンプライアンスは不良,副作用(消化器症状)は増加 |
31)Rosenstock J et al, 1998 RCT レベル2 | 食事療法やメトホルミン単独ではコントロールが不十分な2型糖尿病 | アカルボースとプラセボの追加投与の比較(24週) | HbA1cが0.65%低下,空腹時・食後の血糖・インスリンレベルの低下,胃腸症状の副作用の増加 |
32)兼子俊男ほか, 1997 RCT レベル2 | スルホニル尿素薬だけでは十分な血糖コントロールが得られない日本人の2型糖尿病 | ピオグリタゾンとプラセボの併用の比較(12週) | 空腹時血糖が19.3%低下,HbA1cが1.24%低下,血中インスリン・中性脂肪の低下,HDL-Cの上昇 |
33)Charbonnel B et al, 2005 RCT レベル2 | メトホルミンまたはスルホニル尿素薬でコントロールが不十分な2型糖尿病(317人,319人) | (1)メトホルミン+ピオグリタゾンとメトホルミン+グリクラジドの比較,(2)スルホニル尿素薬+ピオグリタゾンとスルホニル尿素薬+メトホルミンの比較(2年) | (1)ピオグリタゾン併用のほうが空腹時血糖改善効果大,(2)空腹時血糖改善効果同等,またピオグリタゾン併用で脂質改善効果 |
34)兼子俊男ほか, 1997 症例集積 レベル4 | ボグリボースまたはボグリボースとスルホニル尿素薬を使用中の日本人の2型糖尿病(52人) | ピオグリタゾンの併用(12週) | 空腹時血糖とHbA1cの低下が確認,軽度の浮腫・むくみの出現 |
35)垂井清一郎ほか, 1997 症例集積 レベル4 | ボグリボースのみで治療中の日本人の2型糖尿病(26人) | ナテグリニドの併用(10週) | 食後早期のインスリン分泌,食後血糖の低下,ボグリボースとの併用の安全性が確認 |
36)Horton ES et al, 2000 RCT レベル1 | コントロールが不十分な2型糖尿病(701人) | ナテグリニド,メトホルミン,両者併用,およびプラセボの4群間比較(24週) | 併用療法で,空腹時血糖2.4mmol/Lの低下,HbA1c 1.4%の低下 |
37)Repaglinide/Pioglitazone Study Group, 2004 RCT レベル2 | スルホニル尿素薬あるいはメトホルミンでコントロールが不十分な2型糖尿病(246人) | レパグリニド,ピオグリタゾン,およびレパグリニド+ピオグリタゾンの比較(24週) | レパグリニド+ピオグリタゾンでHbA1cCが1.76%低下,単独投与では改善なし |
38)DPP, 2002 RCT レベル1 | 耐糖能異常(3,234人) | ライフスタイル改善,メトホルミン,およびプラセボの糖尿病への移行の比較(2.8年) | 糖尿病への移行はライフスタイル改善で58%低下,メトホルミンで31%低下 |
39)Chiasson JL et al, 2002 RCT レベル1 | 耐糖能異常(1,429人) | アカルボースとプラセボの比較(3年) | アカルボース群で,耐糖能異常から2型糖尿病への移行が25%低下(p=0.0022) |
40)Durbin RJ, 2004 コントロールを伴う コホート研究 レベル4 | インスリン抵抗性を有する耐糖能異常(172人) | チアゾリジン薬と薬物なしの比較(3年) | 糖尿病への移行はチアゾリジンで88.9%抑制(p<0.001) |
41)STOP-NIDDM, 2003 RCT レベル1 | 耐糖能異常(1,429人) | アカルボースとプラセボの比較(3.3年) | アカルボース群で,心血管障害の発症が49%低下(p=0.03) |