(旧版)科学的根拠に基づく糖尿病診療ガイドライン 改訂第2版

 
4.運動療法


解説

3.合併症や併発症などのある糖尿病患者における運動療法
多くの糖尿病患者にとって運動は有益であるが,運動療法のリスクにも注意を払う必要がある.
心血管疾患のある者やそのリスクが高い場合(たとえば35歳以上,2型糖尿病の罹病期間が10年以上,1型糖尿病の罹病期間が15年以上,その他の危険因子を持つ場合,細小血管症のある場合,末梢血管障害や自律神経障害のある場合など)は負荷心電図などによりさらに詳細な評価が必要であり,明らかな網膜症や腎症や末梢神経障害の存在する場合はその程度に応じて運動プログラムを決定する必要がある.
中等症以上の非増殖性網膜症の場合は急激な血圧上昇を伴う運動は避け,重症または増殖性網膜症では無酸素運動や身体に衝撃の加わる運動は避けるべきである.
微量アルブミン尿や軽度の顕性蛋白尿を有する患者に対する運動の長期的な影響はいまだ十分検討されていないが,運動の強度が中等度以下の運動を行うべきである.中等度以上の蛋白尿(1g/日以上)や糸球体濾過率の低下が認められる場合(腎症第3期B以降)は積極的な運動療法は制限すべきであるが,ゆっくり散歩するなどして日常生活における身体活動量を極度に低下させないように配慮する.
下肢閉塞性動脈硬化症においては側副血行路の発達を促進させるために適切な歩行運動が勧められるが,重症例では禁忌である.また重篤な末梢神経障害を有する患者では荷重運動を控える必要があり,水泳やサイクリングや上半身運動などが勧められる.このように足病変に対してハイリスクの場合にはフットケアを怠ってはならない(「10.糖尿病足病変」の項参照).
自律神経障害を有する患者では運動中に低血圧や血圧上昇を起こしやすく,また運動中に突然死や無症候性心筋梗塞などの合併症を起こすおそれもあるため,注意しながら慎重に運動療法を進めていくほうがよい.
また,高齢者や肥満者においては腰椎や下肢関節の整形外科的疾患を伴う場合が多く,このような場合の運動療法においては,レジスタンス運動などにより筋力の増強をはかるとともに,水中歩行,椅子に座ってできる運動,腰痛体操を勧めるなど配慮が必要である(「17.高齢者の糖尿病」の項参照).


 
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