(旧版)科学的根拠に基づく糖尿病診療ガイドライン 改訂第2版
4.運動療法
ステートメント
1.運動療法の開始


運動療法を開始する際には,糖尿病性慢性合併症や心血管障害の有無など,あらかじめ医学的評価が必要である.
2.2型糖尿病患者における運動療法

2型糖尿病患者では基本的治療として,日常生活の中で段階的に運動量を増やしていき,それを継続することが重要である.2型糖尿病患者においては,運動により心肺機能の改善1),2),3) レベル2+,血糖コントロールの改善2),3),4),5),6),7),8),9),10),11),12) レベル2+,脂質代謝の改善3),5),6),7),9),12),13),14) レベル2,血圧低下3),4),5),6),7),11),13) レベル2,インスリン感受性の増加3),12),15),16),17),18),19) レベル2-が認められ,食事療法と組み合わせることによりさらに高い効果が期待できる.
3.1型糖尿病患者における運動療法

進行した合併症がなく,血糖コントロールが良好であれば,インスリン療法や補食を調整することにより,いかなる運動も可能である.1型糖尿病患者においては,運動の長期的な血糖コントロールへの効果は不明であるが,心血管系疾患の危険因子を低下させ20),21),22),生活の質を改善させる.
4.合併症などのある糖尿病患者における運動療法


運動療法を行うにあたって特別な配慮が必要なのは,心血管障害やそのリスクが高い場合,明らかな末梢および自律神経障害のある場合,進行した細小血管症がある場合,整形外科的疾患がある場合などであるが,日常生活における身体活動量は可能な限り低下させないように配慮すべきである.
5.薬物治療中の糖尿病患者における運動療法


インスリン治療をしている患者では血糖自己測定を行い,運動の時間や種類や量により,運動前や運動中に補食する,運動前後のインスリン量を減らす,注射部位を運動の影響を受けにくい部位に変更する,など適切なインスリン療法の調整が必要である.
経口血糖降下薬(特にスルホニル尿素薬)では投薬量を減らす必要がある場合もある.
経口血糖降下薬(特にスルホニル尿素薬)では投薬量を減らす必要がある場合もある.
6.糖尿病患者の運動療法における一般的な注意


- (1)両足をよく観察し,適切な靴をはいて運動する.
- (2)血糖コントロールの悪いとき(空腹時血糖値250mg/dL以上または尿ケトン体陽性)は運動を積極的には行わない.
- (3)運動は,インスリンや経口血糖降下薬(特にスルホニル尿素薬)で治療を行っている患者において,運動中および運動当日~翌日に低血糖を惹起するおそれがあるので,注意が必要である.特にインスリン治療中の患者では,運動前の血糖が90mg/dL未満の場合には吸収のよい炭水化物を1~2単位摂取することが望ましい.
- (4)運動量は徐々に増加させていくのが望ましく,運動療法の目標としては,運動の頻度はできれば毎日,少なくとも週に3~5回,持続時間は20~60分,強度は中等度の運動が一般的には勧められ,運動の前後に準備運動と整理運動を行う.