(旧版)科学的根拠に基づく糖尿病診療ガイドライン 改訂第2版

 
1.糖尿病診断の指針


アブストラクトテーブル

論文コード 要約
1)小坂樹徳ほか,1982 1980年のWHO専門委員会報告を受けて日本糖尿病学会はそれまでのOGTTの判定基準(1970年)を改訂した.OGTTの区分は糖尿病型,正常型,境界型に分け,OGTTの判定と糖尿病の診断との関係について論じた.病型分類はWHOのそれに従った.
2)The Expert Committee on the Diagnosis and Classification of Diabetes Mellitus, 1997 米国糖尿病学会による糖尿病の分類と診断基準の改定.分類は成因分類を基本とし,病態(病期)分類を併用.糖尿病の判定基準として1980年のWHO空腹時血糖値基準値>140mg/dLを>126mg/dLに引き下げ,かつ空腹時血糖値だけで糖尿病を診断することを提唱した.それまでのIGTに加えて,IFGのカテゴリーを新設した.
3)Report of a WHO Consultation, 1999 内容的には2)の米国糖尿病学会報告に類似するが,糖尿病の診断には空腹時血糖値のみならず,OGTT 2時間値も重視している.
4)葛谷健ほか,1999 日本糖尿病学会の糖尿病の分類と診断基準に関する委員会報告.米国糖尿病学会,WHO委員会(前記2),3))を参考として1982年の日本糖尿病学会報告1)を改訂.分類は成因分類を基本とし,病態(病期)分類を併用する.OGTT区分で血糖のカットオフ値は米国糖尿病学会2),WHO3)と同じとするが,判定区分の名称は糖尿病型,正常型,境界型とする.境界型はIGTとIFGを合わせた群となる.糖尿病の診断にHbA1cの補助的使用を提案.診断の手順を示してある.空腹時血糖値と2時間値との対応やOGTTの区分とHbA1cの関係に関する伊藤のデータ,1時間血糖値,2時間血糖値と糖尿病型への悪化率に関する佐々木,原のデータを示した.
5)The Expert Committee on the Diagnosis and Classification of Diabetes Mellitus, 2003 米国糖尿病学会の1997年報告2)の一部修正.空腹時血糖値の正常上限を<110mg/dLから<100mg/dLに引き下げ,IFGは空腹時血糖値100〜125mg/dLのものとなった.その根拠は(1)IGTとの対応,(2)糖尿病への悪化リスクのROC曲線による検討である.



論文コード 対象 方法 結果
6)Kosaka K et al, 1996
コホート研究
健診で100g OGTTを受けたもの(1,788人) 定期的に100g OGTTで追跡調査 初回検査でIGTの群でも非IGTの群でも,ΔIRI/ΔPG<0.5のものは≧0.5のものに比べて糖尿病の発症率は2倍以上であった
7)伊藤千賀子,1998
コホート研究
原爆被爆者検診(約2万人) 1965〜1997年のOGTTデータ 60歳以下で,空腹時血糖値125mg/dLが2時間値200mg/dLにほぼ対応する.血糖値で全集団を10等分すると,網膜症が有意の増加を示す群の最小血糖値は空腹時126〜145mg/dL,2時間値では198〜235mg/dLだった.空腹時血糖値が同程度でも2時間値が高いほうが網膜症は多く出現
8)藤島正敏ほか,1998
コホート研究
1988年に75g OGTTを受けた40〜79歳の久山町住民(2,424人) 8年間追跡し,心血管病発症と,最初の耐糖能との関係を調べた 男性では心血管病発生がIGTでは2.4倍,糖尿病では2.9倍に増えた.女性ではIGTでは増加はみられず,糖尿病で1.6倍に増えた
9)富永真琴ほか,1998
コホート研究
1990〜1992年にOGTTで検診した舟形町住民(2,534人) 1996年末まで追跡し,初回OGTTの型別に動脈硬化性疾患死亡率を比較 IGTは動脈硬化性疾患死亡率が正常型に比して有意に高かったが,IFGではそのようなことはなかった
10)Davidson MB et al, 2003
断面調査
米国のNHANES1999-2000のデータ 人種別,年齢階層別のIFG頻度の推定.米国糖尿病学会の新旧に基準値による頻度の比較 IFG基準値下限の引き下げによりIFGの頻度は1.5〜4.6倍(全体では2.6倍)に増加する
11)Borch-Johnsen K et al, 2004
断面調査
デンマーク人6,265人,および中国,インド,フランス,米国人約2万3千人 米国糖尿病学会の新旧のIFGの基準値を用いて,IFGとIGTの関係,大血管症の危険因子を比較 IFGの基準値引き下げによりその頻度は著しく増える(デンマークでは11.8%から37.6%に増加する).新基準によって新たにIFGに加わったものでは大血管症の危険因子の乏しいものが多い
12)Tai ES et al, 2004
断面調査,一部コホート研究
シンガポールの3研究のデータ,計約1万人 (1)断面調査によるIFGとIGTの関係.(2)1992から2000年までの追跡による糖尿病発症の危険度の調査.(3)追跡による虚血性心疾患の危険度の比較 IFG基準値引き下げによりその頻度は3.4倍に増える.新たにIFGの分類されたものでは大血管症の危険因子は少ない.糖尿病発症予知に関して最適な空腹時血糖値は100〜105mg/dL程度だったが,糖尿病発症者の多くは同時にIGTの基準を満たしていた
13)伊藤千賀子,1998
コホート研究
原爆被爆者検診(約1万人) 1984〜1997年のOGTTとHbA1cの関係 空腹時血糖値と2時間値の糖尿病型のカットオフ値に対応するHbA1c値は6.1%であった

 
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