(旧版)科学的根拠に基づく糖尿病診療ガイドライン 改訂第2版

 
1.糖尿病診断の指針


解説

7.糖尿病や関連する糖代謝異常の分類
糖尿病や関連する糖代謝異常の分類は表2に示す4)表2の分類は成因に基づく分類である.1型糖尿病は膵島β細胞の破壊性病変によってインスリンの不足が進行するタイプで,多くの場合インスリンの絶対的欠乏に陥る.自己免疫機序による1型糖尿病では種々の膵島自己抗体が陽性となることが多い.自己抗体が出現しない原因不明のものもある.2型糖尿病は糖尿病患者の95%以上を占める,最も多いタイプで,インスリン分泌の低下とインスリン感受性の低下とが発病にかかわる.
特定の原因によるその他の型の糖尿病は,遺伝因子として遺伝子異常が同定されたもの(A)と,他の疾患,病態に伴うもの(B)に分ける.妊娠糖尿病は成因分類として独立させるかどうかの議論もあるが,臨床上の重要性,特別の配慮の必要性により一項目として取り扱う.
いずれの型の糖尿病でも代謝異常の程度(インスリン不足の程度)はさまざまであり,経過によって病態は変化する.図1は成因分類と病態の関係を示す.病態は悪化するだけでなく,自然経過や治療によって改善することもある.インスリン欠乏が特に著しい場合,ケトーシスを防ぎ生命を維持するためにインスリン注射が不可欠となる.この状態を「インスリン依存状態」という.それ以外のすべての場合を「インスリン非依存状態」という.インスリン非依存状態であってもインスリン欠乏の程度がある程度進むと,血糖コントロールのためインスリン注射を必要とするようになる.図1の説明を参照されたい.

表2 糖尿病とそれに関連する耐糖能低下*の成因分類
  • 1型(β細胞の破壊,通常は絶対的インスリン欠乏に至る)
    • 自己免疫性
    • 特発性
  • 2型(インスリン分泌低下を主体とするものと,インスリン抵抗性が主体で,それにインスリンの相対的不足を伴うものなどがある)
  • その他の特定の機序,疾患によるもの
    • 遺伝因子として遺伝子異常が同定されたもの
      • 1)膵β細胞機能にかかわる遺伝子異常
      • 2)インスリン作用の伝達機構にかかわる遺伝子異常
    • 他の疾患,条件に伴うもの
      • 1)膵外分泌疾患
      • 2)内分泌疾患
      • 3)肝疾患
      • 4)薬剤や化学物質によるもの
      • 5)感染症
      • 6)免疫機序によるまれな病態
      • 7)その他の遺伝的症候群で糖尿病を伴うことの多いもの
  • 妊娠糖尿病
:一部には,糖尿病特有の合併症をきたすかどうかが確認されていないものも含まれている.
(文献4から引用)



図1 糖尿病における成因(発症機序)と病態(病期)の懸念
図1:糖尿病における成因(発症機序)と病態(病期)の概念
右向きの矢印は,糖代謝異常の悪化(糖尿病の発症を含む)を表す.矢印の線のうち,破線の部分は,「糖尿病」と呼ぶ状態を表す.左向きの矢印は糖代謝異常の改善を表す.矢印の線のうち,破線部分は頻度の少ない事象を表す.たとえば,2型糖尿病でも,感染時にケトアシドーシスに至り,救命のために一時的にインスリン治療を必要とする場合もある.また,糖尿病がいったん発病した場合には,糖代謝が改善しても糖尿病とみなして取り扱うという観点から,左向きの矢印は黒く塗りつぶした線で表した.その場合,糖代謝が完全に正常化するに至ることは多くないので,破線で表した.
糖尿病領域のうち,インスリン非依存状態は従来のNIDDM,インスリン依存状態は従来のIDDMに相当する.
(文献4より引用)



 
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