(旧版)科学的根拠に基づく糖尿病診療ガイドライン 改訂第2版

 
1.糖尿病診断の指針


解説

6.日本糖尿病学会の診断手順
日本糖尿病学会の診断手順では,糖尿病型の高血糖が別の日に2回確認できれば,糖尿病と診断できるとしてある.ただし明らかな糖尿病症状があるか,HbA1cが6.5%以上であるか,網膜症があれば,糖尿病型の高血糖が1回確かめられるだけで診断できるとした.過去において糖尿病と診断できる証拠がそろっている場合は,現在の血糖値がそれに達していなくても,糖尿病の疑いをもつべきこと,すぐに診断がつかないときは経過観察して間隔をおいて再検査することを勧めている.図1のように糖尿病の代謝異常は治療によって,あるいは自然経過で変動するからである4).また糖尿病の診断にあたっては糖尿病があるかどうかだけではなく,その病型や代謝異常の程度,合併症などについても把握するように努める必要がある.
HbA1c≧6.5%というのは,糖尿病型のカットオフ値(空腹時血糖値126mg/dL,2時間値200mg/dL)にほぼ対応するHbA1cの平均値が6.1%なので13),それよりも高い.正常型や境界型ではHbA1cが6.5%を超えることはほとんどない.したがって6.5%を超えれば,糖尿病である可能性が非常に高い.逆に糖尿病型であってもHbA1cが6.5%以下のものは少なくない.Kumamoto StudyなどでHbA1cが6.5%未満を維持できれば細小血管症はほとんど起こらないことが示されており,6.5%未満では糖尿病特有の合併症の危険は少ないと考えられる.

図1 糖尿病における成因(発症機序)と病態(病期)の懸念
図1:糖尿病における成因(発症機序)と病態(病期)の概念
右向きの矢印は,糖代謝異常の悪化(糖尿病の発症を含む)を表す.矢印の線のうち,破線の部分は,「糖尿病」と呼ぶ状態を表す.左向きの矢印は糖代謝異常の改善を表す.矢印の線のうち,破線部分は頻度の少ない事象を表す.たとえば,2型糖尿病でも,感染時にケトアシドーシスに至り,救命のために一時的にインスリン治療を必要とする場合もある.また,糖尿病がいったん発病した場合には,糖代謝が改善しても糖尿病とみなして取り扱うという観点から,左向きの矢印は黒く塗りつぶした線で表した.その場合,糖代謝が完全に正常化するに至ることは多くないので,破線で表した.
糖尿病領域のうち,インスリン非依存状態は従来のNIDDM,インスリン依存状態は従来のIDDMに相当する.
(文献4より引用)

 
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