(旧版)科学的根拠に基づく糖尿病診療ガイドライン 改訂第2版

 
糖尿病ガイドライン策定作業の方法論


3.本ガイドラインにおけるレベル付け,グレード付けの方法

本診療ガイドラインでは,根拠として採用された個々の研究に,evidenceのレベル(水準)を付している.この主な目的は,研究のデザインをより明確に認識できるようにすることにある.本来は結果の強度や実施段階での研究の質も考慮すべきであるが,今回の改訂でもそこまでは踏み込まなかった.また,区分を容易にするため,水準表はできるだけ具体性を持たせるように作成した.たとえば,症例数の目安などもあえて明記した.表1に示したものが,本ガイドラインで用いた水準表である.全部で6段階になっており,レベル1はさらに2段階,レベル2はさらに3段階に細分化されている.この水準表を作成するにあたっては,米国の保健医療研究評価局による水準表,英国の健康政策局(National Health Services:NHS)による水準表,さらにカナダ医師会の糖尿病ガイドラインc)などを参考にした.この水準表にはコンセンサスによる情報は含まれていないが,コンセンサスについても別個の重要な材料として,採用したすべてのステートメントにおいて十分に考慮されている.
ステートメントの根拠となる文献は通常複数あり,それぞれに表1に従って水準が付与されるが,ステートメントに付したレベルはそれらのうち最もレベルの高いものである.文献情報に基づかず,対応する文献のない場合は,“コンセンサス”と記載している.また本ガイドラインでは,表2に示すグレード付け(grading)を行った.グレードAが強く勧める事項,グレードBは普通に勧める事項,グレードCは勧めるだけの根拠に欠ける事項である.また,グレードDは逆に行わないほうがよいとされる事項である.なお,診療の実践においてはステートメントとグレードを参照し,その根拠を知りたいときには関連する研究とその水準(レベル)を参照してもらいたい.水準の高い研究に基づくステートメントは通常グレードも高くなるが,研究はなくてもコンセンサスだけでもグレードAとなるステートメントもある.


表1 ガイドラインで用いたevidence水準表―各研究へ付された水準
水準(レベル) それに該当する臨床研究デザインの種類
1 水準1の規模を含むランダム化比較試験のシステマティックレビューまたはメタアナリシス
1 十分な症例数(全体で400 例以上)のランダム化比較試験
2 水準2の規模を含むランダム化比較試験のシステマティックレビューまたはメタアナリシス
2 小規模(全体で400例未満)のランダム化比較試験
2 さらに小規模(全体で50例未満)のランダム化比較試験,クロスオーバー試験(ランダム化を伴う),オープンラベル試験(ランダム化を伴う)
3 非ランダム化比較試験,コントロールを伴うコホート研究
4 前後比較試験,コントロールを伴わないコホート研究,症例対照研究
5 コントロールを伴わない症例集積(10~50例程度)
610例未満の症例報告
なお,括弧内の例数は目安である.


表2 推奨の強さとしてのグレード
グレード 説明
グレードA 行うよう強く勧める
グレードB 行うよう勧める
グレードC 行うように勧めるだけの根拠が明確でない
グレードD 行わないよう勧める


 
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