(旧版)科学的根拠に基づく糖尿病診療ガイドライン 改訂第2版
改訂第2版序文
エビデンスに基づいた医療(Evidence-Based Medicine:EBM)の実践が求められる時代を迎え,この視点に立った糖尿病診療ガイドラインとして,2002年に厚生省医療技術評価総合研究事業「科学的根拠(evidence)に基づく糖尿病ガイドラインの策定に関する研究」(主任研究者:朝日生命糖尿病研究所赤沼安夫)が報告され,それが本書の基本となっている.その後,報告書を基にして,新たな文献を追加し,章を増やしたものを書籍(初版)として2004年に刊行している.本書はその改訂版である.
本書は糖尿病の臨床上の問題点に関する国内外のエビデンスを収集して利用しやすい形で提供し,専門医の立場からそれらを評価した上で診療上の推奨を示すことを目的としている.それぞれの章では,まず診療の指針となるステートメントを挙げてグレード(推奨の強さ)を示し,その根拠を解説,さらに引用した文献についてエビデンスとしてのレベルを付して列挙した.また最後には,各研究論文の要約をアブストラクトテーブルとしてコンパクトにまとめた.
2004年の初版発行以来,本書が糖尿病専門医のみならず糖尿病診療に携わる多くの医療関係者の方々によって活用され,高い評価をいただくことができたことは大変うれしいことであった.その後,新たなエビデンスが次々と集積していることから,本書の小規模な改訂を行うこととし,ここに改訂第2版を上梓する運びとなった.
本書の執筆は原則として前回の章担当者にお願いすることとし,各章とも,初版以降に報告されたエビデンスを追加し,新たな項目として「糖尿病における急性代謝異常」,「糖尿病と膵臓・膵島移植」および「メタボリックシンドローム」を設けた.今回も査読委員会を設置し,章ごとの査読ならびに委員会全体による全体査読を行い,内容を推敲した.本書の完成までに,多くの時間をかけて執筆,査読をして下さった先生方に心から感謝申し上げる.
EBMの実践とは,レベルの高いエビデンス(research evidence)をそのまま目の前の患者さんにあてはめるということではない.専門的な知識と経験(clinical expertise)を駆使し,患者さんの価値観や嗜好を考慮し,そのうえで臨床的判断を下すということである.本書は,糖尿病の分野におけるresearch evidenceとclinical expertiseから引き出されるコンセンサスを,各々の分野の専門家が十分吟味して抽出し,まとめたものである.本書を座右の書として診察室においていただき,大いに活用され,患者さんの考えもよく聴いた上で,最終的に臨床判断をしていただければ幸いである.
2007年5月
科学的根拠に基づく糖尿病診療ガイドライン(改訂第2版)策定に関する委員会